自給ってわけではないけれど……

 春が遅い土地柄だが、さすがに遅霜の心配はなくなり、集落で唯一の田圃の田植えもおわった。となればデッキ屋根架けのログ作業にかかりっきりというわけいかず、一時休止して合間の農作業……。


 4月に仮植えした里芋は、ようやく芽が顔を出しはじめた。いくつか腐ったが、一応発芽はしている。寒さによるもので病気ではないとは思うが、もう10年近くも更新している。そろそろ元気な種イモの導入を考えた方がいいのかもしれない。

 ズッキーニ、コリンキー、枝豆の苗も順調に育っている。ま、種子会社から購入した交配種なので発芽率はいいし、育てやすいが、種は一代かぎりで、毎年買わなくてはならないのが気に入らない。

 バターナッツやピクルス胡瓜は自家採種している。ピクルス胡瓜をはじめたのは6,7年前になるだろうか。ネットで見つけたイタリアかスペイン産だったかの種で、10粒ほどで800円ほどもしたが、自家採種できると説明書にあったのが購入動機。いらい毎年、いっそ売り出すか、と考えるほどの大量な種子を採っている。
 ちなみに登録種苗は、個人的に種を採るのは認められている。だが、たとえ無償であっても配布するのは禁止されており、種苗法違反は個人の場合300万円以下の罰金だそうだ。

 試みに去年、一昨年の種を蒔いてみたが、発芽率はどちらも変わらなかった。種は一体、何年保存できるのだろう。縄文遺跡から発見されて、みごとに発芽した「大賀ハス」の例もあるけど、保存次第ということなのか。
 いずれにしろ「手種(てだね)」があるのはチョット気分がいい。

P1250027 ピーナッツの栽培目的は二つ。「茹でピーナッツ」のおいしさといったらないのだが、生豆となると販売がかぎられ、いつも買いそびれてしまう。また奥さんの山羊ブログのコメント(なんと米国フロリダかノースカロライナから)に「ピーナッツ・ヘイ」を山羊餌にしているとあったらしい。そこで寒冷すぎてあまり収穫はのぞめないながら、あえての強行栽培。

 山羊餌用のイタリアンライグラスは固くなりすぎたので刈り倒し、バックフォーでざっと耕してサツマイモでも植えてやろうか。もちろんサルやイノシシに荒らされてイモの収穫は望めないけど、山羊餌の蔓ぐらいにはなるだろう。残ったサツマイモで苗を生やしてみようかと思っている。


 ログ作業の合間の農作業。そんなこんなで作家作業はまるでご無沙汰だ。

巣立ち待ち

「どう? もう天井張れた?」
「いや、それがさ……」
「高いから、足場組むのが大変だったろう」
「なに、足場はもう組み上がっているし、大部分は張れたんだけど、残りはちょっと待ちなんだ」
「待ち? なにを待ってるの」
「巣立ち。鳥のね」
 というような会話を、ずっと以前にログハウスのセルフビルダーと交わしたことがある。よくある話なのだ。

 およそは山の中、森の中。ほとんど人は通らないし、町の喧噪もなければ大気汚染もない。ときおり聞こえるのは、吹き抜ける風にゆれる木の葉の音だけという場所に、わざわざ住もうという人間も酔狂なものだが、おかげで蛇や猛禽などの天敵も近づかない。子育てには絶好の環境だ。

 と野鳥たちは思うのだろう。建築中のログハウスに巣作りされて、仕方なく作業中止に追いこまれることがしばしばある。
 天井近くの梁や母屋に作ることが多いのだが、手製したクレーン塔のなかで小鳥がバタバタしている、と赤城山のビルダーから聞いたことがある。補強のために張った板に穴をあけて落ち込んでしまったのだ。

「キツツキさ。中が空洞だから、虫がいると間違えたんだろうね。仕方がないから板を外して逃がしてやったさ」


 デッキ屋根架けのため、丸太ポストの刻みをはじめた。まだデザインの全容は決まっていないが、既存デッキに差し込む部分なら先行製作できる。そうして何本か刻み終えた丸太の近くで、チチッと鳴き声が聞こえ、黄色いものが眼のすみを横切った。それで気がついた。
「あ、キセキレイ、まずいぞ」

セキレイK03 毎年のことだが、デッキ上の梁にキセキレイが巣作りをする。あちこち飛びまわって枯れ草やワラやらを集め、放牧場の柵に引っかかった山羊の毛をくわえたりして巣をつくる。
 卵を産み、抱卵し、孵化して巣立つまでひと月ほどもかかるだろうか。卵や雛を狙う蛇さえ気をつけていれば、別段、悪さをするわけではないので、そのまま見守ることになる。しかし去年の巣は、屋根を架ける梁に作られていたわけで、ことによれば作業延期ともなりかねない。


