チェンソー製材

 丸太を利用してデッキの屋根架けをすすめている。暇を見ながらゆっくり工事しているが、伐採木の製材にあわせて、手持ちのチェンソーでも何本か製材した。


 使用しているチェンソーアタッチメントはこれ。5、6年前から使いはじめたが、なかなか便利なもので、角材への製材はもちろん、工夫次第ではホゾ取りにも使える。ポイントはガイドになるV型レールの使い方で、製材には長くつなげるほか、短く使ったり、2本を組み合わせたりしてホゾ取り加工などに使う。
 そうした私の利用法は、ネットで検索したかぎり他では見られない。そのいくつかを写真で紹介することにした。ま、宣伝するつもりはないので、あくまで参考例です。

曲がった丸太の製材……曲がった丸太を梁に使う場合、タイコに製材しておくと、寸法が採りやすい。当然のことながら、チェンソーのガイドバーの長さが問題になる。

ホゾ取り……Vレールを2本組み合わせたホゾ取りアタッチメント。ホゾ幅は自由に変えられるが、チェンソー刃の厚みを考えてセットする必要がある。

馬乗り型(?)ホゾ……今回のデッキ屋根には、こんな形状のホゾも使っている。中心部を切り落とす必要があるのだが、チェンソーで突っ切るほどの技量はない。安全にノミで掘りこんだ。

 いずれの使用法も、Vレールをセットしたガイド板を固定することからはじめる。丸太の一部をを削ったり、断面に木片を打ち付けたり、とガイド板の固定を工夫した。もちろんガイド板は水平のほうが狂いが少ないし、切れないチェンソーでは、ついつい力が入って狂うことになる。

製材と黒芯

 5月に伐採した立木を製材した。デッキ屋根架けの桁材にするつもりだったし、出来れば丸太のまま使いたかったが、樹齢50年、直径70㎝とあまりに太過ぎる。そこで桁材と板に挽くことになり、ひさしぶりに製材に立ち会った。

P1240718-B それにしても見事な黒芯だ。伐採したときに気づいていたけど、製材オペレーターに聞いてみると、やはりめずらしいようで、このところ製材されることは少ないらしい。黒っぽい木肌が好まれないのだろう。材木にしても売れ行きがよくないため製材に回ってこないということらしい。

 中心部が黒っぽい杉は、黒芯、黒杉とも呼ばれ、宮崎県の飫肥(おび)杉がよく知られている。肥えた土地、多湿地、谷筋に多いとされているから、あるいは育った環境によるものかと思うが、わが家で伐採した二本すべてが黒芯というわけでもない。となると品種なのか、あるいは何らかの菌の侵入による変色とも考えられているらしい。
 すこし調べてみると、一般的には含水率が高いため、乾燥がむずかしいとされている。そこのあたりが黒っぽい木肌とともに不人気の理由なのだろう。

 ちなみに飫肥杉は、油分が多く、水気に強く、腐敗に耐性があり、シロアリなどの病害虫への抵抗性もあるとされているが、伐採した黒芯杉に同じような性質があるかは、むろんわからない。
 黒芯杉だった切り株椅子は、皮むきした部分がどんどん黒ずんできた。あるいは黒芯どくとくの性質かもしれないが、逆に中心部が白っぽくなってきている。たぶん乾いたせいなのだろう。そう言えば、防蟻成分には揮発性がある、との記述もあった。


 ともあれ製材は、4メートル超の120×240ミリ角の桁材、50×240ミリの板桁をそれぞれ4枚取り、のこりは耳付き板に挽いてもらった。思ったほど木目は黒っぽくない。もっともデッキに使用するときには、色の濃いウォルナット(母屋と同じ色)に塗装予定だから、ほとんど関係はない。

 問題は含水量だ。木材であれば乾くにしたがって縮み、さらにねじれが発生するものだ。大まかに言うと、太さ方向により収縮し、木の種類によっても収縮率が違う。丸太を積みあげるログハウスの場合、3~5%程度の収縮を考慮に入れて建てねばならない。たった5%であろうと、3メートルの壁では、15センチのセトリングスペースが必要ということになる。

