金継ぎ

 前々から一度はやってみたいと思っていたけど、何とはなしに機会を失っていた。大体、陶磁器などは忙しいときにかぎって割ってしまうものだろう。気が急いて手もとがおろそかになったりするのが原因だが、そんな状態では七面倒な細工ごとは考えたくもないわけで、やったことのない「金継ぎ」などには手が出ないということになる。

 第一、わざわざ直してみたくなるような高価な器は所蔵していない。加えてあまりに手ひどく割れたりすると、あきらめが先に立ってしまい、そのまま廃棄ということになっていたのだろう。
 つい先日、普段使いの皿が割れてしまった。益子焼の安手物だが、二枚セットだったので、夫婦の食卓に便利に使われていた。しかし、バッカリ割れた具合がほどよく、破片の紛失もない。いかにも「金継ぎ」向きのように思われた。

 ネット情報を調べると、思いのほか盛り沢山で、ちょっとした人気らしいことがわかる。くわしい方法はそれを調べてもらうほうが早いのだが、そうした情報のほとんどは、破片の接着に「うるし」を使うようだった。が、それでは弱いようにも思われ、いっそ2液性のエポキシ樹脂のほうがより強固に接着するのではと考えた。

 断面にエポキシ樹脂をぬり、ずれないように接着する。乾くまでテープなどで固定したほうがより安全だろう。一晩放置して、しっかり固まったら、はみ出した樹脂をカッターなどで削りおとす。さらに耐水ペーパーを使い、指でさわって段差が感じられなくなるまで丁寧に磨く。

 割れ目に沿って細筆で「うるし」をぬり、それが乾かないうちに「金粉」をふりかけて定着させる。いわゆる「蒔絵」の技法ということになる。

 ちなみに義父の遺品に「新うるしの金粉セット」が残っていた。釣り好きだったから浮子などを手作りしたらしく、かれこれ15年以上前のものだが、むろん変質の心配はない。ただし、残されたセットでは「透明うるし」に金粉を混ぜこむように書かれている。

 ところが調べたネット情報の多くが「黒うるし」を使用している。その理由は定かではないが、あるいは背景が黒いほうが、金粉がより輝くのかもしれない。そこで情報どおりに黒うるしを塗り、太い筆に金粉をまぶして蒔き、よく乾かしてから余分な金粉をぬぐい落した。
 仕上がりは、まあ、「素人なり」だが、普段使いには問題はないだろう。

 ……と思われたが、何度か使い、洗剤で洗っているうちに金粉がはげ落ちてしまった。使用した「新うるし」は乾きやすいから十分接着しなかったか。あるいは「透明うるし」に金粉を混ぜこむ方式のほうがよかったのかもしれない。

春の事始め

 事始めという行事がある。正月行事を始めたり、農作業始めに田の神様をお祀りしたりと目的に合わせ、それぞれ12月8日や2月8日に行うところが多い。そこから「事八日」(ことようか)などと呼ばれているのだろうが、なぜその日なのかはわからない。
 わが家の「事始め」は3月に入ってからか。寒さに縮こまった冬眠状態にも飽き飽きして、手はじめにパソコンの「やよい会計」を起動させて確定申告を済ませたりする。

 農作業もはじめたいが、まだまだ畑は凍りついたままだから、やれることは少ない。いつも遅れ気味になるジャガイモ植え付けは、何度か雨降りがなければ耕すこともできない。ヤギ糞堆肥づくりをはじめてもよいのだが、ちょっと体慣らしの必要がありそうなので、ならばとニンニク畑での追肥作業からはじめた。

 昨秋に植え込んだニンニクは、タマネギ用マルチを使って1条空けにしてある。空いた穴が追肥用で、粒状の化学肥料を一つまみずつ投入したが、とくに土を混ぜたり乗せたりもせず、雨によって染みこませればよいことにした。

