いまさらのバンドソー③

 中古入手したバンドソーCB65Fには、ご多分にもれず取扱説明書が付いておらず、そのためいろいろ探し回ることになった。
 それにしても取扱説明書はおよそ冷遇されている。ろくに読まれず、そのまま捨てられたり忘れられたりするのは、かつて広告物制作にたずさわり、取説やマニュアルづくりの経験があるだけに悲しい。

 世間では「マニュアル人間になるな」などと言ったりする。マニュアルに書かれた決まったことしか出来ず、予想外の事態に対処できないような人間では困る。自分で判断しろ、ということであるらしい。むろんマニュアルは無視してもよいとの意味ではない。
 そもそもマニュアルには、一番大切な事柄を書いてあるもので、それ以外の事態や対策をすべて書くのは不可能ごとだ。つまり予想外とされる事態の多くは、マニュアルに記載された絶対守るべき事項をおろそかにした結果であって、「マニュアル人間」からの脱却は、マニュアルを完全に理解してからの話だろうし、そのためマニュアルはいつも手許に置いておくのがいいと思う。

 CB65Fの取扱説明書は「木工屋 hiuma」さんから譲っていただいた。ネット上を探しまくり、厚かましくもコピーをお願いしたところ、こころよく送ってくださったのだ。まことに深謝……。

 まずは一読する。その結果10ページ下段にある「オビノコの刃幅1.25㎜」は「12.5㎜」の間違い……などとつい校正してしまうのに苦笑する。
「ガイドの使い方」にある図解によれば、ガイドの先端は、のこ刃より先には出ていない。加えて切断材とはがき一枚のすき間をもたせ、ガイド末端を1㎜ほど傾けるのが挽き曲りを防ぐコツらしい。

 また標準装備された「挽材案内装置」は、挽き曲りを防止するため木材を押しつける働きがあるようで、その量は5~10㎜が適当と書かれている。この数字はどうやら押しつけるスプリングの曲り量らしいが、それでいて「はがき一枚」のすき間、というのはどうした意味だろうか。

 自作した平行ガイドには、のこ刃の先まである長めの板を設けてある。これがどう影響するかは、むろん取説には書かれていないが、あくまで「挽き曲りを防ぐコツ」であって安全性には問題はないらしい。だからこそ市販されている多くの平行ガイドも長いのだろうと判断した。

 のこ刃は「岩崎目立加工所」に3種類注文した。のこ幅10㎜・16㎜(各1102円)・50㎜(2424円)+送料・消費税とかなりの格安。いろいろ試そうととりあえずの購入だったが、注文後の連絡・届いた品物の丁寧な梱包ぶりはとても好感が持てた。

 まずは幅50㎜刃を取付けてみた。0.8㎜とやや厚みがあるのこ刃だけに、弾力が強くて取り扱いに苦労した。鋭い刃先で指を傷つけぬよう皮手袋を使い、純正のこ刃65㎜と同様、のこ車から刃先がすこし出るように調整した。これは刃に設けられたアサリ(抵抗を少なくするため刃を一枚ずつ左右にひろげてある)がのこ車でつぶされるのを防止するためらしいから、50㎜幅ながら純正65㎜と同じよう処置することにした。

 また取説には、のこ刃のぶれ止めとなるセリは、65㎜幅とそれ以外の細刃では反対に取付けると記載されている。購入機には6㎜の細刃が装着されていたため、セリも反対になっていた。切削テストのあとに気がついて二股側につけ直したが、取説がなければ気がつかなかったかもしれない。

 切削は杉材でテストした。モーターの駆動音はかなり大きいが、チェンソーのエンジン音ほどではなく、のこ刃も下にむかって走るだけなので、回転するチェンソーやテーブルソーのようなキックバックは起こらない。そうした安全性がバンドソー購入の大きな理由なのだ。

 切削速度は思っていたより速い。切削面の仕上がりは他機種を知らないので比較は出来ないが、チェンソーを使い慣れた身には十分満足できる。全刃チップ付(6439円)も用意されているので、堅い材で支障があるようならぜひ試してみたい。
 心配したドリフトはわずかに起こるようだが、テスト切削では紙一枚はさむ程度で解消でき、自動鉋で仕上げるのだからまったく問題はない。

 とりあえず薪材の丸太を板に挽いてみるつもりだが、本格使用がいつになるかはわからない。冬ごもりの季節は小説書きと決めているのだ。

いまさらのバンドソー②

 腕力(うでじから)にはまったく自信がない。持つのは箸とペン……などと言うつもりはさらさらないけど、3×6合板一枚運ぶのがやっとなので、そんな男がログハウスを造ったと言ってもなかなか信じてもらえないのだ。

 という話はともあれ、入手したバンドソー日立CB65Fは73㎏もの重量がある。とてもじゃないが持ち上げられない。もちろんバックフォーはデッキ下には入れず、アームも届かない。
 完成した台座を前にしてしばし考えることになる。

 薪割り機移動のためのハンドウィンチや滑車があるが、吊り揚げるとなるとやはりチェーンブロックだろう、と近所の自動車修理所から借りてきたが、吊り下げる場所がない。デッキを支える丸太にフックをねじ込んだが、やや場所がちがう上、はたして70㎏の吊り揚げにフックが耐えられるか不安がある。

 そこで「建て起こし」を考えついた。丸太の柱などの全体をつり上げるより、上部先端を引き起こして立ち上げる方法のほうが(どのくらい減るかは知らないけれど)少ない力で作業できる。この方法ならねじ込みフック+滑車+ハンドウインチで行けそうだった。