 桁材に使った場合でも、ある程度の収縮やねじれがあると考えるべきだろう。とりあえず人工乾燥するつもりだが、桁の繋ぎ部分は、一般に使われる「腰掛けアリ」ではまずいだろうか。暴れに対応できる「相欠きボルト締め」か、いっそ「台持ち継ぎ」がよいかもしれない。

A7-00 そうした作業の合間に、今月もデジタル本を配信しました。400字詰1500枚超の幕末長編小説です。

まずは皮むきから……。

 ログハウスに限らずログ(丸太)を使ってなにかをつくろうとしたら、まずは表皮をむかなくてはならない。そりゃまあ、皮をむいた磨き丸太もあるけれど、和風建築の床柱用だから、価格を聞けば眼が飛び出すだろう。いっそ製材して角材にしてもいいのだが、皮付き材のほうがずっと強いし、質朴(rustic)な感じが大好きなのだ。

 いろいろな方法で皮をむいた。母屋のときのように高圧洗浄機を使うのが手早くてきれいだが、機械がかなり高価だし、近くにレンタルもない。ドローナイフなどの手道具もあるが、私の場合、押して使う突きノミを多用し、とくに氷彫刻用の平ノミが気に入っている、と切り株椅子のときに書き触れた。

P1240757 たとえば5月はじめに伐採した杉なら、ほとんど力もいらず、女性でも軽々とむけてしまう。木が水を吸い上げはじめたからだで、表面の鬼皮をむくと、ピンクがかった柔らかな白い層ごとむけてくれ、その下にある固くて美しい木肌があらわれるのだ。

P1250087 ただし春伐りの木は虫がつきやすく、吸い上げた樹液を洗わないと、すぐに黒く変色する。じじつ先だって皮むきした切り株椅子は、こんなにも真っ黒、虫にも食われている。よほど美味しかったのだろう。

 雪解けの春、カエデの樹液をあつめて煮詰めたものがメープルシロップだが、たとえ杉でも樹液をなめてみればほのかに甘い。これが黒シミや虫食いの原因になるのだろう。高圧洗浄機での皮むきには、これを洗い落とす効果もあったのかもしれない。

 流通している杉材は、ほとんどが冬伐りだから、あらかた水分は抜けてしまい、やや皮がむきにくい。だからと言って鋭利な刃では、木肌に傷をつけてしまうので、平ノミの裏刃でむいてゆく。このほうが食い込みにくいのだ。
 のこった白い渋皮は、ていねいにするなら金属タワシでこすり取る。しかしデッキ材ならそこまでは必要ない、とディスクグラインダーにカップブラシをセットして磨いた。そのさい柔らかな真鍮ブラシのほうが木肌を傷つけずにすむ。


 流通材ではどうしても伐採時のダメージがあり、鬼皮の下に隠れた傷もある。こうした傷は曲面ガンナでないと補修できない。軽く削る程度でよく、デッキの柱なので、色の濃いウォルナットに塗ってしまうから、ほとんど目立たないはず、と目論んでいる。
 そう言えば、ひと月前に伐採した杉の木はどうなったのだろうか。

自給ってわけではないけれど……

 春が遅い土地柄だが、さすがに遅霜の心配はなくなり、集落で唯一の田圃の田植えもおわった。となればデッキ屋根架けのログ作業にかかりっきりというわけいかず、一時休止して合間の農作業……。


 4月に仮植えした里芋は、ようやく芽が顔を出しはじめた。いくつか腐ったが、一応発芽はしている。寒さによるもので病気ではないとは思うが、もう10年近くも更新している。そろそろ元気な種イモの導入を考えた方がいいのかもしれない。

 ズッキーニ、コリンキー、枝豆の苗も順調に育っている。ま、種子会社から購入した交配種なので発芽率はいいし、育てやすいが、種は一代かぎりで、毎年買わなくてはならないのが気に入らない。

 バターナッツやピクルス胡瓜は自家採種している。ピクルス胡瓜をはじめたのは6,7年前になるだろうか。ネットで見つけたイタリアかスペイン産だったかの種で、10粒ほどで800円ほどもしたが、自家採種できると説明書にあったのが購入動機。いらい毎年、いっそ売り出すか、と考えるほどの大量な種子を採っている。
 ちなみに登録種苗は、個人的に種を採るのは認められている。だが、たとえ無償であっても配布するのは禁止されており、種苗法違反は個人の場合300万円以下の罰金だそうだ。

