箱入り娘の箱

 出産祝いに木工で何かつくろうか、と聞いたら、
「木馬なんていいわね」
 と言われたけど、それはちょっと、と口を濁してすませてしまった。おもちゃながら木馬はむずかしそうで、それほどの技術もない。第一、壊れでもして怪我をさせたらエライことになる。なにしろ誕生したのは女の子なのだ。

 いろいろ考えたけど、おもちゃを整理する箱をつくることにした。夫婦ともにクリエーターなのでデザインには「一家言」ありそうだから、飽きのこない基本的な箱にしたわけで、言ってみれば「箱入り娘の箱」をつくるわけだ。

 例によってノートにスケッチしてみたが、ほんとうに変哲もない箱だ。多少かわっているのは、ダブテール接合だろうか。テスト加工したばかりだったのと、釘やネジなどの金属を使いたくなかったからだ。同じような意味で取っ手もでっぱらない穴方式にし、すべての角を丸くする。

 材料には、先だって引っ張り出した厚さ30mmの栗材を使い、取っ手穴をつくる側板は20mm、前後板は半分、底板は10mmほどにバンドソーで引き割りした。
 取っ手部から加工する。フォスナービットで穴を空け、ジグソーでつなぎ、ルーターテーブルで角を丸めるといった作業だが、組み上げてからではちょっと面倒。こまかな仕上げは後にして作業をすすめる。

 接合部はハーフ・ブラインド・ダブテールで、20mm厚の側板にダブ穴を刻むようにする。仕上げてから角を丸めるさい、ダブテール部分まで削らないよう余地をのこすためだ。作業台にダブテール・ジグを固定し、切削順序を間違わぬよう板をならべておいた。

 ダブテール切削を慎重にすすめる。テスト加工のヒノキ材より硬めの栗材だが、欠けや割れもなく、硬いだけに角がきっちり削れる。組みがやや窮屈だったが、ボンドを塗ったらスムーズに入った。ゴムハンマーを使い、念のため当て木をして叩き入れる。
 10mm厚の底板は5ミリの段付きにしたが、ボンドで接着せず差し込むだけ。ボンドのはみ出しをきれいに拭い取って一晩乾燥させた。

 組み上げた箱ごと乗るようなルーターテーブルがあると、こうした作業はとても楽だ。すべての角を丸め、空研ぎペーパーやサンダーで仕上げる。小さなアイロン型のサンダーなら箱内部のスミまで作業できるので便利。
 フィニッシュオイルを塗り、サンダーで磨いたあと空拭きで仕上げる。

 栗材は、導管が太いため木目がよく目立つ。ややうるさくも感じるが、ダブテールの木口はオイル塗りで濃く見え、木目との組み合わせがおもしろくなった。