猿来襲

「来たわよ。やられたわ」
「え?」
「猿、ジャガイモ全滅よ」
 起き抜けに奥さんから告げられ、あわててデッキに出てみる。その惨状に声もない。
朝早くにあらわれた一群の猿が、よってたかってジャガイモを朝食としたらしい。
「かわいい小猿もいたわよ」
 とたまたま来客していた女性カメラマンが撮影したらしいが、口惜しさのあまり写真を見るどころではない。
 そうした失意を乗りこえての臨時投稿ゆえ、来襲状況をくわしく述べる気にもならないので奥さんのブログでどうぞ。

「やれやれ」と気をとりなおして荒らされた畑を片づける。茎を引っこ抜いたあと、イモを掘り出した形跡があるが、穴はさほど深くはない。
「このぶんなら少しは残っているか」
 とかすかな期待をこめて掘り起こしてみると、結果、予想外の収穫だった。

 今年はマルチを張り、芽欠き・土寄せをちゃんと施したので、ことのほか生育がよかった。梅雨が明けて地面が乾いたころ収穫か、と思っていたところ猿に先を越されたわけだが、どうやら早く実ったイモは深いところで成熟したおかげで被害をまぬがれたらしい。
「猿害がなければこの倍はあったろう」
 といくぶん口惜しさがこみ上げてくるけど、あんがいの収穫量に気分はわるくなく、隣に植えた収穫前のズッキーニに被害が及ばなかったのは幸いだった。
 ただし、こんな湿気った時期の収穫だけに長く保存はできない。この先ポテト料理を増やすことになるだろう。

パンク修理

 車に乗るようになって50年以上にもなる。初めて運転した車はヒルマン・ミンクス、いすゞ自動車がノックダウン生産していたイギリスの車で、こんもりとした車体に品があり、変わったギァ操作するおもしろい車だった。
 まだ十代のころ、カメラマン助手として入社した会社の重役が所有し、終業後に車ごと運転貸しコースに付き合ってくれた。そんないい時代もあったのだ。

 一ヶ月ほど練習して東京・府中にある運転試験場で直接受験したが、1回目はあえなく失敗。たぶん法規(運転の実地、法規、構造の3項目の試験があった)をやり直したはずで、二度目でなんとか合格。そのころは教習所も少なかったので、こんな方法で免許を取得する人が多かったのである。

 必死に倹約して中古車を買い、そのころ評判のホンダN360をローン購入したあと、箱型スカイラインなどのスポーツタイプの車を何台か遍歴したが、田舎に移住するころにはもっぱら四駆車を愛用。長距離使用が少なくなった現在は、スズキ・ハスラーに乗っている。ホンダN360以来、約50年ぶりの軽自動車だが、その性能アップにはおどろかされる。
 イタリア・ミラノの有名自動車デザイナーが、日ごろジャパン・コンパクトカー(つまり軽自動車)を愛用、とネット情報にあるが、この性能ならあり得るなと思わせる話だ。

 むかしはタイヤのパンクが多かったものだが、舗装がすすむにつれて激減し、路上でのタイヤ交換など30年以上も経験していない。もっとも自宅をセルフビルドしたころは、敷地内に落ちていたクギやビスを拾って何度かパンクさせてしまったが、つい先日、ころがっていたビス付の木片を踏んでパンクさせてしまった。草刈りのさい柵の腐食部分を外れたのを放置していたのだ。

 ところが最近の車にはスペアタイヤが搭載されていないのである。おそらく燃費向上のための軽量化の一環で、代わりに修理キットと空気入れが用意されており、説明書の細かい文字を苦労して読みつつ修理を実行した。

 基本的にはむずかしい操作はない。刺さったビスを抜いたあと、バルブを外してよく振った修理液を注入し、バルブをもどして空気入れをバッテリー駆動させればいい。小型の空気入れだけに規定の空気圧まで10分ほどもかかり、空気に押された修理液が穴を塞ぐ仕組みになっている。
 つまり損傷部分に修理液がきっちり届くよう真下にする必要がある、と気づいてやり直した。空気が入りだすとジブジブと白い修理液が滲みだし、やがて穴が塞がれるにつれて空気圧が上がってくる。