 試みに去年、一昨年の種を蒔いてみたが、発芽率はどちらも変わらなかった。種は一体、何年保存できるのだろう。縄文遺跡から発見されて、みごとに発芽した「大賀ハス」の例もあるけど、保存次第ということなのか。
 いずれにしろ「手種(てだね)」があるのはチョット気分がいい。

P1250027 ピーナッツの栽培目的は二つ。「茹でピーナッツ」のおいしさといったらないのだが、生豆となると販売がかぎられ、いつも買いそびれてしまう。また奥さんの山羊ブログのコメント(なんと米国フロリダかノースカロライナから)に「ピーナッツ・ヘイ」を山羊餌にしているとあったらしい。そこで寒冷すぎてあまり収穫はのぞめないながら、あえての強行栽培。

 山羊餌用のイタリアンライグラスは固くなりすぎたので刈り倒し、バックフォーでざっと耕してサツマイモでも植えてやろうか。もちろんサルやイノシシに荒らされてイモの収穫は望めないけど、山羊餌の蔓ぐらいにはなるだろう。残ったサツマイモで苗を生やしてみようかと思っている。


 ログ作業の合間の農作業。そんなこんなで作家作業はまるでご無沙汰だ。

巣立ち待ち

「どう? もう天井張れた?」
「いや、それがさ……」
「高いから、足場組むのが大変だったろう」
「なに、足場はもう組み上がっているし、大部分は張れたんだけど、残りはちょっと待ちなんだ」
「待ち? なにを待ってるの」
「巣立ち。鳥のね」
 というような会話を、ずっと以前にログハウスのセルフビルダーと交わしたことがある。よくある話なのだ。

 およそは山の中、森の中。ほとんど人は通らないし、町の喧噪もなければ大気汚染もない。ときおり聞こえるのは、吹き抜ける風にゆれる木の葉の音だけという場所に、わざわざ住もうという人間も酔狂なものだが、おかげで蛇や猛禽などの天敵も近づかない。子育てには絶好の環境だ。

 と野鳥たちは思うのだろう。建築中のログハウスに巣作りされて、仕方なく作業中止に追いこまれることがしばしばある。
 天井近くの梁や母屋に作ることが多いのだが、手製したクレーン塔のなかで小鳥がバタバタしている、と赤城山のビルダーから聞いたことがある。補強のために張った板に穴をあけて落ち込んでしまったのだ。

「キツツキさ。中が空洞だから、虫がいると間違えたんだろうね。仕方がないから板を外して逃がしてやったさ」


 デッキ屋根架けのため、丸太ポストの刻みをはじめた。まだデザインの全容は決まっていないが、既存デッキに差し込む部分なら先行製作できる。そうして何本か刻み終えた丸太の近くで、チチッと鳴き声が聞こえ、黄色いものが眼のすみを横切った。それで気がついた。
「あ、キセキレイ、まずいぞ」

セキレイK03 毎年のことだが、デッキ上の梁にキセキレイが巣作りをする。あちこち飛びまわって枯れ草やワラやらを集め、放牧場の柵に引っかかった山羊の毛をくわえたりして巣をつくる。
 卵を産み、抱卵し、孵化して巣立つまでひと月ほどもかかるだろうか。卵や雛を狙う蛇さえ気をつけていれば、別段、悪さをするわけではないので、そのまま見守ることになる。しかし去年の巣は、屋根を架ける梁に作られていたわけで、ことによれば作業延期ともなりかねない。


 さっそく点検したが、さいわい卵はなかった。巣は撤去して一件落着。

 そんなこんなで慌ただしく、配信予定のデジタル作業がまるですすまない。つい先日、ボイジャー社のRomancer「いろいろ情報」に紹介されたりしたので頑張りたいが、校正読みをしてもちっとも集中できないでいる。