 そんな簡単作業の合間に思いついたのだが、保存してあった生ニンニクのほとんどに芽が出てしまっている。そのままでは使えないが、いっそ「葉ニンニク」にしてしまえば利用できるのではないか。葉ニンニクなど食べたことはないし、どんな料理にすればよいかもわからないが、大きく育ってから調べればいいだろう。

 かなり芽が出てしまっている。そのまま植えても育つかもしれないが、やはり一片ずつにほぐすことにした。鱗片はフカフカとやわらかになって扱いにくいし、せっかくの芽を折ってしまえば育たない、とあんがい苦労してほぐし、元肥もほどこさずに適当にならべて植え込んだ。はたして育つかはわからない、ダメ元の作業だった。

 話はころりと変わるが、どうしたことか奥さんが「現代農業」を購読しはじめている。ヤギ飼いで忙しく、土いじりなど一切しないはずだが、どうやら出版社の営業マンが読者宅を一軒一軒訪問しているのを意気に感じて決めたらしい。それにしても読んでるふうには全然見えない。はてさて、その目的は……とやたらいぶかしく思っているところだ。

芽キャベツの残念

 今冬の楽しみがひとつ消滅する。今年のニューカマーとして「芽キャベツ」を植え、1月中頃の収穫予定、と昨秋に紹介したが、やたら生長が遅れていて、この分では収穫までたどり着けそうもない。

 苗を購入したのは、たしか10月に入ってからだ。初めての栽培だけにネット情報を頼りにすすめていたが、11月の記事掲載時でも成長が遅れ気味のような感じだった。そこで追肥などを処置したが、とうとう遅れを取りもどせずじまいになってしまったのだ。

 どうやら日当たりが悪いと結球不足になり易いようだし、水分不足や肥料切れもいけないらしい。あるいはデッキでの鉢植えでは無理なのか、とも考えたが、件のネット情報によればプランターでの栽培も十分可能とある。
 もっとも畑に地植えしていたら、この大雪に埋まっていたろうから、収穫不能ということでは同じ結果になっていたにちがいない。

 結局のところ日光のような寒冷地では、温かいうちに十分生長させておく必要があるのだろう。再度挑戦するかはまだ決めていないが、早々8月ごろには種をまき、11月には茎の太さ3センチになるようにするつもりだ。

 試しにスーパーマーケットで購入した「芽キャベツ」と比べてみる。その小ささに笑ってしまうが、予告したように自家製サトイモと一緒にホワイトシチューにしてみたけど、こんなに小さいと探すのは無理だろう。

 サトイモは小さめを選んだので出来上がりはわるくなかったが、芽キャベツの味は「可もなし不可もなし」といったところだろう。いわゆる「彩り野菜」の範疇に入るのかもしれないが、そのわりには仕上がり色がよくない。

 そう言えば、軽く塩ゆでした「芽キャベツ」をシチューに紛れこませてしまえば、もっと鮮やかな緑色で撮影できたな、とカメラマンのころ盛んに使った技法をちょっと思い出した。流行りの言葉で言えば「フェイク・テクニック」ということになるだろうか。

燻製レシピ・鶏のささみ

 先日、ショルダーハムを燻したさい、前々から気になっていた「鶏ささみの燻製」を一緒につくってみた。WEBで拝見したもので、ひょっとしたらブログ主宰者(GRI氏)のオリジナル・レシピかもしれないけど、料理レシピの著作権は気にしないでよいらしいので、少し変更して掲載してみる。のちほど当該ブログにはコメントを入れておくつもりだ。

鶏ささみ 15本の漬け込み液
酒50㏄  みりん50㏄  しょう油100㏄  三温糖大さじ1  味噌大さじ1
ニンニク・しょうがのすりおろし各小さじ1  唐辛子みそ少々(後述)