 修理後はすみやかにタイヤ修理に持込むよう説明書にも記載されている。あくまで応急処置なのであろう。しかも今回の損傷は、側面に近いゴムが薄い部分のため修理不能とのこと。いまのところ空気漏れはないが、高速走行時に漏れでもしたら危険なので、新品タイヤと交換することにした。

生ファーベを食す

 そら豆が収穫時期をむかえた。昨年の秋に植えた一寸そら豆と生食用ファーベ(fave)が冬の寒さを克服し、猿に引っこ抜かれながらも辛くも持ち直してぐんぐん育ち、宙を指していた莢が大きくふくらみつつ下がってきた。

 いよいよ食べ時だろう。スーパーマーケットで鹿児島産のそら豆を見かけたのは、かれこれ2ヶ月も前だったが、それをぐっと我慢してきたわけで、その甲斐あってか試食の結果は予想以上だった。

 野菜の採り立てのおいしさ体験は、田舎暮しの醍醐味のひとつだが、採り立てそら豆の味はとびきりだった。わが家ではトウモロコシ・アスパラ・枝豆を三大採り立てと認定しているが、それと肩をならべる高い評価となった。

 茹でて食べる一寸そら豆にくらべ、ひとまわり小さいファーベ(fave)を食べるのは初体験だ。しかも生食と知ったのは、かなり以前のブログだったが、なにしろ市場で売られていないので試しようがない。昨年それを思い出して種を蒔いたのだが、はたして無事育つのかと危ぶんだけに、試食をひどく楽しみにしていたのだ。

 ブログにあるように羊チーズのペコリーノ・ロマーノを購入し、どうせならと冷蔵庫に入っていた山羊チーズもならべてみたが、断然ペコリーノのほうがうまい、というのが私の感想だ。
 ちなみに山羊飼いの奥さんは、山羊チーズのほうがいいらしいが、たぶん山羊好きの身びいきが働いているのだろう。

 ともあれオリーブオイルともよく合い、爪楊枝にチーズのかけらとそら豆を刺して食べれば、酒のつまみに絶好だった。生のそら豆だけにわずかながら青臭さが感じられるが、ペコリーノを一緒にかみしめると、その塩味と相まって味は絶妙。
 かるく茹でてパスタに合わせてもわるくなく、かくてリピート栽培が文句なく決定したのだった。

ニンニク収穫

 思いのほか豊作だった。毎年栽培するのは国産の福地ホワイト6片だが、昨年はデッキ屋根架け工事で忙しく、ついつい種ニンニクを買いそびれてしまった。仕方なく中国産ニンニクで代用したものの、ほぐしてみると10片近くあって小ぶりニンニクばかり……。
「こりゃあまり期待できないな」
 と思いつつ植え込んだ記憶がある。

 ニンニクは、例年、10月ごろに植え込み、梅雨入りどきの6月中ごろ収穫、と約8ヶ月以上の長期栽培になる。年の暮れには10センチほどに育つ苗は、土が凍りつくような寒さにも負けず、雪に埋れながらも青々とし、春に先駆けてモシャモシャと葉をのばしてくる様子は感心するほど逞しい。

 連作障害は出にくいそうだが、3年目には収穫が落ちる、との情報もある。そこで出来る限り場所を変えることにしているが、昨年は堆肥置き場の近くに、山羊餌用のイタリアンライグラスとならべて植え込んだ。いつもより発育がいいのは、堆肥運びの手間がはぶけて量が多くなったせいもあるのかもしれない。