切り株椅子

0b5e2b4dd7945700eb92ed7b4b109c2d先日つくった切り株椅子は、もともと抜根できなかったための産物だ、電気や水道(ポンプアップした井戸水)の配管があるため、根を掘り起こすとなるとちょっとばかり面倒。それで椅子、ということにしたわけで、買い物帰りや草刈り途中でひと休みするとなかなかに快適だ。

あまりに快適すぎて立ち上がれない、というのはウソ……。

 

 

P1240795原因は、これ。杉のヤニだ。杉脂(さんし)と読むらしく、生薬として利用される。薬用アルコールに溶かして、ひび、あかぎれに塗り、また肩こりや筋肉痛にも効果があるようだが、煎じて飲用すると淋病に効くとある。試す機会は訪れるだろうか。

 

 

ちなみに杉は日本固有種。だとすると生薬として利用するのはわが国だけで、いわゆる漢方薬としては調合されないのかもしれない。いずれ調べてみるつもりだ。

弓道のギリ粉としても使用する。寡聞にして初めて聞いたが、弦をひくさい馬手(右手)にはめた皮手袋(ゆがけ)につける滑り止めの粉。引くときギリギリ音がするところからの命名のようで、的中粉と呼んだりする。

固まったヤニを熱して溶かし、火にかけ五分の一ほどになるまで煮詰め、冷やして固めたものを粉に砕いてつくるようで、松ヤニより上質な白いギリ粉になると書いてあった。

とにかく脂だから、座るたびにベタベタとひっついてしまう。よく見ると皮と辺材の境目から滲み出ているようで、ならば、とばかりに皮むきにとりかかった。

杉に限らず、樹木の皮は伐採直後のほうが、水分を含んでいて剥きやすい。根から水分を吸い上げる季節、つまり夏伐りの杉なら気持がいいほどに剥ぎ取とれ、屋根葺き材につかったりした。ただし材木としては乾燥に手間がかかるため、流通している材木は、水を吸い上げない冬伐り材がほとんどだ。

ログハウス建築は、何はともあれログの皮剥ぎ(ピーリング)作業からはじめる。回転ノズル付きの高圧洗浄機を使えば、皮の固い冬伐り材でもきれいに剥けるが、セルフビルドとなると手道具が普通だろうか。

両手持ちのドローナイフを引き剥ぐように使うのだが、腕力のない私は、突きノミを好んで使う。腕の力だけで引くより、体重をかけて押せるほうがずっと疲れが少ないからで、最近、手に入れた氷彫刻用の平ノミがかなり使える。

P1240880仕上がった切り株椅子の横で、さっそくの作業……。デッキの屋根架け工事にとりかかったのだが、丸太の皮を剥ぎ、ホゾを刻むといった進捗状況は随時お知らせする。

竹の子掘り

川岸の竹林に竹の子が顔を出しているのをみつけた。例年だったら連休明けのころなのだが、すこし早い。やはり今年は暖冬だったようで、早速にも、裏山の竹林を点検せねばならない。

わが集落で採れる竹の子は、土質のせいか、気候が関係するのか、エグミがほとんどなく、とてもやわらかい。移住したての20数年前の頂戴もので、その美味しさにおどろいたものだが、現物を見てさらにびっくりした。

土間にごろんと転がった竹の子は、長さ50~60センチもあり、その先端には青々とした竹の葉まで生えている。皮をむいた中身も青みを帯びていて、ほとんど青竹状態。それを大釜で茹でただけで(アク取りの糠も使わずに)やわらかになる、というのだからちょっと信じられなかった。

ふつう竹の子掘りと言えば、地面のひび割れを見つけ、そこから顔を見せたか見せないかのころ、折らぬよう周囲を慎重に掘りすすめて採るものだ。ところが土地では、大きく成長させたあと、根元のあたりをバッサリ切ったり、あるいは蹴っ飛ばして折ったりする。「竹の子掘り」ならぬ「竹の子折り」だが、それでも十分美味しいのだから問題はない。

そうした美味しさを山に棲む彼らが放っておくわけがない。入れ替わり立ち替わりして竹の子掘りに精を出すようで、遅くに収穫する人間さまはそのおこぼれを頂く、といった案配になり、年によっては収穫ゼロにもなりかねない。

