猿対策・袋栽培 ジャガイモ編①

 毎年のように被害をこうむっていながら、これだ、という決め手がない猿害対策。
 芽吹きのころ、裏山のタケノコ目当てにやって来るのを手はじめに、ジャガイモ、トウモロコシ、落花生、カボチャ、さつまいも、ねぎ、と収穫順にねらわれる。

 手を出さないのは臭いのあるニンニク、囓るとかゆみがあるサトイモぐらいなものだが、隣の集落ではそのサトイモをイノシシに荒らされたらしいし、菜っ葉類はシカの大好物だ。そう言えばカモシカが出没して収穫まぎわの葉物全滅の話を聞いたが、つい先だって畑で死んでいたらしい。年老いて山から下りてきたのだろうか。

 県道沿いのわが家では、カモシカは一度見たきりだし、イノシシやシカの被害も少ない。もっぱら猿どもが対象で、とくに春植えのジャガイモは必ず荒らされる。
 おととし彼らの採り残しを「献残もの」として収穫し、被害は「天使の取り分」ならぬ「野生の取り分」とやせ我慢を気取ってはみたけど、去年のように全滅の憂き目を味あわされると少しばかりムラムラくる。

 と言っても獣害に効果のあるネットやフェンスでは、身の軽い猿はぜんぜん防げず、電柵も駄目らしい。おもちゃのヘビには怖がって近寄らない話もあるが、
「それだけはやめてね」
 と奥さんに言われてしまうと、打つ手がまったくないのが現状だった。

 そこで考えたのが土嚢による袋栽培だ。都会のマンションのベランダなんかで楽しむ袋栽培だが、なにせ猿対策だから発想(コンセプト)がまるで違う。土を入れた袋に種イモや苗を植え込むのは同じだが、育ったところで袋を閉じてしまう。そのため土嚢袋を使用するのであって、閉じた土嚢からぴょこんと苗が顔を出していればそれでよい。

「それじゃきっと抜かれちゃうわね」
 とは奥さんの感想だが、じつはそれこそが成功なのである。畑に下りてきた猿どもは、ジャガ苗を引っこ抜いてイモの育ちを確認すると、張られた黒マルチに手を突っ込んで探しはじめる。はじめの一個を頬ばりながら、左右の手に一つずつイモをにぎると、安全な場所に移動して食べはじめるといった案配だ。

 ところが袋の口は閉じられている。外に出ている苗は引っこ抜けても、土の中の育ったイモは取り出せない。小さいイモならありつけるかもしれないが、黒マルチのように破いて手を入れることは無理だろう。

 もちろん彼らに袋を閉じた紐を解く能力があれば、この方法はまったく水疱に帰するわけだが、そうした「猿の惑星」化には、まだまだ時間が必要だろう。もっとも猿の脳に人間の遺伝子を移植した中国人研究者の例もあるから、まったく安心というわけでもない。

 とにかく猿どもは、収穫にたどりつけずに相当イライラするに違いない。なんだか猿にむかって「嫌がらせ」しているようだが、そうした経験をくり返せば、いくら「猿知恵」でも無駄を覚って袋栽培には手を出さなくなる。その意味では「教育的指導」栽培でもあるわけだ。

 かくて去年、手はじめに「サツマイモ」でテスト栽培し、つづいて「秋ジャガイモ」でも試してみた。その経過はすこぶる上首尾だった。ただし猿どもは、異様な袋栽培そのものを警戒したふうにも見えるのが、すこしばかり想定外。そこで今年は植え込み数を多くし、かつ彼らの手が出しやすい場所にならべて誘ってみようかと思っている。

 去年収穫した秋ジャガ(デジマ)を催芽させ、生長させたジャガ芽を植え込むほか、購入した種芋(アンデスレッド)も同じように増やして植え付ける。ついでに食べのこした芽吹きイモも栽培する予定だが、結果については随時報告する。乞うご期待!


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