 ともあれニンニク栽培は、その匂いのせいだろうけど、猿の害にも遭わず、もちろん鹿の食害もない。隣りあったイタリアンライグラスは、まるでバリカンで刈ったように鹿に喰われてしまい、あわてて周囲にネットを敷き、水糸を張り巡らすのが、わが家の鹿除け方法だが、ニンニク畑にはまったく近寄らないのだ。

 草取りもしない雑草だらけになったニンニク畑に、一輪車を持込んで収穫を始めたが、予想外の豊作に、軽トラックを横付けしての作業となった。

 根張りがよくて引き抜きが大変だったし、珠の育ちもわるくない。粒は小さいながら匂いが強く、試食したところ風味もよかった。

 根を切り取り、茎を裂いて中の芯を切り取ったほうがよく乾く。茎を短く切り落として乾燥させる方法もあるが、あとで編み込むつもりなので葉を残して乾すことにしている。
 ちなみに寄生した虫は、上に昇るから珠を下にして乾燥させるほうがよい、とネット情報にあったように思うが、効果のほどは知れない。

畝立て器を試す

 かれこれ二十年近くになるはずだが、アマチュア感覚がぬけきらない農作業だ。毎年の経験はまるで身につかず、加齢ばかりがまとわりついて、年々しんどい作業になるばかりで、5,60坪ほどの小さな畑をもてあましてしまう。

 春先、バックホーで掘り起こしたあと小さな耕運機で耕している。オークションで購入した中古機だが、キャブレターを掃除してから動作は快調。これでかなり楽になったが、畝づくりがうまくできない。
 ご近所さんのようにクワをうまく使いこなせないのが原因だろうか。土を盛り上げるのにスコップを使ったりするものだから、腰がすぐに痛くなり、そのあとのマルチ架けを考えるとうんざりしてくる。

 耕運機に取り付ける畝立て器なるものがあると知った。いわゆる土を寄せる培土器とはちがうようで、左右に土を押しやり、畝の高さに土を盛りあげてしまうらしい。やや自虐的タイトルのブログを拝見すると、所有機(ヤンマー製車軸ロータリー式)でも十分使えそうなので、とりあえずSタイプを購入。こうしたニッチなアイデア商品をみるとすぐにも試してみたくなる性格なのだ。

 耕運機後部にある尾輪と畝立て器と交換するだけだから、装着はごくごく簡単。ただし取り付け軸に差し込まれたクレビスピンとR型ピン(スナップピン)を引き抜いたさい、畑近くの草地で作業したため、うっかり落としたRピンを探すのにひどく苦労した。さっそく予備を手に入れることにする。

 二度ほど耕したあと、畝立て器を走らせた。回転するロータリーが耕しながら進むにつれて、V字にひろがった鉄板が土を左右に押しひろげてゆく。結果、深さ20センチほどの溝が出来、行って帰ってくれば畝が完成している仕組みだ。

 よく耕したせいか、重たい感じは全然なく、ごくごくゆっくり歩くほどのスピードで畝が立てられた。土の性質や乾きぐあいにもよるのだろうけど、シンプルな形状ながらそれなりの効果に感心し、その発案と工夫に苦労しただろうな、と思わせる商品だった。

クレーム……一件落着

 デッキ家具を計画していたころ、やはり電動のレシプロソーがあったほうが便利かしれない、とネットで探したことがあり、たまたまのぞいたAmazonページに出物があったので、ついついクリックしてしまった。

 プロ用ではないながら定評のあるブラック&デッカー社製で、定価の半値ほどに値引きされたAmazon価格の、そのまた半値以下の2500円ほどで売られていた。いわゆるマーケットプレイスの商品だったが、新品と明記され、中古品ではない。

 いかにも低価格すぎるし、配送予定に日数がかかるところから、たぶん中国大陸の販売元だろうと推測され、あるいは偽物をつかまされるかとも危惧した。しかしブラック&デッカー社の製品はすべて中国産であるから、横流し品または荷崩れ品の可能性もあるぞ、などと考えたりもする。