 

さて今年はどうか、と竹林に登ってみる。とんがり帽子があちらこちらに顔を出しているが、よく調べると、それと同数ほどの竹の子が食べられてしまっている。しかし、今年の出来はわるくない。暖冬のせいで育ちが早かったの幸いしているようだった。

P1240776大きくほじくり返しているのは、たぶん猪だろう。まだ土から顔を出していない竹の子を、するどい嗅覚で探りあて、鼻先で土を掘り起こすらしい。

 

 

 

P1240784一方、先端が囓り折られているのは猿の仕業だ。一番やわらかで甘みの強い先端部をひと囓りして、ポイと捨てるのが彼らのテーブールマナー。

 

 

 

つづいて人間さまの番だが、竹の子掘り用の鍬(ばち鍬)などは持ち合わせていないので、剣先スコップを利用して掘り起こす。やわらかそうなものを選び、根元のあたりに差し込んで、グイとこじればすぐ採れ、5,6本もあれば十分だ。

P1240825世間よりかなり遅い春の恵みだが、お定まりの竹の子ご飯、煮物、あるいは中華風にしたりと、独特の甘みと歯ごたえを連日のように楽しむ。今日のお昼には、炒めてラーメンの具として利用したが、そろそろ飽きてきた。冷凍できるとネットに書いてあるので、要研究か。

杉伐採

すっかり失念でした。二回にわけた「薪割り」の投稿、予告ではケヤキを囲炉裏では燃やさない、という事象について書く予定で、そのためすこし調べもしたが、けろりと忘れてしまった。驚いたことに都市部に多いケヤキ並木の落ち葉処理に、やっかいな問題が持ちあがっているらしい。しかし、これについては改めて書くということで、ご勘弁ねがいます。


ところで懸案だった杉2本を伐採した。県道からの入口付近に立っている樹齢50年ほどの杉は、冬の間、デッキや放牧場に大きな日陰をつくってひどく冷える。その度に「いっそ伐採するか」と考えていた。
しかし、伐り倒すには場所が狭すぎる。もちろん伐採用重機を頼んだり、大型クレーンで吊りながら伐採という方法もあるが、それを準備するだけで7~10万円の費用はどうしてもかかってしまう。
聞くところによると、樹高メートル×5,000円で伐採を請け負う業者があるようで、ここに依頼すると約15メートル×5,000円×2本で、
「え? 15万円? ご冗談でしょう」
と、つい大声が出てしまうような結果になる。

そうしたところに放牧場の柵が腐りはじめ、修理せねばならなくなった。そこで考えたのが、いっそ放牧場を狭くして伐採場所を確保する方法だった。
その一方でデッキに屋根をかける計画が前からあった。2×6防腐材を使用するデッキ床の張り替えは、4、5年後には必要になるはずだが、こちらは70歳超の年齢。映画「カサブランカ」のハンフリー・ボガートじゃないけれど、
「そんな先のことは考えられない」
今のうちに屋根を架けてしまえば20年間は大丈夫か、などとも考える。つまり「終活」の一部分というわけだ。

そこでまたまた考えた。まずデッキ屋根架けのため部分解体し、そこから出た防腐木材を放牧場の柵に転用する。広くなった放牧場にむけて杉を倒し、その杉を製材してデッキの建築材に使用する、といったケチケチ・サイクル。はたしてうまく機能するかは、結果をご覧じろ。屋根架け工事のすすみ具合とあわせて逐次ご報告することにしておこう。


そんなわけでデッキ部分解体、放牧場減築はすでにすませ、いよいよ杉伐採と相成った。が、さすがにこれには手が出せない。丸太はさんざん切ったり刻んだり、製材したりしたが、伐った経験、つまり立木伐採の経験はないのだ。
そこで隣家のプロ(立木伐採士)に半日のアルバイトをお願した。すでに引退しているが、そこはそれ経験豊富で、ピンポイントの方向に倒してくれる。
まず倒す方向に「受け口」を切り、反対側から「追い口」を入れ、「つる」と呼ぶ直径の4分1ほども切り残したあと、追い口に「くさび」をたたき込む、という手順だそうだが、今回はアームの長いバックフォーで押して倒す。このほうがずっと安全なのである。

