薪割り(1)

P1240599「薪割りは二度暖まる」
 と語ったのはソローだったか、カーネーギーだったか。薪を割れば身体が暖まり、ストーブで燃やしてまた暖まるというわけだ。それで料理すれば「三度暖かくなる」とするアメリカの諺(ことわざ)もある。

 薪を割って暖まるとなれば冬の話だろうし、冬支度のイメージとしてよく紹介されている。しかし、寒い最中に割った薪をそのまま焚くことは、わが家ではほとんどない。割ったばかりの薪は、よく燃えないし、煙が多くて煤がたまりやすい。タール分やクレオソートが付着して、煙突つまりの原因となり、掃除を怠れば煙道火災の危険すらある。

 枯れた冬に切りだした薪の原木は、春に割り、梅雨前には雨の当たらない軒下や薪小屋に積み上げておく。そうして次の冬になれば、まあまあ使える薪になるだろう。わが家ではもう1年間、よく乾かしてから焚くようにしている。
 薪にするのは広葉樹にかぎり、原木は大体購入しているが、たとえば今年のように「もらったり拾ったり」で入手することもあり、先日、一気に片づけてしまった。

 それにしても薪割りは大仕事だ。しかし、けっこう人気があり、これがために田舎暮らしを選んだ人がいるくらいだ。
「薪割りを好む人が多いのは理解できる。この仕事は結果がすぐわかる」
 アインシュタインがそう言ったそうだが、薪割りを単純な仕事と見ていることがみえみえで、あまり好きな言葉ではない。

 薪には割りどきや割り方があり、たぶんアインシュタインは「木元竹末」という言葉を知らないのだろう。木は元(根元)から、竹は末(梢)からのほうが割れやすい、という教えだが、なぜそうなるかを考えたとき、私にとっては「相対性理論」と同じほどにむずかしい。
 またストーブにあわせて玉切りしたあと、三日ほど経ってから割るほうがよい。切り口に小割れが走っているのは、乾燥して内部応力があらわれたからだと聞いたことがあり、割れにそって斧を入れてやれば、当然よく割れる。ただし、あまり乾かしすぎると、切り口が固くなって割れにくくなる。

 木の種類によっても割れ方がちがう。ナラやクヌギはよく割れ、クリは見かけは固そうだが、だらしがないほどスパッと割れてくれる。サクラやケヤキはかなり手こずることが多い。木の繊維が入り組んでいるからだが、森深くで育ったものはあんがい割れやすい。風のあたりが弱いせいだと聞いたことがある。成長の仕方も割れに関係してくるわけだ。

 もちろん道具にもよる。斧(おの。ヨキとも呼ばれる)が一番いい。刃先幅がひろい鉞(まさかり)は、するどい刃先が食い込むだけで薪は割れてくれない。伐採やはつり用の道具なのだろう。とにかく刃先が鈍角で重い斧がむいているが、重さがある分振りあげるのが大変、ということになる。

 振りあげた斧は一気に振り下ろす。そのさい小割れを正確に狙い、木目に刃の向きを一致させる。これを刃筋と言い、当たる瞬間に手の内を締めると、たとえ埋もれ節があっても刃筋は狂わない。というような体験を短編小説に書き、電子書籍でも配信したが、それはまったくの余談。


 そうした薪割りを20年間つづけたが、70歳近くなった数年前、とうとうエンジン薪割り機を購入した。オークションで手に入れたもので、格安な中国製だけに不具合が多く発生したが、曲がりなりにも使えている。動作は遅いが、27トンという強力なもので、節の部分でもむしるように割れてしまう。これで楽になったのは事実だが、「木元竹末」なんぞはまるで関係なくなった。

 つまりわが家の薪割りは、いまやアインシュタインがいうところの「結果」だけの作業と成り下がってしまっている。……つづく。

やぎ糞堆肥

 あるいは時期遅れなのかもしれないが、わが家の堆肥づくりは、毎年、春にさきがけた仕事として行なっている。やぎ放牧場に立っているケヤキの落ち葉と、二匹のやぎ糞を利用した堆肥で、毎年の畑仕事に利用しているのだ。


 セルフビルドしたころには直径15センチほどしかなかったケヤキだが、20数年も経つとかなり大きくなり、わが家のシンボルツリーとしての存在感を十分発揮している。そのぶん落ち葉も大量になっているわけで、毎年の落ち葉掃きのころになると、ついつい梢を見あげてため息がでる。
「いっそ伐採して薪にするか」
 とつぶやいたりするのは、年々、身体にこたえる作業になっているからだろう。軽トラック二台分ほどもかき集め、やぎ小屋近くに積み上げておき、雨ざらしのまま冬を越す。

 本来なら、積み上げたところに水を十分そそいで「踏み込み」をすると、早く腐葉土になるらしいが、急ぐ必要もないのでそこは省略。
 冬の間に貯まりにたまったやぎ糞と落ち葉に、発酵促進剤のコーランに米糠を混ぜたものを交互に積んでゆく。コーラン1に米糠5倍との割合らしいが、このあたりも適当。
 初めのころは、やぎ糞、落ち葉、コーランだけて積み上げていたが、3年ほど前から少量(やぎ糞の三分の一ほど)の土を加えている。土にふくまれている土壌菌も利用する方法らしく、このほうがよく発酵するようだ。

 またビニールで覆ったほうが発酵がすすむようで、50~60℃の温度に達したら切り返しをして空気にふれさせるのだが、それも適当。温度は測らないほうが多く、夏までに2~3度気がむいたら行なっている。そのさい過リン酸石灰を加えよ、と書いた資料もあったが、余計なような気がして使ったこともない。

 こんな調子のほとんど適当仕様の堆肥づくりだが、秋をむかえるころには、ほとんどの落ち葉は原型をとどめていない。つまりは腐葉土化したのだろうと、これまた適当に判断して、その年のニンニク植え込みから肥料として使用している。
 まったりと寝そべっているやぎを見れば、紛うことなくニンニク体型。そのせいか、わが家のニンニクは味も量もなかなかの出来で、かなり料理に使うほうだが、ほとんど買うことなく収穫をむかえることが多い。
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