 言ってみれば、都合のよいほうに考えたがる世の常、人の常に背を押されてクリックしたわけだが、とりあえず品物が届くまでの一部始終のスクリーンショットを保存しておこう、と考えたのは、一抹の不安があったからであろう。

 不安は的中した。上記に示したように「配送状況」のスクリーンショットでは、順調に運ばれているかのように表示されているが、「お届け予定日」を過ぎても届かない。こうした場合には出品者に連絡するように、としたAmazonの指示に従うと、ほどなく出品者からの返信メールが届いた。

「ご迷惑をおかけします。アカウントを乗っ取られました。したがって詐欺のサイトです。発送もされてないと思われます。
アマゾンマーケットプレイス保証を申請してください」

 すぐさまAmazonページの「注文の詳細」にある「マーケットプレイス保証を申請」をクリックする。ほどなくAmazonから申請を受付けた旨のメールが届くのだが……、

 細かくて読みにくいが「Amazonのギフト券」なら2時間以内に返金されますよ、という意味に書かれている。
 いやいや、巧妙だ……と苦笑してしまうが、早いに越したことはないし、いずれ買い物があるだろうから損はないか、と考えれば大方の人がクリックする。そうしてAmazonの仕掛けにまんまとはまってしまうわけだ。

 かくてアカウントにカードで支払った金額が登録され、詐欺事件のクレーム処理の一件、ぶじに落着するわけだが、ふと思い出したことがある。

「クレームは必ず発生するけど、べつに困ったりしませんよ。それを速く処理すればするほど信用につながりますからね」

 とは、30数年前の仕事で取材したベテラン自動車セールスマンの言葉だが、それにしても電動レシプロソー、買い直すかを考えねばならない。

デッキ家具 ③ベンチ

 家具の中でも椅子づくりが一番むずかしい。座る人間の加重がいつもかかっているため、なるべく丈夫にしたいが、それでいて動かすこともあるので軽くしたい、という相反する要望を満たす必要があるからだが、あまり動かさないベンチなら比較的つくり易いかもしれない。

 また背もたれに角度がないと座り心地がわるいものだが、大きな背もたれが付いたベンチの作り方をネット情報でみつけた。
 1×4材(19×89ミリ)を斜めに切り、背後に貼り付けて角度をもたせる方法はなかなかに興味ぶかく、しかも1×4材を縦横違えて貼り付けるというのは、いわば集成材の強さを利用できる賢い方法だろう。くわしくはリンクを参照されたい。

 参照リンクより大きくつくることになり、貼り合わせるとは言え1×4材では、いかにも強度が心許ない、と手持ちの角材35×60ミリを利用することにした。幅と厚さが違うので、材料取りのサイズ変更に手間取り、貼り合わせるため細かな材料が多くなった。

 ボンドを塗ったあとビスで止めるが、ボンドが滑って位置が狂いやすい。クランプを上手に使って固定するといい。またビス止め部分が内側になるよう、左右対称に組み上げるほうが見栄えがよい。

 塗装には、手持ちのマホガニー色の外部塗料を使った。たぶん購入したものの、色合いが気に入らなくて未使用だったのだろう。「ま、いいか」と塗ってはみたが、やはり赤みがかったマホガニー色はどうも好きになれない。もっとも高級材マホガニーなど使ったことがないので、本物がどんな色か知らないので、あまり悪口は言えない。

 脚部を組み上げたところで塗装し、前もって塗り上げてある背板や座板を組み付けた。これらの板材を固定するビスは、ザグリ穴にしたほうが見栄えがよく、ネジ頭が引っ掛かることもない。

 とりあえず3種類の家具が完成した。予定したとおり材料は一切購入せず、手持ちの塗料を利用したため、費用は約1000円の一部金具代だけだった。そうしたケチケチ制作のわりには、それぞれ面白味のある仕上がりになったと満足しているが、やはり家具は、硬い広葉樹のほうが仕上がりがよく、作り甲斐があるなと思った。

