春の事始め

 事始めという行事がある。正月行事を始めたり、農作業始めに田の神様をお祀りしたりと目的に合わせ、それぞれ12月8日や2月8日に行うところが多い。そこから「事八日」(ことようか)などと呼ばれているのだろうが、なぜその日なのかはわからない。
 わが家の「事始め」は3月に入ってからか。寒さに縮こまった冬眠状態にも飽き飽きして、手はじめにパソコンの「やよい会計」を起動させて確定申告を済ませたりする。

 農作業もはじめたいが、まだまだ畑は凍りついたままだから、やれることは少ない。いつも遅れ気味になるジャガイモ植え付けは、何度か雨降りがなければ耕すこともできない。ヤギ糞堆肥づくりをはじめてもよいのだが、ちょっと体慣らしの必要がありそうなので、ならばとニンニク畑での追肥作業からはじめた。

 昨秋に植え込んだニンニクは、タマネギ用マルチを使って1条空けにしてある。空いた穴が追肥用で、粒状の化学肥料を一つまみずつ投入したが、とくに土を混ぜたり乗せたりもせず、雨によって染みこませればよいことにした。

 そんな簡単作業の合間に思いついたのだが、保存してあった生ニンニクのほとんどに芽が出てしまっている。そのままでは使えないが、いっそ「葉ニンニク」にしてしまえば利用できるのではないか。葉ニンニクなど食べたことはないし、どんな料理にすればよいかもわからないが、大きく育ってから調べればいいだろう。

 かなり芽が出てしまっている。そのまま植えても育つかもしれないが、やはり一片ずつにほぐすことにした。鱗片はフカフカとやわらかになって扱いにくいし、せっかくの芽を折ってしまえば育たない、とあんがい苦労してほぐし、元肥もほどこさずに適当にならべて植え込んだ。はたして育つかはわからない、ダメ元の作業だった。

 話はころりと変わるが、どうしたことか奥さんが「現代農業」を購読しはじめている。ヤギ飼いで忙しく、土いじりなど一切しないはずだが、どうやら出版社の営業マンが読者宅を一軒一軒訪問しているのを意気に感じて決めたらしい。それにしても読んでるふうには全然見えない。はてさて、その目的は……とやたらいぶかしく思っているところだ。

英字キーボード

 モバイルPCにThinkpad X61sを使い、待ち時間の多い病院通いに重宝している。もう10数年も前(IBMからLenovoに変わったころ)の発売機種だが、SSD換装やメモリ増強で高速化すれば、まだまだ十分使える。抜群の耐久性や修理部品の入手、キーボードの打ち易さを考えると、いまのところ手放す気はない。

 先日、たまたまオークションでX61を見かけた。姉妹機種とあって共通部品が多いので予備機にするつもりで応札すると、スタート価格のまま落札。送料込みでたった2千数百円ながら、けっこう新しげだし、電源も入りBIOSも立ち上がる。ただしキートップにカナ表記がない。つまり英字キーボードだったわけで、これがため応札がなかったらしい。

 英字キーボードが人気、と聞いたことがある。スタバにモバイルPCを持ち込んでキーを打っている連中は、きまってカナ表記のない英字キーボードらしい。どうやらプログラミングにはカナは使わないから、その格好よさを真似たようだとも聞いたが、そうした人たちの多くは、Macあたりのスタイリッシュさを好むだろうから、武骨一辺倒のThinkpadでは似合わないのかもしれない。

 初めてキーボードに触れたのは40数年前のことになり、ワープロだったそれのキーボードは親指シフトというものだった。やがてJIS配列キーボードを使うようになるのだが、そのさいローマ字変換とカナ変換の選択を迫られたのを思い出した。

 ローマ字変換であれば、アルファベット26文字を覚えればよい。一方、カナ変換はその倍近いキーを使いこなすことになり、数字を打つたびに入力モード変える必要がある。そのためローマ字変換が推奨されたりしたが、私自身はカナ変換を使う。日本語で小説を書いているのに、アルファベットを意識するのはそぐわない気がするのだ。