 さっそく点検したが、さいわい卵はなかった。巣は撤去して一件落着。

 そんなこんなで慌ただしく、配信予定のデジタル作業がまるですすまない。つい先日、ボイジャー社のRomancer「いろいろ情報」に紹介されたりしたので頑張りたいが、校正読みをしてもちっとも集中できないでいる。

切り株椅子

0b5e2b4dd7945700eb92ed7b4b109c2d先日つくった切り株椅子は、もともと抜根できなかったための産物だ、電気や水道(ポンプアップした井戸水)の配管があるため、根を掘り起こすとなるとちょっとばかり面倒。それで椅子、ということにしたわけで、買い物帰りや草刈り途中でひと休みするとなかなかに快適だ。

あまりに快適すぎて立ち上がれない、というのはウソ……。

 

 

P1240795原因は、これ。杉のヤニだ。杉脂(さんし)と読むらしく、生薬として利用される。薬用アルコールに溶かして、ひび、あかぎれに塗り、また肩こりや筋肉痛にも効果があるようだが、煎じて飲用すると淋病に効くとある。試す機会は訪れるだろうか。

 

 

ちなみに杉は日本固有種。だとすると生薬として利用するのはわが国だけで、いわゆる漢方薬としては調合されないのかもしれない。いずれ調べてみるつもりだ。

弓道のギリ粉としても使用する。寡聞にして初めて聞いたが、弦をひくさい馬手(右手)にはめた皮手袋(ゆがけ)につける滑り止めの粉。引くときギリギリ音がするところからの命名のようで、的中粉と呼んだりする。

固まったヤニを熱して溶かし、火にかけ五分の一ほどになるまで煮詰め、冷やして固めたものを粉に砕いてつくるようで、松ヤニより上質な白いギリ粉になると書いてあった。

とにかく脂だから、座るたびにベタベタとひっついてしまう。よく見ると皮と辺材の境目から滲み出ているようで、ならば、とばかりに皮むきにとりかかった。

杉に限らず、樹木の皮は伐採直後のほうが、水分を含んでいて剥きやすい。根から水分を吸い上げる季節、つまり夏伐りの杉なら気持がいいほどに剥ぎ取とれ、屋根葺き材につかったりした。ただし材木としては乾燥に手間がかかるため、流通している材木は、水を吸い上げない冬伐り材がほとんどだ。

ログハウス建築は、何はともあれログの皮剥ぎ(ピーリング)作業からはじめる。回転ノズル付きの高圧洗浄機を使えば、皮の固い冬伐り材でもきれいに剥けるが、セルフビルドとなると手道具が普通だろうか。

両手持ちのドローナイフを引き剥ぐように使うのだが、腕力のない私は、突きノミを好んで使う。腕の力だけで引くより、体重をかけて押せるほうがずっと疲れが少ないからで、最近、手に入れた氷彫刻用の平ノミがかなり使える。

P1240880仕上がった切り株椅子の横で、さっそくの作業……。デッキの屋根架け工事にとりかかったのだが、丸太の皮を剥ぎ、ホゾを刻むといった進捗状況は随時お知らせする。

竹の子掘り

川岸の竹林に竹の子が顔を出しているのをみつけた。例年だったら連休明けのころなのだが、すこし早い。やはり今年は暖冬だったようで、早速にも、裏山の竹林を点検せねばならない。

わが集落で採れる竹の子は、土質のせいか、気候が関係するのか、エグミがほとんどなく、とてもやわらかい。移住したての20数年前の頂戴もので、その美味しさにおどろいたものだが、現物を見てさらにびっくりした。

土間にごろんと転がった竹の子は、長さ50~60センチもあり、その先端には青々とした竹の葉まで生えている。皮をむいた中身も青みを帯びていて、ほとんど青竹状態。それを大釜で茹でただけで(アク取りの糠も使わずに)やわらかになる、というのだからちょっと信じられなかった。

ふつう竹の子掘りと言えば、地面のひび割れを見つけ、そこから顔を見せたか見せないかのころ、折らぬよう周囲を慎重に掘りすすめて採るものだ。ところが土地では、大きく成長させたあと、根元のあたりをバッサリ切ったり、あるいは蹴っ飛ばして折ったりする。「竹の子掘り」ならぬ「竹の子折り」だが、それでも十分美味しいのだから問題はない。

そうした美味しさを山に棲む彼らが放っておくわけがない。入れ替わり立ち替わりして竹の子掘りに精を出すようで、遅くに収穫する人間さまはそのおこぼれを頂く、といった案配になり、年によっては収穫ゼロにもなりかねない。

 

さて今年はどうか、と竹林に登ってみる。とんがり帽子があちらこちらに顔を出しているが、よく調べると、それと同数ほどの竹の子が食べられてしまっている。しかし、今年の出来はわるくない。暖冬のせいで育ちが早かったの幸いしているようだった。