デッキ家具 ②小机

 デッキ用の小机は、丸太を重ねたログ壁(柱間に丸太を落とし込むピーセンピース壁)の前に設置する。花を飾ったりするのにちょうどいいはずだし、引き出しもつくるので小物を収納するのに便利だろう。東西に2台つくることにした。

 脚部は角材と板を組み合わせ、テーブルと同じくポケットホールジョイントで接合する。その上にのせるトップボード(甲板)は、約40センチ×85センチの大きさが必要だが、うち一枚は貼り合わせになった。接合面を平らに削り、ビスケットジョイントを使って接合した。

 引き出しづくりは、材料も多いし、手間がかかる。前板の欠き込みは、ルーターを使えば簡単だが、ビットなどのセットが面倒なのでテーブルソーで切り落とした。底板を差し込む溝をミゾキリで掘り、組み上げには、ボンドとビスを使った。
 軟材を考慮して強力に接合するためだが、出来上がりに反りが生じたのは、ビスを締め付け過ぎたためだったらしい。

 引き出しの奥行きが30センチしかないため、つい引っ張りすぎて落下しやすい。そこで落下防止のため、奧板にこんな金具をビス止めした。立てると上桟に引っかかり、横に倒せば引き出しが抜け出せる仕掛けだ。

 塗装にコーヒー染めを試してみた。石鹸作り用に買い置いたインスタントコーヒーを濃いめに溶かし、ただ塗りつければよい。作業中、コーヒーのいいかおりが漂ってなかなかに快適だった。もちろん乾いてしまえば触っても色移りはないが、濡れたときのために薄めのウレタン塗り・耐水ペーパー400番での研ぎ出し仕上げを施した。

 濃いウォルナット色のログ壁前に置くには、ちょうど良い色合いになったようだ。また引き出しの把手に、長めの自然木をあしらったのもわるくなかった。

デッキ家具3種 ①テーブル

 屋根を架けたデッキ用に家具をつくりはじめている。屋根架け工事の完成パーティの予定でもあるので、その用意の一環でもあるが、工事のさいに伐採した杉板を何とか使ってしまいたいというのが第一の理由だ。


 ノートに3種類の家具を考えてスケッチした。これを設計図代わりとし、
①材料は伐採杉、あるいは屋根工事の残材を使用し、材料にあわせてサイズ変更する。
②追加の材料・金具は、なるべく買わず、塗装も手持材料を工夫する。
③家具にむかない針葉樹材なので、ビス止めを多用し、トゲが刺さらない程度の仕上げとする。

 というラフな制作ながら、家具づくりとなればいろいろ準備が必要だ。なにより物置と化した作業台を片づけねばならないし、去年ほとんど使わなかった自動盤を整備する。20数年前の中古の頂き物だが、まだまだ使える。可動部にグリスを塗り、刃の交換などに2日間も要した。

 まずは杉板の荒取りからはじめた。伐採した杉を梁に使い、残りを40ミリ厚に挽いたもので、長さは4メートル超もある。一番大きな材をつかうテーブルは、長さ1800ミリもあるが、引き出しがある小机や人が座るベンチにくらべると造作が単純なので、冬ごもりで鈍った体慣らしにちょうどよいだろう。

 屋根工事の束用の105㎜角で脚4本をつくり、幕板にする板は、たぶん屋根の鼻隠しにつかった残りだろう。ほかに自動盤で仕上げた野地板を用意した。

 本来ならホゾ仕上げだろうが、今回はポケットホールジョイントを使い、手早く組み上げてしまう。数年前の円高のころ、USamazonに注文したものの、まだ一度も使っていない。斜めに穴をあけ、ビス止めしたあとの埋め木も用意されている。
 最近では日本でも売られているようで、ボンドを併用すればかなり強力に接合できる。