 ちなみにウチの奥さんはローマ字変換で、いかにもベテランといった感じにいそがしく打っている。それはつまりローマ字変換は、子音の表記に2文字使うことになり、当然、打鍵数が多くなるという事象があるからだ。Wikipedia「親指シフト」の入力速度の項目によれば、ある文章を入力したときの打鍵数は、親指シフトを1.0とした場合、カナ変換1.1、ローマ字変換1.7の比率になるらしい。

 またローマ字変換は子供の英語教育をダメにする、との意見もある。たとえばローマ字による母音は五つだが、英語の母音は16種類(よく知らないけど)もあるため、ローマ字変換でカタカナ英語が染みついていると、かんたんな英語の発音につまずいてしまうらしい。つまりローマ字読みが定着してしまった子供は、英語を習い始めても、ローマ字読みから脱却するのに時間がかかると言うのだ。

 どちらの変換を使うかは好みの問題になるだろうけど、とりあえずLinuxのubuntuが入ったSSDをセットし(こうした作業もThinkpadならひどく簡単)、英字キーボードを使えるよう設定する。つまり端末を呼出し、コマンド操作するわけだが、その作業中に、おや、と気がついた。

 英字キーボードだから、いわゆるUSキーボードと思っていたが、それとは配列が微妙に違っている。あるいは英国式かと調べたが、これとも合致しない。これでは設定できないため、いろいろ調べることになったが、何のことはない。いくつかのキーが記号表記になっているが、日本語配列と寸分違わない。どうやら「日本語配列カナなし」キーボードらしいのだが、それにしては表記がおかしいのでいますこし調べる必要がある。

 何ともやれやれの話なのだが、@や「」マークの表記がないのは不便で仕方がない。とりあえずプリントした白抜き文字を貼りつけ、今しばらくは使って見ることにしたが、あるいは日本語キーボードと交換するかもしれない。このあたりが容易に出来るのもThinkpadの特色ということになろう。

冬越しのバターナッツ

 書けない小説書きは、旅に出るか、酒場にたむろするのが常だろうけど、70歳半ばになると両方とも億劫で、おおよそは厨房入りでやりすごすことになる。そうしたわけで今日のブログも料理ネタなのだが、寒波つづきで野菜高騰のおり、大いに活躍した冬越しバターナッツを取り上げる。

 冬至カボチャの例があるように、カボチャの類は保存性がよく、加えて少し寝かせたほうが甘みを増し、栄養分も増えるらしい。しかしわが家では、カボチャの仲間バターナッツを「猿害対策」として栽培している。どうした理由からか、猿どもはまったく悪さをしないのだ。

 カボチヤらしからぬ色合いか、はたまた硬くてツルっとした肌触りを嫌うのか。一度だけ未熟のころに齧られたことがあるが、その不味さに懲りたのかもしれない。どうやら猿どもは、そうした体験を共有するらしく、お隣さんの普通カボチャがさんざん荒らされるのをよそに、わが家のバターナッツは毎年ぶじに収穫を迎える。

 しかも入手したバターナッツは、自家採種が可能なので種子代はかからず、発芽さえすませれば放置栽培でも十分収穫できるのはありがたいし、なにより野菜不足になる今ごろまで食べられるのだから言うことはない。

 まずはスープだろう。皮をむき、種とワタを取ってひと口大に切り、水とブイヨンを入れてよく煮込む。薄切り玉ねぎを炒めるレシピもあるようだが、わが家のようにバターナッツのみでも十分美味しい。圧力鍋で3分ほど加熱し、バーミックスで攪拌しながら牛乳でのばし、甘みが不足なら砂糖少々というのだから、調理というほどのこともないが、硬い皮むきだけがちょっと骨。