P1240776大きくほじくり返しているのは、たぶん猪だろう。まだ土から顔を出していない竹の子を、するどい嗅覚で探りあて、鼻先で土を掘り起こすらしい。

 

 

 

P1240784一方、先端が囓り折られているのは猿の仕業だ。一番やわらかで甘みの強い先端部をひと囓りして、ポイと捨てるのが彼らのテーブールマナー。

 

 

 

つづいて人間さまの番だが、竹の子掘り用の鍬(ばち鍬)などは持ち合わせていないので、剣先スコップを利用して掘り起こす。やわらかそうなものを選び、根元のあたりに差し込んで、グイとこじればすぐ採れ、5,6本もあれば十分だ。

P1240825世間よりかなり遅い春の恵みだが、お定まりの竹の子ご飯、煮物、あるいは中華風にしたりと、独特の甘みと歯ごたえを連日のように楽しむ。今日のお昼には、炒めてラーメンの具として利用したが、そろそろ飽きてきた。冷凍できるとネットに書いてあるので、要研究か。

杉伐採

すっかり失念でした。二回にわけた「薪割り」の投稿、予告ではケヤキを囲炉裏では燃やさない、という事象について書く予定で、そのためすこし調べもしたが、けろりと忘れてしまった。驚いたことに都市部に多いケヤキ並木の落ち葉処理に、やっかいな問題が持ちあがっているらしい。しかし、これについては改めて書くということで、ご勘弁ねがいます。


ところで懸案だった杉2本を伐採した。県道からの入口付近に立っている樹齢50年ほどの杉は、冬の間、デッキや放牧場に大きな日陰をつくってひどく冷える。その度に「いっそ伐採するか」と考えていた。
しかし、伐り倒すには場所が狭すぎる。もちろん伐採用重機を頼んだり、大型クレーンで吊りながら伐採という方法もあるが、それを準備するだけで7~10万円の費用はどうしてもかかってしまう。
聞くところによると、樹高メートル×5,000円で伐採を請け負う業者があるようで、ここに依頼すると約15メートル×5,000円×2本で、
「え? 15万円? ご冗談でしょう」
と、つい大声が出てしまうような結果になる。

そうしたところに放牧場の柵が腐りはじめ、修理せねばならなくなった。そこで考えたのが、いっそ放牧場を狭くして伐採場所を確保する方法だった。
その一方でデッキに屋根をかける計画が前からあった。2×6防腐材を使用するデッキ床の張り替えは、4、5年後には必要になるはずだが、こちらは70歳超の年齢。映画「カサブランカ」のハンフリー・ボガートじゃないけれど、
「そんな先のことは考えられない」
今のうちに屋根を架けてしまえば20年間は大丈夫か、などとも考える。つまり「終活」の一部分というわけだ。

そこでまたまた考えた。まずデッキ屋根架けのため部分解体し、そこから出た防腐木材を放牧場の柵に転用する。広くなった放牧場にむけて杉を倒し、その杉を製材してデッキの建築材に使用する、といったケチケチ・サイクル。はたしてうまく機能するかは、結果をご覧じろ。屋根架け工事のすすみ具合とあわせて逐次ご報告することにしておこう。


そんなわけでデッキ部分解体、放牧場減築はすでにすませ、いよいよ杉伐採と相成った。が、さすがにこれには手が出せない。丸太はさんざん切ったり刻んだり、製材したりしたが、伐った経験、つまり立木伐採の経験はないのだ。
そこで隣家のプロ(立木伐採士)に半日のアルバイトをお願した。すでに引退しているが、そこはそれ経験豊富で、ピンポイントの方向に倒してくれる。
まず倒す方向に「受け口」を切り、反対側から「追い口」を入れ、「つる」と呼ぶ直径の4分1ほども切り残したあと、追い口に「くさび」をたたき込む、という手順だそうだが、今回はアームの長いバックフォーで押して倒す。このほうがずっと安全なのである。

P1240680一本目はほぼ完璧。ただし広げた放牧場の柵にあと1メートルほどと際どかった。斜めに成長していた2本目は、やや右にずれたが支障なく倒木。こちらはバックフォーを操作しただけだが、ひどく緊張。そのせいか写真がすくないので、奥さんのブログをリンクしておきます。

P1240712ちなみに切り株は抜根しない。そのため長めに伐り残し、椅子ふうに加工しておいた。買い物帰りにちょっと一休み、といったための用意で、これも「終活」のひとつと考えてもらっていい。

と書いてまた忘れるところだった。今月配信した「乱の裔」の紹介です。徳川家康が仕掛けた大坂城攻めに、足利幕府の末裔が大活躍する、痛快な長編戦国小説です。

乱の裔