四月のリンゴ

 梅が咲き、桜が咲きだしていよいよ春めいてきた。そんな四月になった玄関でリンゴがいい匂いを放っている。
 わが家の玄関は、居間とはドアで隔てられて風除室の代わりとなっている。そのため室温が低く、野菜や果物を置いておくのにちょうどよいのだが、昨年末にいただいたリンゴ6,7個が置き放しになって匂っているのだ。

 何となく食べ損なったのだろう。もう傷んでるかもしれないな、と皮をむいてみるとそうでもない。すこしやわらかになっていて、さすがにリンゴ独特のパキッとした食感はのぞめそうにない。
 ならば捨てるか、というのはわが主義に猛然と反する。そうしたときアップルパイ風揚げ餃子につくってしまうのがわが家風、というよりわがケチケチ料理のひとつというわけだ。
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 リンゴの皮をむき、芯を取って刻む。そいつをバターで炒め、砂糖で味をつける。リンゴ一個あたり大さじ山盛り1の割合にしているが、いつものようにこれは適当。シナモンを入れれば、よりアップルパイ風味になるようだが、試したことはない。
 よく煮詰めて水分を飛ばしたものを餃子の皮で包み、そのまま素揚げする。中身は火が通っているので、皮が色よく、カリッと揚がればそれでよし。
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P1240388 アツアツが美味しいが、冷めてもけっこういける。春巻きバージョンを試してみたがこれもわるくない。テーブルの上の大皿に積み上げておくと、通りがかりにヒョイとつまんだりして、いつのまにかなくなっている。

 それにしても「四月のリンゴ」というフレーズ、ちょっと気に入った。
「関係なさそうな言葉を二つならべるといいタイトルになる」
 と昔から言われているけど、これにぴったり。いかにも時期遅れな感じから「六日の菖蒲、十日の菊」を思い出してしまうが、そうした役立たずというより、フニャフニャとした頼りなさを感じさせる。
 しかし、まあ、時代小説には無理だろうな、と思いながら揚げたてをつまみ食いして、舌を火傷した。