 また牛乳でのばす前の状態をタッパーに入れて冷凍しておく。凍ったまま弱火で解かし、牛乳でのばすだけだから、まったくもってお手軽だし、冷凍品とは思えないほどのなめらかさは絶品だ。ついでながら翌日になるとより甘さが増すように思えるのもおもしろい。

 またローストしたり、薄くスライスしてサラダにするのもいいらしい。つい最近、宇都宮のレストランで食したレシピは、マッシュしたバターナッツに、玉ねぎのみじん切りと細かくしたピーナッツが入っていた。ナッツ&ナッツとでも名付けたいような感じだが、マッシュのなめらかさと豆のツブツブした食感がおもしろく、けっこう美味しかったので奥さんに再現してもらった。

春の苦み・ふきのとう

 4年ぶりの大雪があったり、きびしい寒さがつづいた今年は、ひさしぶりに日光らしい冬を味わった。例年、マイナス10℃ほどだった最低気温がマイナス12℃近くを記録したし、真冬日(昼間の気温が0℃以下)が何日間もあったが、ここ2,3日の暖かさですこしずつだが春めいて来たようだ。

 母屋の北側には凍りついた雪がのこっており、このぶんなら3月の声を聞くまで融けずじまいになりそうだ。そんな気候だから「まだちと早いかな」と思いつつ春をみつけに散歩としゃれこんだ。2月中旬ごろ顔を見せるはずの「ふきのとう」探しだ。

 目指す「ふきのとう」は、わが家の背後につづく休耕地に生えてくる。東西にのびる谷間の南斜面ぎわのわずかに平地だが、どうやら水が湧くようで畑地にむかないのだろう。ミミズを狙うらしいイノシシがいつも掘り返しているような場所だ。

 探すまでもなかった。枯草の間を歩きはじめると、ぽつぽつと緑いろが見えてくる。野ふきの花芽だから大きさは親指ほどしかなく、指先でつまんでねじり採ると、ほろ苦さがまじった香りがプンとあたりに漂う。いくぶんか青臭さも感じるが、それこそが春の匂いなのだろう。

 野生のふきはアクが強い。採取したらすぐに水に晒したり、さっと茹でたりするようだが、わが家ではそうした工夫を一切しない。一番外側の黒くなった葉を取り除き、ざくっと刻み、そのままごま油で炒め、酒、砂糖、顆粒出汁、最後に味噌を加えるだけ。いつもこのレシピでさわやかな苦みを味わうのである。

 ちなみに日光地方では、山椒の若葉(木の芽)の佃煮が名物だが、私はどうもこれがいけない。ほんの少しでも口にすると、腹具合が必ずゆるくなってしまう。ところが不思議なことに「ふきのとう」はまったく大丈夫。アクもかなり強いはずだが、山椒のそれとは性質がちがうのだろうか。

 ともあれ今年も春の苦みを味わった。冬眠の穴から這い出した熊は、一番初めに水辺に生えた「ふきのとう」を食べるらしい。春の苦みが冬眠のストレスを癒し、山野をかけめぐる活力を与えるのだろう。それに倣ってこちらも、そろそろ冬眠明けにするとしようか。

芽キャベツの残念

 今冬の楽しみがひとつ消滅する。今年のニューカマーとして「芽キャベツ」を植え、1月中頃の収穫予定、と昨秋に紹介したが、やたら生長が遅れていて、この分では収穫までたどり着けそうもない。

 苗を購入したのは、たしか10月に入ってからだ。初めての栽培だけにネット情報を頼りにすすめていたが、11月の記事掲載時でも成長が遅れ気味のような感じだった。そこで追肥などを処置したが、とうとう遅れを取りもどせずじまいになってしまったのだ。

 どうやら日当たりが悪いと結球不足になり易いようだし、水分不足や肥料切れもいけないらしい。あるいはデッキでの鉢植えでは無理なのか、とも考えたが、件のネット情報によればプランターでの栽培も十分可能とある。
 もっとも畑に地植えしていたら、この大雪に埋まっていたろうから、収穫不能ということでは同じ結果になっていたにちがいない。