 例によってささみはフォークなどで肉刺しておき、漬け込み液ごとビニール袋に入れ、冷蔵庫で一昼夜ほど味付けする。

 さっと水洗いする程度に塩抜きし、水気をよく拭き取ったあとピチットシートで包み込み、ふたたび冷蔵庫で一晩乾燥させる。

 魚焼き用の鉄串に刺してスモークする。ショルダーハムと同じく60℃ほどの燻煙だが2時間で切り上げた。
 仕上げにレシピどおり日本酒をスプレーする。よい艶に仕上がった。

 ちなみにウイスキー樽を利用したスモーカーでは、チップは使わず、炭火を熾したコンロに桜の薪を直接のせるという適当な方法。あまりに炭火が強いと、薪が燃えあがって温度が上がりすぎるため、そのあたりの加減がむずかしい。

 そうしたわけで、GRI氏のような微妙な温度管理は不可能。そこで生っぽさを避けるため、ショルダーハムと同じくボイルすることにした。ただし直接湯に入れず、ビニール袋ごしの湯煎状態にして、64~65℃で3時間。

 結果、味は上々だったが、少し熱が入り過ぎた感じがする。つぎは1時間程度の湯煎にしてみるつもりだ。

 ところで漬け込み液に入れた「からしみそ」は、鬼怒川温泉にむかう国道121号と船生街道(県道77号)の丁字路にある「とびこみ屋」さんの手づくり品だ。
 三角巾で頭をつつんだお姉さんがキリキリ働いていて、かつ丼をかかえこんだ隣テーブルのお客が「よう」と目顔であいさつ。よくよくみたらフーテンの寅さんそっくり、といった雰囲気がする定食屋さんです。

 唐辛子の辛さばかりではなく、うまみも含まれた複雑な味が気に入り、うどんに入れたり、マーボ豆腐に使ったりと重宝している。もう残り少ないので近々買いに行くことになりそうだ。

燻製とハチミツ

 ショルダーハムづくりにハチミツを使ってみた。私の乾塩法レシピでは、肉の3%の岩塩、その半分の三温糖に、その他のスパイス類を混ぜ合わせて10日間漬け込む。この砂糖の代わりにお隣からいただいたハチミツを使ったのだが、ことのほか仕上がりがよく、どうやら鉄板レシピになりそうな感じがしている。

 ハチミツの上品な甘みは塩分をやわらげ、しかも抜群の殺菌力がある。高い糖分によって腐敗菌などが繁殖できず、理論上は腐らないとされ、たとえば古代エジプトの墳墓から発掘されたハチミツの品質にほとんど変化はみられなかった。そうした性質は、10日間もの長い熟成期間への衛生管理にきわめて有用だろう。
 しかしいくぶんかの懸念もあるのだ。

 たとえばハチミツ使用の離乳食で乳幼児が死亡したことがある。有名な料理レシピサイトが紹介したため大騒ぎになったが、原因は乳幼児ボツリヌス症だった。
 自然物であるハチミツにはボツリヌス菌の芽胞が入ることがあり、乳幼児の腸内で菌が繁殖して食中毒を発症する。芽胞状態のボツリヌス菌は無毒だが、嫌気性菌であるため酸素のない腸内では活動を開始する。多くは大腸菌などの腸内菌によって退治されてしまうのだが、乳幼児は腸内菌が未発達であるため、ボツリヌス中毒を起こしてしまうわけで、ここにくわしく説明されている。

 また前述リンクによれば、そもそも「ボツリヌス」とは、ラテン語のbotulus(腸詰め)が語源らしい。ヨーロッパではハムやソーセージが中毒の原因になることが多かったところからの命名のようで、そこで中毒を防止する防腐剤として硝酸塩(硝石・硝酸カリウム)が添加されるようになった。

 この硝酸塩には、発色効果や臭み消しの効果もあるので、市販のハム・ソーセージにはほとんど添加されている。しかし摂取すると体内で亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウム)に変化し、タンパク質にふくまれるアミンと反応して発がん性が高いニトロアミンが生成されることがわかってきた。となるとやはり問題だろう。