 まずバンドソーを横に倒し、完成した台座を取り付けてしまう。バンドソー側に用意された取付け穴は12㎜だが、10㎜のボルト4本を使用する。これなら台座側が多少狂っても取付けられる。
 スプリングワッシャをかませてしっかり固定したあと、スリングベルトを巻き付けてゆっくり引き起こし、45度ぐらいになったところで肩を入れて直立させた。
「案ずるより産むが易し」……あんがい簡単な作業だった。

 さび付きを処理したあと平行ガイドを造ることにした。CB65Fの作業テーブルは、鉄板をプレスして作られている。そのためきっちり直角になっていないので、おそらく既製のリップフェンスが使えないだろうし、そもそも「買うより造る」がモットーなのだ。

 そこで古い丸のこスタンドに付いていた鋳鉄製の平行ガイドに目をつけた。同じようなプレス鉄板用だからと試してみたが、バンドソーの折り下げ部のほうが3㎜ほど長い。つまり取付け穴を長穴に改造する必要があり、チェンソーの目立てヤスリがちょうどよかった。

 フェンスになるナラ集成材に穴加工を施し、六角ボルトを通してナットではなくノブで締め付けた。ホームセンターで売られていたプラスチック製ノブの利用は、たぶんドリフトの調整が必要になるだろうから、そのさいスペーサーをはさみ込むのに便利だろうと考えたのだ。

 とりあえず完成させた形状は、およそはネットで検索した平行フェンスに準じていて問題ないはずだ。ところが「ひょっとして違うのか」という懸念が浮上した。

いまさらのバンドソー①

「午後に届くらしいわ、家財便」
 電話を受けた奥さんが不審そうな顔でつづけた。
「バンドソーってなあに、オークションでまた買ったの?」
「ああ、木工機械……。板に挽くもの」
「この前はチェンソーで切っていたじゃないの」
「細かに切るのは無理だからね」
「ふーん、板ならいっぱいあるじゃない。第一、何を造るのよ」
「…………」
 すぐには答えられない。必要な家具はあらかた揃ってしまい、いまさらバンドソーを入手しても造るものがない。

 運ばれてきたのは日立バンドソーCB65Fの中古格安品。コンパクトな形状ながら挽き割り250㎜の性能があるのが気に入ったが、なにせ70㎏を超える重さがある。積んできたトラックは低床タイプで県道から入れず、係員二人がかりで坂道を運んでくれた。

 設置したのは、物置状態だったのを前もって片付けてあるデッキ下。運びこみやすいよう柵は取り外しタイプにし、地面には軽トラ用のゴムマットを敷いて湿気除けとした。

 さっそく動作点検をする。6㎜の細いブレードが付いていたが、平行フェンスや取扱説明書は付属していない。モーターの動きに異常はなかったが、ブレードの横ぶれ止め(セリと呼ぶらしい)を上下させる軸およびブレード背後のベアリング軸が固着し、セリ自体もブレードにこすられて損傷していた。
 とりあえず潤滑油をスプレーしてみたが、さび付きはとれない。しばらく放置して台座を造ることにした。

 どのくらいの台座が作業しやすいかわからない。本体の作業テーブルは高さ35センチほどで、あまりに低くすぎるだろう。調べたネット情報では胸の高さが多いようだから、とりあえず65センチ高の台座を造ることにした。

 材料はありあわせの45×90㎜のスギ材。ルーターで溝を掘ったのは、強度補強に12㎜の針葉樹合板をはめ込むため。汚れていたのでオイルステインで黒く染め、表面から止めたクギも黒マジックでごまかした。
 いつものようにポケットジョイントで組上げ、中に棚を造るだけにするつもりだったが、勢いづいて扉も製作する。あいにく1寸厚の板しかなかったのでやや無骨な扉になってしまう。こうしたときバンドソーがあればすぐさま挽き割りできるわけだ。

 仕上げの塗装もないので簡単に完成したが、70㎏をどうやって持ち上げるかが問題だった。

ソファ改造

 10月になって本格的に薪ストーブを焚くようになると、ストーブ前に置いたソファがとても近しく思えてくる。なにやら食べながらグダグタと過ごす時間が多くなるからだが……、
「やはり邪魔だな。いっそとっ払うか」
 と前々から考えていたことがある。

 ソファと言っても出来合いの座椅子を利用し、自作した木枠にセットしたものだ。母屋を建ちあげたすぐあと作ったはずで、ナラ材をホゾで組みあげ、やや幅広の手すりはアルダー材を使った。

 ストーブ前には二人用と一人用を並べ、曲りケヤキの一枚板のテーブルとほどよいセットになっている。5,6年ほど前、座面がへたったのでポケットコイル座椅子と交換しているが、かれこれ20年ほども親しんでいたわけだ。

 しかし邪魔なのだ。間にある手すりは、コーヒーカップを置いたりするのに便利だが、寝っ転がるときに足がのばせないのである。

 そこでデッキに引っ張りだしての改造ということになったが、さしたる加工ではない。
① アルダー材の手すりをクランプを押し広げるようにセットして取り外す。
② ナラ材の柱を切断する。
③ 改造した手すりを取り付け直す。本来ならホゾを作り直すべきだが、見えない裏側からのビス止めとした。
④ 一人用も同じ作業で改造する。

 そんなこんなの2時間の作業で完成。しかしかなり古いのでやがては作り直しになるだろう。

「これでいいわ。今度の買い物でポテトチップス買わなくちゃね」
 とは、試しに寝っ転がった奥さんがのセリフ……。