 結局のところ日光のような寒冷地では、温かいうちに十分生長させておく必要があるのだろう。再度挑戦するかはまだ決めていないが、早々8月ごろには種をまき、11月には茎の太さ3センチになるようにするつもりだ。

 試しにスーパーマーケットで購入した「芽キャベツ」と比べてみる。その小ささに笑ってしまうが、予告したように自家製サトイモと一緒にホワイトシチューにしてみたけど、こんなに小さいと探すのは無理だろう。

 サトイモは小さめを選んだので出来上がりはわるくなかったが、芽キャベツの味は「可もなし不可もなし」といったところだろう。いわゆる「彩り野菜」の範疇に入るのかもしれないが、そのわりには仕上がり色がよくない。

 そう言えば、軽く塩ゆでした「芽キャベツ」をシチューに紛れこませてしまえば、もっと鮮やかな緑色で撮影できたな、とカメラマンのころ盛んに使った技法をちょっと思い出した。流行りの言葉で言えば「フェイク・テクニック」ということになるだろうか。

燻製レシピ・鶏のささみ

 先日、ショルダーハムを燻したさい、前々から気になっていた「鶏ささみの燻製」を一緒につくってみた。WEBで拝見したもので、ひょっとしたらブログ主宰者(GRI氏)のオリジナル・レシピかもしれないけど、料理レシピの著作権は気にしないでよいらしいので、少し変更して掲載してみる。のちほど当該ブログにはコメントを入れておくつもりだ。

鶏ささみ 15本の漬け込み液
酒50㏄  みりん50㏄  しょう油100㏄  三温糖大さじ1  味噌大さじ1
ニンニク・しょうがのすりおろし各小さじ1  唐辛子みそ少々(後述)

 例によってささみはフォークなどで肉刺しておき、漬け込み液ごとビニール袋に入れ、冷蔵庫で一昼夜ほど味付けする。

 さっと水洗いする程度に塩抜きし、水気をよく拭き取ったあとピチットシートで包み込み、ふたたび冷蔵庫で一晩乾燥させる。

 魚焼き用の鉄串に刺してスモークする。ショルダーハムと同じく60℃ほどの燻煙だが2時間で切り上げた。
 仕上げにレシピどおり日本酒をスプレーする。よい艶に仕上がった。

 ちなみにウイスキー樽を利用したスモーカーでは、チップは使わず、炭火を熾したコンロに桜の薪を直接のせるという適当な方法。あまりに炭火が強いと、薪が燃えあがって温度が上がりすぎるため、そのあたりの加減がむずかしい。

 そうしたわけで、GRI氏のような微妙な温度管理は不可能。そこで生っぽさを避けるため、ショルダーハムと同じくボイルすることにした。ただし直接湯に入れず、ビニール袋ごしの湯煎状態にして、64~65℃で3時間。

 結果、味は上々だったが、少し熱が入り過ぎた感じがする。つぎは1時間程度の湯煎にしてみるつもりだ。

 ところで漬け込み液に入れた「からしみそ」は、鬼怒川温泉にむかう国道121号と船生街道(県道77号)の丁字路にある「とびこみ屋」さんの手づくり品だ。
 三角巾で頭をつつんだお姉さんがキリキリ働いていて、かつ丼をかかえこんだ隣テーブルのお客が「よう」と目顔であいさつ。よくよくみたらフーテンの寅さんそっくり、といった雰囲気がする定食屋さんです。

 唐辛子の辛さばかりではなく、うまみも含まれた複雑な味が気に入り、うどんに入れたり、マーボ豆腐に使ったりと重宝している。もう残り少ないので近々買いに行くことになりそうだ。

