ストーブの灰

P1240520 わが家の薪ストーブは「みにくいアヒルの子」(Ugly Duckling)と呼ばれているデンマークのSCAN社製だ。奧に長いシガータイプで、やや見栄えがしないための愛称だろうか。8kwと小型ながら燃焼効率がよく、43センチもの長い薪が使えるため、頻繁に薪を入れずにすむのが気に入っている。
 わが家をセルフビルドした1994年の導入だから、かれこれ22年間も使用したことになるが、まったくの故障なしで、よくぞ働いたとほめてやりたい。とくに5年前の「3.11」での大活躍ぶりはいまでも思い出すが、今日はその話題ではない。

 震災以後、いまだにつづくやっかいな問題がある。原発事故による放射線物質は、関東一円にあまねく降りそそいで汚染したが、絶対安全とされた原発事故の原因や責任を、ここで問うつもりはないし、その資格もない。
 資格はないが、地図上の区分けなど関係なく降り注いだであろう汚染の対策が、なぜか市町村ごとに区分けされているのには唖然とする。科学的に汚染濃度を測ることなく(測っているのかもしれないが)平然として市町村区分けを押し通している。細かな設定の手間を惜しんだのだろうが、その結果、たった数十メートル違いで除染対策や賠償に差が出てしまう。それでよしとする感覚が信じられず、その能天気ぶりが津波を甘くみて事故を誘発したのだ。

P1240521-01P1240463 太陽の光のように降りそそいだ放射線は、森林を汚染し、薪となってわが家の「みにくいアヒルの子」で燃やされている。セシウムなどの放射線物質は、燃やしても消滅せず、そのほとんどが灰の中に残される。燃えた薪が体積を減らしたぶん、濃縮されると考えればわかりやすいか。その濃縮率は200倍を超えると言われている。
 現在、8000Bq/kg(ベクレル/kg)以上の汚染物質は、公的機関が回収することになっているし、林野庁は流通する薪の放射線量を40Bq/kg以下と指定した。燃やしたとき200倍に濃縮されるからであろう。

 しかし放射線量を表示して売られている薪など見たことがなく、ほとんど野放し状態。わが家でも測定せずに燃やしているが、灰はすべて市に回収してもらい、三年前から放射線測定をすることにしていた。
 農林水産省では、肥料用草木灰の放射線セシウム濃度を400 Bq/kg以下と決めており、ストーブの灰を肥料利用できるか判断するためで、近くのクリーンセンターに持込めば「簡易ながら測定してくれる」と日光市役所で教わったからだ。

2014年……6876Bq/kg。
2015年……6506Bq/kg。

P1240527 という結果がわかる写真を掲載しておくが、去年、ほとんどメモとしか見えない紙切れをわたされたときには、
「おいおい、冗談かよ」
 とムッとした記憶がある。どうやら汚染を心配する市民の気持など、まるで汲み取っていないようで、汚染対策の能天気ぶりと一脈通じる、自治体のゆるゆる精神を垣間見た気がした。

 そこは我慢して今年もクリーンセンターに測定を依頼した。一応受取ったあと上司と相談したようで、測定は出来ない、と断られてしまった。
「当所での測定は、あくまで簡易であり、その値が一人歩きするのは困る」
 というのが理由だった。これにはまたまたびっくりだが、どうやら震災5年目なので測定結果をブログに掲載する、と前もって断ったのがいけなかったらしい。
 一年目二年目、そして今年と、市民対応のあきらかな変化があり、それは劣化というほかはないもので、ゆるゆる精神の自治体が、わが身をまもろうとする行為と見てとれるだろう。むろん組織としての話で、受付けた担当氏は、上司の意向を伝えただけなのであろうけど……。

 いずれにしろ2年間も測定しておきながら、今年に限って拒否するには、あまりに希薄な理由というしかない。もちろん、どうにも納得できないので、日光市役所本所なり、栃木県庁なりに事情を聞いてみるつもりだが、その結果はまたの機会にお知らせしよう。

 そんなわけで測定結果は出ていないが、今年も畑の肥料とするのは無理であろうと、前々から考えていた。ご案内のようにセシウム137の半減期は約30年なのだから、私が生きているうちに400 Bq/kg以下になることは、ほとんど絶望的なのである。
 しかし、まあ、放射線物質の半減期の知識を持ち、話題にしたり、ブログで読んだりする国民なんて、地球上どこを探しても日本だけではあるまいか。いっそ今年のサミットか国連総会あたりで自慢してもらいたいくらいだ。