 がんの発症までには多量の摂取が必要のようだが、わざわざ発がん物質を口にすることもない。しかしながらボツリヌス中毒も怖いわけで、どちらを選ぶかはひどく厄介な問題になってくる。
 じつを言うと、中毒防止に硝酸カリウムや亜硝酸ナトリウムを使用すべく、かなり以前に入手してあるが、いまだに使用を躊躇しているのだ。

 ところでボツリヌス菌は嫌気性菌であるという。酸素が遮断された状態、つまり腸などにケーシングされたソーセージやハムに発生するわけで、密封されていないベーコンはどうなのだろうか。あるいは挽き肉を詰めるのではなく、塊肉のままのハムであればケーシングの必要がなく、ならばボツリヌス中毒を防げるのではないか。……などとも推論するが、これをはっきり証明する研究にはお目にかかったことがない。

 また硝酸塩は自然界にも存在する。たとえば海水塩とちがい、岩塩には微量の硝酸塩が含まれるようだし、たとえばチリ硝石が産出するチリ産岩塩には多く含まれているらしい。わが家で使用している豪州産岩塩にはどれほど含有されているのだろうか。

 野菜にも微量ながら硝酸塩が含まれ、これを利用した食肉加工時の発色剤も研究されているようで、この方法にはハチミツの糖分をも発色剤として併用利用する、とも書かれている。
 そんなこんなを調べた結果、ハチミツの有効性は十分あるように考えられるので、いましばらくは隣家産のハチミツ使用をつづけてみよう、と考えているところなのだ。

ショルダーハム・レシピ変更

 年明けになっての初燻製を行った。正月料理の用意をするとき、一緒に漬け込みをする関係でちょうどこのころ燻煙作業になるのだろう。去年の記事をのぞいてみると、同じくショルダーハムをつくっていた。

 安価な輸入肉の肩ロース約2.5㎏を半分にする。脂肪の少ないほうを低温調理でチャーシューに使い、残りを燻製した。例年より量が少ないが、いくつか試してみたいことがあるためで、結果がよければもう一度つくるつもりだ。

●テスト① 漬け込みは乾塩法で行ない、岩塩に混ぜる三温糖をハチミツに変えてみた。以前、高知のログビルダーが、手造りベーコンにメープルシロップを使っていたのを思い出し、そこでハチミツではどうか、とテストすることにした。

●テスト② ネット情報を参考に、タマネギとともにリンゴのスライスを漬け込んでみた。たまたま冷蔵庫に入っていたので……。

●テスト③ 熟成は10日間、1時間おきに水を取り替えて溜め水で脱塩する。この時間を5時間から8時間に増やした。ちなみに肉は金網の上に置き、解けだした塩分が下に溜まるようにした。

●テスト④ 燻煙はいつものように60℃で6時間。70℃2時間のボイルを、低温調理の結果がよかったので64~65℃で3時間に変更した。また茹でるさい、肉を直接湯に入れず、ビニール袋に入れて湯煎状態にした。

 結果は上々だった。塩抜け具合もちょうどよかったし、味もわるくなかった。やはり「塩抜き」が味の決め手になるようだ。そして肉色がすばらしいのは、ボイル方法の変更だろうと思われる。
 リンゴの効果はよくわからない。ハチミツについては、いくつか思いあたるのでさらに調べてからの報告としたい。とりあえず、ショルダーハムのレシピは下記のように変更する。

※肩ロース 1㎏あたりのレシピ
岩塩    30g
ハチミツ  大さじ2(または三温糖15g)
黒コショウ、オールスパイス、セージ、ローレル 各2g
リンゴ、タマネギ   適宜
※冷蔵庫で熟成10日間 溜め水脱塩8時間、燻煙60℃6時間、ボイル64~65℃3時間