 二枚を組み合わせたトップボード(甲板)は、ほぼ一年間、自然乾燥させているが、湿気を吸えば、当然、伸び縮みをくり返す。硬い広葉樹だったら吸い付き桟を使いたい脚部との接合には、長穴金具を駒止め代わりに利用した。
 この程度の長穴では間に合わないかもしれず、軟らかな杉とあってネジが抜けてしまう可能性がある。要修繕を覚悟しておく。

 問題は塗装だ。このまま白木にするかとも考えたが、余っているウォルナット色のステインを塗って汚れ防止とした。塗ってみると、想定外に黒くなってしまったのは、どうやら黒杉材だったのが影響したようだ。いまごろ気づいても手遅れだが、薄いウレタンを塗り、研ぎ出して仕上げた。

表紙づくり

 久しぶりに電子書籍『無頼の辻』を配信することになり、その校正読みにようやく目処がたったころの話だ。東京からの帰りに東北道の羽生PAに立ち寄り、ふと思いついてデジカメ撮影をはじめた。この羽生PAは、池波正太郎さんの“鬼平の世界”を模したテーマパーク風が売り物で、あるいは時代小説むきの表紙づくりに役立つかもしれないと目論んだわけだ。

 ご覧のようにスナップショットばかりで、これを電子書籍の表紙に、というのはちょっと無理かなと思いつつも、とりあえず用水桶のショットを選んでみた。なんだか芝居の書割りみたいで、いささか迫力不足は否めない。そこですこし手を加えることにした。

 画像加工ソフトと言えば、もちろんPhotoshopだろうけど、価格が数万円とあってはご遠慮申し上げ、いくつかの無料ソフトを愛用している。今回はすべてをJTrimを使って仕上げているが、その過程を箇条書きにしてみた。

①JTrimを起動→画像ファイルをドラッグ&ドロップ。画像が大きすぎるときは、Ctrl+F12で画面にあった大きさに変換してくれる。
②イメージ項目→切り抜き。横2:縦3の比率にトリミングし、1400×2100ピクセルにリサイズ。ちなみに表紙サイズに決まりはないが、iBooksでは1400ピクセル以上でないとエラーになるので、このサイズに統一している。
③加工→フェードアウトで周辺を暗くする。レベルが調整でき、足らなければ2度、3度と繰り返せばよく、編集→元に戻すで何度でもやり直せる。
 また周辺を黒くするには、あらかじめ表示→背景色で黒を指定しておく必要がある。他の色を選択すれば、その色合いでフェードアウトする。
④カラー→ガンマ補正で濃度を補正したが、いろいろな加工ができるので試してみればよい。むろん編集→元に戻すで何度でもやり直せる。

⑤編集→文字入れ。題名を表示させ、フォントから書体(縦文字は@付きを選択)、サイズで大きさを指定する。表示された文字はドラッグで自由に移動できる。ほかに縦書、透過、文字色などの項目があるので適宜選択する。
 今回使用した“鉄瓶ゴシック”は無料で使えるフリーフォント。ダウンロードすると自動でフォントに入ってくれる。
⑥OKをクリックして決定。あとは著者名、上下巻などの文字入れを繰り返せばよい。

 そんなこんなで完成させてみた。最初のショットとは印象がかなり違っており、『無頼の辻』らしさの荒んだ感じになっていれば、まずは狙いどおりなのだが……。

 どれほど面白くても読んでしまった本は買わない。面白そうだから買ってみるもので、それだけに表紙は大切だろう。内容をダイレクトに表現するより、意味不明ながら雰囲気を伝えるほうが効果的だったりする。とくに電子書籍の場合、販売サイトで表示されるのは、せいぜいが切手サイズ、ということを常に考えている。

 この『無頼の辻』は、大手出版のG研社と契約が終了し、加筆訂正を加えて「著者完全版」としての再登場です。博奕から抜け出せない男二人が中山道を行く、という全編すべて“博奕がらみ”という異色作。近日中に配信いたしますので、どうぞお楽しみください。