校正とEPUBリーダー

 広辞苑が10年ぶりに改訂されたが、追加項目のいくつかに誤りがあるらしく、ネットで大騒ぎしている。同書旧版でも「芦屋」の記述に誤りがあったが、初版以来50年も経ってから判明したもので、40年近く使用している手持ち広辞苑(なんと第一版だ)を赤ペンで訂正した記憶がある。

 現在のネット社会は、この手のミスを見逃さず、しかも許さない傾向がある。間違いはまたたくまに指摘され、糾弾され、ネット上で炎上騒ぎとなる。ときには存在そのものまで否定されてしまうことがあり、まるで遊びのないハンドルで社会が運転されているようで、やたら窮屈に感じる。
 校閲担当者の心労察するばかりだが、電子書籍を配信している身には「他人事じゃない」と校閲・校正のあれこれを思い起こしたりした。

 広辞苑の事例は、文章記述の誤りだから校閲作業になるが、私が配信する小説やエッセイの場合、誤字脱字、変換ミスといった文字の誤り、つまり校正作業がほとんどだ。
 そして「てにをは」の付け違いも多い。たとえば「馬に……」と書いて、つづけて「乗る」と書くつもりが考え直し、「……行く」と書いて、「馬に行く」となってしまう。調子よく書きすすめているときに多く、移り気の気質がもろに現れてしまうのだ。

 いずれにしろ校正は辛気くさい作業だ。ついついおろそかになりやすいが、電子書籍のセルフパブリッシングでは、校正の不備が命取りになりかねないので、およそは次のようなステップで作業をすすめている。

●モニター上で読む
 書いた部分をその都度チェックし、書きおえてから全体を通して読み直す。wordや一太郞の校正機能は、万全ではないながら一応チェックすることにしている。
●プリントによる校正
 モニターで読むと、スクロールなどに気をとられるせいか集中できない。プリントアウトすればどこでも読めるという利点があり、プリントに赤字を入れるので修正場所が残るのもありがたい。あるいは雰囲気を変わるのがいいのかもしれず、プリントを電車や喫茶店で読んだりするのも効果的だった。とにかく必須。
●EPUB画面で読む
 配信直前のEPUBファイルを読むのは、最終チェックとしてかなり有効だ。たとえばAdobe Digtal Editions 3やReadiumといったEPUBリーダーを利用すれば、PC内のローカルファイルを直接読むことができる。

 さらにはKindle Previewer 3を使い、タブレット、スマートフォン、kindle端末の画面でプレビューすれば、より読者の雰囲気で校正できるだろう。
 こうした方法の欠点は、校正場所(あるいは字句)をいちいち別記する必要があることだろうか。そこでword画面に立ち戻り、校正字句を検索して修正することにしている。

 ちなみにWindows10では、2017年4月のCreators Updateを更新(バージョン1705以上に)すると、Microsooft EdgeでEPUBファイルが直接閲覧できるようになった。どうやらFireFoxのアドオン(拡張機能)だったEPUBreadeを採用したようで、縦組みにも対応し、本の見開きのような表示でかなり読みやすい。

 このEdgeは、Webページにメモを書き込むことができるのだが、この機能をEPUB閲覧に利用できないか試してみたが駄目だった。機能追加を心待ちにしている。

 ついでながら見本に使った「つくる暮らし」は、いま書きすすめているエッセイ作品で、春ごろには配信したいと考えている。
 
 おまけ写真。先日は4年ぶりの大雪だった。

燻製とハチミツ

 ショルダーハムづくりにハチミツを使ってみた。私の乾塩法レシピでは、肉の3%の岩塩、その半分の三温糖に、その他のスパイス類を混ぜ合わせて10日間漬け込む。この砂糖の代わりにお隣からいただいたハチミツを使ったのだが、ことのほか仕上がりがよく、どうやら鉄板レシピになりそうな感じがしている。

 ハチミツの上品な甘みは塩分をやわらげ、しかも抜群の殺菌力がある。高い糖分によって腐敗菌などが繁殖できず、理論上は腐らないとされ、たとえば古代エジプトの墳墓から発掘されたハチミツの品質にほとんど変化はみられなかった。そうした性質は、10日間もの長い熟成期間への衛生管理にきわめて有用だろう。
 しかしいくぶんかの懸念もあるのだ。