P1240680一本目はほぼ完璧。ただし広げた放牧場の柵にあと1メートルほどと際どかった。斜めに成長していた2本目は、やや右にずれたが支障なく倒木。こちらはバックフォーを操作しただけだが、ひどく緊張。そのせいか写真がすくないので、奥さんのブログをリンクしておきます。

P1240712ちなみに切り株は抜根しない。そのため長めに伐り残し、椅子ふうに加工しておいた。買い物帰りにちょっと一休み、といったための用意で、これも「終活」のひとつと考えてもらっていい。

と書いてまた忘れるところだった。今月配信した「乱の裔」の紹介です。徳川家康が仕掛けた大坂城攻めに、足利幕府の末裔が大活躍する、痛快な長編戦国小説です。

乱の裔

薪割り(2)

「田舎暮らしをするについて、一番大切な作業とは……」
 と聞かれたら、そくざに「薪割り」と答えることにしている。じっさい日光で暮らした20数年間、小説を仕上げられなかった年は何度もあったけど、薪割りを欠かしたことは一度もない。
 冬の間、寒さに凍えて閉じこもり、たるみにたるんだ身体をチューンナップするには、年に一度の「薪割り」ほど性に合った作業はない。いや、なかった、と言い直すべきか。エンジン薪割り機の導入でかなり様相が変わったのだ。

 原木を玉切りし、斧で割り、軒下や薪置き場に積みあげる。こうした一連の作業で一番大変だったのは、やはり「薪割り」だったろう。全体の60%を占めるほどの作業量だったように感じる。しかし、薪割り機の導入でずいぶん楽になり、感覚的には半分ほどになった。
 たった半分か、と思われるむきもあろうが、なにしろ300㎏超の機械だけに移動するだけでも一苦労だし、エンジンやら何やらの手入れもあり、なにより玉切りした丸太を割り刃にセットしなくてはならない。
 わが家の薪割り機は縦置きになるため、丸太を転がしてセットできるが、横置き専用機となれば、10~20㎏はある丸太をいちいち台上に持ちあげることになる。これがひどく大変で、腕力のない私にはとても無理。薪割り機を導入されるさいには、この点も留意する必要があるだろう。

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 そうしたわけで薪割り機導入後の作業量は、玉切り、薪割り、積みあげ、それぞれ三分の一といった感じだ。そこから考えるに、一連の作業を「薪割り」とひとくくりに呼ぶのは適当ではなく、あるいは「薪づくり」とでも称すべきかもしれない。

 玉切りは、ひとえにチェーンソーの性能による。キャブレーターやエアフィルターの掃除を怠れば、エンジンを起動させるだけで一汗かいてしまう。むろん目立てがわるいと、切断に時間がかかるばかりか、事故を誘発することにもなりかねない。なにより日ごろの手入れが大切だ。

 つづいて積みあげ作業だが、これは見た目より重労働。まずは斜面に建っている母屋の軒下まで、割った薪を移動させねばならないが、そのため軽トラックが大活躍する。古びた4駆車で、しかも車検なしだから敷地内しか走れないが、この荷台に薪を放り込み、軒下まで運んでは、一本一本積みあげてゆく。

P1240656 割ったばかりの薪はかなり重く、一本2㎏ほどもある。この薪を1日に平均12本、1年に120日間燃やすと仮定すると、合計1440本。重さにして2880㎏(2.8トン)になり、これを一本ずつ手作業で移動させるわけだ。軽トラが入れないデッキの軒下には、いったん手押し車に移し替えて運ぶことになり、この積み替え作業がけっこう面倒かつ大変で、毎年のように腰を痛めてしまう。

 しかし、あんがい嫌いじゃない。こつこつ積みあげる作業は、小説の執筆に似たところがある。執筆の場合、読み返して削ることもあるが、薪の積み込みはそんなことはない。高々と積みあげた様子は、アインシュタインが言う「結果がすぐわかる」作業ということだろう。眺めるだけで気持がいい。
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 そうして積みあげた薪は、母屋をぐるりと一周。それでも足らずプラパレットを利用した薪置き場をつくり、ついには山羊小屋の軒下まで占領している。
 そのブロックごとに割った年を書いておき、古い順に燃やしている。かれこれ3、4年分は確保したろうか。これだけあればひとまず安心だ。すると、
「預金通帳の0が一桁増えるよりうれしいわ」
 とウチの奥さんがしみじみ言ったりする。

