クリの幅広板を削る

 低価格に誘われたのがきっかけ。つまり典型的な「衝動買い」で手に入れたボトムクリーニング型のルータービットだが、刃の直径30ミリと軸径8ミリというのも少なからず影響している。

 8ミリ軸の国産ルーターは、25年前の母屋のセルフビルドのとき購入したものだが、ビット種類が少ないのがいかにも難点。1/2インチ軸ルーターを入手していらい、ほとんど使用していない。

 そうした死蔵機具が使え、30ミリの大きな直径があるなら、前々から考えていたあの技法を試してみるのもわるくないぞと、たった700円ほどの費用のくせに何やら大層な言い訳を考えたりするのも性格か。
 その技法とは、自動ガンナに入りきらない幅広板をルーター利用で削り出す方法だが、くわしい説明はあとにして、とりあえず対象のクリ板を引っ張り出してみた。

 かれこれ10年前、薪原木からチェンソーで製材したクリ材だ。こうしたチェンソー・アタッチメントは、かなり特殊な道具だったが、いまではここでも販売されて手軽に入手できるようになった。

 丸太を製材するには、当然ながら丸太径に見合ったバーの長さが必要だし、チェンソーのパワーも関わってくる。さらには丸太の繊維にそった縦引き作業になるため、切削くずの排出がむずかしく縦引き用のソーチェンのほうが適しているが、このときは普通のソーチェンのまま製材した。

 10年も経過したので十分乾燥している。と同時にある程度の「反り・ゆがみ」が生じるてくるのは無垢材の宿命。たとえ本格的な機械製材でもこの欠点は避けられず、その修正には幅広の大型自動カンナ、あるいは定規と手動カンナによる熟練作業が必要だが、ルーターを利用することで簡単に平らにする技法がある。

 まず平坦な作業台に板材を置き、両側から挟むように2×4材を固定する。直線が出ている板材なら何でもかまわないが、削る板材より高さが必要。高すぎるとルーターの刃が届かないので適当な材で調節し、動かないようストッパーで固定する。

 つづいてルーターを乗せるブリッジ状の治具をつくる。固定した2×4材より幅のあるルーターの大きさに見合った木枠をつくり、切削刃が出せる底板を固定する。この治具を2×4材にさし渡し、ルーターを滑らせて平面を削り出すわけで、「Router Flattening sled Jig」で検索すると参考動画をいくつも見ることができる。

 直訳すれば「ルーターによる平坦化橇(そり)治具」とでも称するのか。いろいろ調べても日本での名前は見つからないので、おそらく海外木工家の考案だろう。従来の道具の修練にこだわるのにくらべ、新しい道具を考案したがる彼我の差ということになるだろうか。

 2×4材に合わせてストッパーを取り付け、滑りやすいようスプレー剤、あるいはワックスを塗る。あとはルーターの刃の高さを調節し、治具上を押し引きする。そのさい刃径30ミリが削り幅になるわけで、削り残しに注意するだけで、技術上の問題は一切ない。

 初めに「反り・ゆがみ」を修正し、一面を平面化したら裏返しての作業。あとは必要な厚さになるまでひたすら押し引きすればいい。

 二枚の板材を削りだしたあと、ベルトサンダーで仕上げた。昔ながらの平鉋(ひらがんな)を使えば完璧だが、このところはサンダーやポリッシャーに頼り切り。二枚の長さを整え、隙間にレジン樹脂をながし込むと、最近大流行しているウッドリバーテーブルになるが、何やらお洒落すぎて、わが家には似つかわしくないように思う。

 結局、ビスケットで接ぎ合わせることにした。本を開いたように木目がそろうところからブックマッチと呼ばれる方式だ。これをトップボードにしたローテーブルづくりを次回からお伝えする。


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