 たとえばハチミツ使用の離乳食で乳幼児が死亡したことがある。有名な料理レシピサイトが紹介したため大騒ぎになったが、原因は乳幼児ボツリヌス症だった。
 自然物であるハチミツにはボツリヌス菌の芽胞が入ることがあり、乳幼児の腸内で菌が繁殖して食中毒を発症する。芽胞状態のボツリヌス菌は無毒だが、嫌気性菌であるため酸素のない腸内では活動を開始する。多くは大腸菌などの腸内菌によって退治されてしまうのだが、乳幼児は腸内菌が未発達であるため、ボツリヌス中毒を起こしてしまうわけで、ここにくわしく説明されている。

 また前述リンクによれば、そもそも「ボツリヌス」とは、ラテン語のbotulus(腸詰め)が語源らしい。ヨーロッパではハムやソーセージが中毒の原因になることが多かったところからの命名のようで、そこで中毒を防止する防腐剤として硝酸塩(硝石・硝酸カリウム)が添加されるようになった。

 この硝酸塩には、発色効果や臭み消しの効果もあるので、市販のハム・ソーセージにはほとんど添加されている。しかし摂取すると体内で亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウム)に変化し、タンパク質にふくまれるアミンと反応して発がん性が高いニトロアミンが生成されることがわかってきた。となるとやはり問題だろう。

 がんの発症までには多量の摂取が必要のようだが、わざわざ発がん物質を口にすることもない。しかしながらボツリヌス中毒も怖いわけで、どちらを選ぶかはひどく厄介な問題になってくる。
 じつを言うと、中毒防止に硝酸カリウムや亜硝酸ナトリウムを使用すべく、かなり以前に入手してあるが、いまだに使用を躊躇しているのだ。

 ところでボツリヌス菌は嫌気性菌であるという。酸素が遮断された状態、つまり腸などにケーシングされたソーセージやハムに発生するわけで、密封されていないベーコンはどうなのだろうか。あるいは挽き肉を詰めるのではなく、塊肉のままのハムであればケーシングの必要がなく、ならばボツリヌス中毒を防げるのではないか。……などとも推論するが、これをはっきり証明する研究にはお目にかかったことがない。

 また硝酸塩は自然界にも存在する。たとえば海水塩とちがい、岩塩には微量の硝酸塩が含まれるようだし、たとえばチリ硝石が産出するチリ産岩塩には多く含まれているらしい。わが家で使用している豪州産岩塩にはどれほど含有されているのだろうか。

 野菜にも微量ながら硝酸塩が含まれ、これを利用した食肉加工時の発色剤も研究されているようで、この方法にはハチミツの糖分をも発色剤として併用利用する、とも書かれている。
 そんなこんなを調べた結果、ハチミツの有効性は十分あるように考えられるので、いましばらくは隣家産のハチミツ使用をつづけてみよう、と考えているところなのだ。

ショルダーハム・レシピ変更

 年明けになっての初燻製を行った。正月料理の用意をするとき、一緒に漬け込みをする関係でちょうどこのころ燻煙作業になるのだろう。去年の記事をのぞいてみると、同じくショルダーハムをつくっていた。

 安価な輸入肉の肩ロース約2.5㎏を半分にする。脂肪の少ないほうを低温調理でチャーシューに使い、残りを燻製した。例年より量が少ないが、いくつか試してみたいことがあるためで、結果がよければもう一度つくるつもりだ。

●テスト① 漬け込みは乾塩法で行ない、岩塩に混ぜる三温糖をハチミツに変えてみた。以前、高知のログビルダーが、手造りベーコンにメープルシロップを使っていたのを思い出し、そこでハチミツではどうか、とテストすることにした。

