広辞苑が10年ぶりに改訂されたが、追加項目のいくつかに誤りがあるらしく、ネットで大騒ぎしている。同書旧版でも「芦屋」の記述に誤りがあったが、初版以来50年も経ってから判明したもので、40年近く使用している手持ち広辞苑(なんと第一版だ)を赤ペンで訂正した記憶がある。
現在のネット社会は、この手のミスを見逃さず、しかも許さない傾向がある。間違いはまたたくまに指摘され、糾弾され、ネット上で炎上騒ぎとなる。ときには存在そのものまで否定されてしまうことがあり、まるで遊びのないハンドルで社会が運転されているようで、やたら窮屈に感じる。
校閲担当者の心労察するばかりだが、電子書籍を配信している身には「他人事じゃない」と校閲・校正のあれこれを思い起こしたりした。
広辞苑の事例は、文章記述の誤りだから校閲作業になるが、私が配信する小説やエッセイの場合、誤字脱字、変換ミスといった文字の誤り、つまり校正作業がほとんどだ。
そして「てにをは」の付け違いも多い。たとえば「馬に……」と書いて、つづけて「乗る」と書くつもりが考え直し、「……行く」と書いて、「馬に行く」となってしまう。調子よく書きすすめているときに多く、移り気の気質がもろに現れてしまうのだ。
いずれにしろ校正は辛気くさい作業だ。ついついおろそかになりやすいが、電子書籍のセルフパブリッシングでは、校正の不備が命取りになりかねないので、およそは次のようなステップで作業をすすめている。
●モニター上で読む
書いた部分をその都度チェックし、書きおえてから全体を通して読み直す。wordや一太郞の校正機能は、万全ではないながら一応チェックすることにしている。
●プリントによる校正
モニターで読むと、スクロールなどに気をとられるせいか集中できない。プリントアウトすればどこでも読めるという利点があり、プリントに赤字を入れるので修正場所が残るのもありがたい。あるいは雰囲気を変わるのがいいのかもしれず、プリントを電車や喫茶店で読んだりするのも効果的だった。とにかく必須。
●EPUB画面で読む
配信直前のEPUBファイルを読むのは、最終チェックとしてかなり有効だ。たとえばAdobe Digtal Editions 3やReadiumといったEPUBリーダーを利用すれば、PC内のローカルファイルを直接読むことができる。
さらにはKindle Previewer 3を使い、タブレット、スマートフォン、kindle端末の画面でプレビューすれば、より読者の雰囲気で校正できるだろう。
こうした方法の欠点は、校正場所(あるいは字句)をいちいち別記する必要があることだろうか。そこでword画面に立ち戻り、校正字句を検索して修正することにしている。
ちなみにWindows10では、2017年4月のCreators Updateを更新(バージョン1705以上に)すると、Microsooft EdgeでEPUBファイルが直接閲覧できるようになった。どうやらFireFoxのアドオン(拡張機能)だったEPUBreadeを採用したようで、縦組みにも対応し、本の見開きのような表示でかなり読みやすい。
このEdgeは、Webページにメモを書き込むことができるのだが、この機能をEPUB閲覧に利用できないか試してみたが駄目だった。機能追加を心待ちにしている。
ついでながら見本に使った「つくる暮らし」は、いま書きすすめているエッセイ作品で、春ごろには配信したいと考えている。
おまけ写真。先日は4年ぶりの大雪だった。