薪割り(1)

P1240599「薪割りは二度暖まる」
 と語ったのはソローだったか、カーネーギーだったか。薪を割れば身体が暖まり、ストーブで燃やしてまた暖まるというわけだ。それで料理すれば「三度暖かくなる」とするアメリカの諺(ことわざ)もある。

 薪を割って暖まるとなれば冬の話だろうし、冬支度のイメージとしてよく紹介されている。しかし、寒い最中に割った薪をそのまま焚くことは、わが家ではほとんどない。割ったばかりの薪は、よく燃えないし、煙が多くて煤がたまりやすい。タール分やクレオソートが付着して、煙突つまりの原因となり、掃除を怠れば煙道火災の危険すらある。

 枯れた冬に切りだした薪の原木は、春に割り、梅雨前には雨の当たらない軒下や薪小屋に積み上げておく。そうして次の冬になれば、まあまあ使える薪になるだろう。わが家ではもう1年間、よく乾かしてから焚くようにしている。
 薪にするのは広葉樹にかぎり、原木は大体購入しているが、たとえば今年のように「もらったり拾ったり」で入手することもあり、先日、一気に片づけてしまった。

 それにしても薪割りは大仕事だ。しかし、けっこう人気があり、これがために田舎暮らしを選んだ人がいるくらいだ。
「薪割りを好む人が多いのは理解できる。この仕事は結果がすぐわかる」
 アインシュタインがそう言ったそうだが、薪割りを単純な仕事と見ていることがみえみえで、あまり好きな言葉ではない。

 薪には割りどきや割り方があり、たぶんアインシュタインは「木元竹末」という言葉を知らないのだろう。木は元(根元)から、竹は末(梢)からのほうが割れやすい、という教えだが、なぜそうなるかを考えたとき、私にとっては「相対性理論」と同じほどにむずかしい。
 またストーブにあわせて玉切りしたあと、三日ほど経ってから割るほうがよい。切り口に小割れが走っているのは、乾燥して内部応力があらわれたからだと聞いたことがあり、割れにそって斧を入れてやれば、当然よく割れる。ただし、あまり乾かしすぎると、切り口が固くなって割れにくくなる。

 木の種類によっても割れ方がちがう。ナラやクヌギはよく割れ、クリは見かけは固そうだが、だらしがないほどスパッと割れてくれる。サクラやケヤキはかなり手こずることが多い。木の繊維が入り組んでいるからだが、森深くで育ったものはあんがい割れやすい。風のあたりが弱いせいだと聞いたことがある。成長の仕方も割れに関係してくるわけだ。

 もちろん道具にもよる。斧(おの。ヨキとも呼ばれる)が一番いい。刃先幅がひろい鉞(まさかり)は、するどい刃先が食い込むだけで薪は割れてくれない。伐採やはつり用の道具なのだろう。とにかく刃先が鈍角で重い斧がむいているが、重さがある分振りあげるのが大変、ということになる。

 振りあげた斧は一気に振り下ろす。そのさい小割れを正確に狙い、木目に刃の向きを一致させる。これを刃筋と言い、当たる瞬間に手の内を締めると、たとえ埋もれ節があっても刃筋は狂わない。というような体験を短編小説に書き、電子書籍でも配信したが、それはまったくの余談。


 そうした薪割りを20年間つづけたが、70歳近くなった数年前、とうとうエンジン薪割り機を購入した。オークションで手に入れたもので、格安な中国製だけに不具合が多く発生したが、曲がりなりにも使えている。動作は遅いが、27トンという強力なもので、節の部分でもむしるように割れてしまう。これで楽になったのは事実だが、「木元竹末」なんぞはまるで関係なくなった。

 つまりわが家の薪割りは、いまやアインシュタインがいうところの「結果」だけの作業と成り下がってしまっている。……つづく。