●テスト② ネット情報を参考に、タマネギとともにリンゴのスライスを漬け込んでみた。たまたま冷蔵庫に入っていたので……。

●テスト③ 熟成は10日間、1時間おきに水を取り替えて溜め水で脱塩する。この時間を5時間から8時間に増やした。ちなみに肉は金網の上に置き、解けだした塩分が下に溜まるようにした。

●テスト④ 燻煙はいつものように60℃で6時間。70℃2時間のボイルを、低温調理の結果がよかったので64~65℃で3時間に変更した。また茹でるさい、肉を直接湯に入れず、ビニール袋に入れて湯煎状態にした。

 結果は上々だった。塩抜け具合もちょうどよかったし、味もわるくなかった。やはり「塩抜き」が味の決め手になるようだ。そして肉色がすばらしいのは、ボイル方法の変更だろうと思われる。
 リンゴの効果はよくわからない。ハチミツについては、いくつか思いあたるのでさらに調べてからの報告としたい。とりあえず、ショルダーハムのレシピは下記のように変更する。

※肩ロース 1㎏あたりのレシピ
岩塩    30g
ハチミツ  大さじ2(または三温糖15g)
黒コショウ、オールスパイス、セージ、ローレル 各2g
リンゴ、タマネギ   適宜
※冷蔵庫で熟成10日間 溜め水脱塩8時間、燻煙60℃6時間、ボイル64~65℃3時間

 ついでながら肉のしばり方はこんな感じ。

巨大大根

 お雑煮が三日もつづくと、すこしばかり胃がもたれてしまう。このあたりも加齢によるものかと思いあたり、だから七草粥なのだな、と納得してしまった。そこでふと春の七草のひとつ「すずしろ(清白)」、つまり大根を思い出したので、今回の話題にしてみる。

 お隣に届け物に行った奥さんが泣き泣き帰ってきたことがある。
「これ、持っていきなって言われちゃった」
 と大根2本を差し出した。そんなお返しをありがたく頂戴したのはよかったけれど、冬の大根の冷たさに持つ手は凍えて、ついには涙がちょちょぎれそうになってしまった。けれども両手は大根を持っているから拭くこともできず、帰り道の200メートルを涙ながらに歩いてきたらしい。

「ちょっと、なによ、この大根? 絶対持てない」
 と奥さんが、ついつい眉をひそめたのはそうした記憶のせいだったのかもしれない。8キロほど離れた農産物直売所にならんでいた大根は、それほど巨大だったのだ。
「これ、100円だってさ」
「安いけど、”す”が入っているんじゃない?」
 と気が進まない奥さんをお構いなしに、面白がって買ってしまった。となれば当然、調理役をも買って出なくちゃならない。

 大根を調理するさいには「お米のとぎ汁」で下茹でする。苦みやアクが抜け、やわらかさが増して味も染みこみやすくなる。米にふくまれた”でんぷん”の作用らしいので、生米ひと握りを入れ、小一時間ほど茹でることにしている。
 そう言えば、電子レンジで温めたり冷凍すると、大根の細胞壁が壊れて味が染みこみやすいと聞いてテストしたことがあるが、さほどの効果は得られず、何やら苦みも残った気配もあるのでそれっきりにした。

 それにしても見事な大きさだ。輪切りにしても”す”は立っておらず、筋のある皮部分を思い切ってむけるのがうれしいが、あまりに巨大過ぎて三分の一ほどで鍋一杯になってしまった。

 まず焼き目をつけた鶏手羽との煮込みにし、もう一つは、たっぷりの鰹だしに昆布を加えて煮込み、甘めの味噌にきざみ柚をそえて食した。

 どーんと食卓に置いてみれば、そりゃ、まあ、存在感たっぷり……。だが、味のほうもやたら巨大。つまり大味で、すこしも美味くなかった。

「見栄えはいいけど、味も素っ気もありませんね」
 と言われた記憶があるのだけど、はて、いつごろで何のことだったろうか……。