 ついでながら肉のしばり方はこんな感じ。

巨大大根

 お雑煮が三日もつづくと、すこしばかり胃がもたれてしまう。このあたりも加齢によるものかと思いあたり、だから七草粥なのだな、と納得してしまった。そこでふと春の七草のひとつ「すずしろ(清白)」、つまり大根を思い出したので、今回の話題にしてみる。

 お隣に届け物に行った奥さんが泣き泣き帰ってきたことがある。
「これ、持っていきなって言われちゃった」
 と大根2本を差し出した。そんなお返しをありがたく頂戴したのはよかったけれど、冬の大根の冷たさに持つ手は凍えて、ついには涙がちょちょぎれそうになってしまった。けれども両手は大根を持っているから拭くこともできず、帰り道の200メートルを涙ながらに歩いてきたらしい。

「ちょっと、なによ、この大根? 絶対持てない」
 と奥さんが、ついつい眉をひそめたのはそうした記憶のせいだったのかもしれない。8キロほど離れた農産物直売所にならんでいた大根は、それほど巨大だったのだ。
「これ、100円だってさ」
「安いけど、”す”が入っているんじゃない?」
 と気が進まない奥さんをお構いなしに、面白がって買ってしまった。となれば当然、調理役をも買って出なくちゃならない。

 大根を調理するさいには「お米のとぎ汁」で下茹でする。苦みやアクが抜け、やわらかさが増して味も染みこみやすくなる。米にふくまれた”でんぷん”の作用らしいので、生米ひと握りを入れ、小一時間ほど茹でることにしている。
 そう言えば、電子レンジで温めたり冷凍すると、大根の細胞壁が壊れて味が染みこみやすいと聞いてテストしたことがあるが、さほどの効果は得られず、何やら苦みも残った気配もあるのでそれっきりにした。

 それにしても見事な大きさだ。輪切りにしても”す”は立っておらず、筋のある皮部分を思い切ってむけるのがうれしいが、あまりに巨大過ぎて三分の一ほどで鍋一杯になってしまった。

 まず焼き目をつけた鶏手羽との煮込みにし、もう一つは、たっぷりの鰹だしに昆布を加えて煮込み、甘めの味噌にきざみ柚をそえて食した。

 どーんと食卓に置いてみれば、そりゃ、まあ、存在感たっぷり……。だが、味のほうもやたら巨大。つまり大味で、すこしも美味くなかった。

「見栄えはいいけど、味も素っ気もありませんね」
 と言われた記憶があるのだけど、はて、いつごろで何のことだったろうか……。

正月料理

 改まって「お節料理」を用意するのは、とっくのむかしにやめていた。だいたい-10℃にもなる寒い朝に、わざわざ冷えた重箱料理などぞっとしないし、たとえ「めでたさを重ねる」意味があったとしても、歳を重ねてめでたいことなど一つもありゃしないと、へらず口をたたきながらも、
「しかし、何もないのもさびしいな」
 とついつい思ってしまうのが正月料理だ。

 それじゃ「牛肉のたたき」でもするかと考え、ひさしぶりに「低温調理」を思い浮かべた。牛肉にかぎらず多くのたんぱく質は、65~75℃程度で変性してうま味が増したりするが、同時に水分を外に逃がして、硬くパサパサにしてしまう。こうした性質は、ハムなど燻製づくりのボイル温度を70℃に保つことでよく承知していたし、20年も前にプレゼントされた「保温調理器」を利用した「砂肝のコンフィ」を紹介したこともある。

 ネット情報の「低温調理」を当たってみると、以前に比べて記事がやたらと多いのに気がついた。どうやらANOVA、BONIQといったアチラ製の「低温調理器」が輸入販売されるようになり、ちょっとしたブームになっているらしい。温度センサーで計り、ヒーターと攪拌機で湯温を一定に保つもので、スマートフォンと連携する機能もあるようだが、わが家にスマホなど一台もないし、第一、大枚2万円もはたいて買う気は毛頭ない。

 ちょっと興味を惹くレシピがあった。調理温度を60℃ほどと低く保ち、その分時間を3~5時間と長くしているのだが、これほど長時間になると、頂き物の「保温調理器」ではすこしばかりむずかしい。しかし、途中でお湯を加えたりすれば可能かもしれない、とこんなテストをすることにした。

※チャーシューの低温調理
豚モモのブロック      400g
★ショウユ、みりん、酒   各大さじ2
★ニンニク、青ネギ     適宜

①一煮立ちさせた★をビニール袋に入れ、肉刺ししたブロック肉を一晩冷蔵庫で漬け込む
②常温にもどした漬け込み肉は、湯温65℃の「保温調理器」に、漬け込み液が入ったビニール袋ごと沈める。もちろん袋にお湯が入らぬよう注意する。
③一時間ごとに熱湯を加え、60~65℃に保ち、合計3時間沈めておく。
④調理した肉の表面に焼き目をつける。熱くしたフライパンで手早く焼き(ゴム入りネットは外した)、肉を取り出して残った漬け込み液を煮詰め、肉をもどしてからめる。
⑤しばらく放置し、冷ましてから切るほうが肉汁がでない。

 ご覧のように肉色があざやかで、しかもやわらかい。生肉状態での漬け込みでも十分味が染みこむようで、安価なモモ肉ながらなかなかの味に仕上がった。いままでは表面を焼いてから「低温調理」していたが、あとで焼くほうが香ばしさが残る感じなのがとてもよかった。

 皮目をパリッと焼いた合鴨のたたき……といま考えついたが、それはいずれ紹介する。

満天星とピラミッド

 菜園の隅に植わっているドウダンツツジ(灯台躑躅)を移植した。下向きに咲く白い小さな花を満天の星にたとえられたりするが、土地を購入する以前から植わっていて樹齢40年は超えていると思われる。それだけに巨大なほどに成長して菜園に大きな陰をつくるので、ひと思いに移植した。

 ツツジは元の地主家の墓に隣接して植わっている。いわゆる屋敷墓と呼ばれ、墓葬法が制定される以前からある墓地だけに認められる古い形式なのだが、関西にはなく、関東でも少ないらしく、しかも神道式の墓というのがめずらしい。

 神道式の墓石は、頭頂部を四角錐につくり、「……家之奧津城)」と刻まれている。それを「おくつき」と読むとは、この集落に移住してはじめて知ったわけだが、何度か体験した葬送行事は、日光東照宮の神官がすべてを執行していた。この地方が東照宮領だった名残りなのだろうか。

 ひどく唐突だが「日ユ同祖論」という説がある。明治のころ貿易商(あるいは宣教師)として来日したニコラス・マクラウドが日本と古代ユダヤとの相似性に気づいて体系化したものだが、水や塩で身を清める禊(みそぎ)をする日本神道の習慣は、ユダヤ社会にもあったと言い、古代ヘブライ神殿と日本の神社の構造が似ていたり、ユダヤの聖櫃(アーク)は、日本の神輿(みこし)にそっくりだったりと、その相似点はおどろくほど多い。

 そうした目で見てみると、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を意味するとされる神道式墓石の頭頂部が、古代ユダヤ王の墓と目されるピラミッドに見えてきたりする。むろんここでくわしく書き触れるわけにはいかないけど、一度きっちり調べてみるのもわるくないな、と思ったりした。

 ともあれツツジを移すなら、葉が枯れ落ちた季節がよいらしい。根張りが浅く、丈夫なので移植してもめったに枯れない、との情報に気をよくして強行とあいなった。つかみ装置付のバックフォーだから、こうした作業はお手のもので、周囲を1メートルほどの深さに掘り起こし、根っこに土を付けたまま移動させる。

 根に付いた土塊は直径1.5メートルほどにもなる。はたしてどのくらいの重さになるだろうか。つかんで持ちあげたまま横にまわすと、その重さで反対側のキャタピラーが浮き上がってしまう。無理すれば横転ということもあるので、爪を使って土をかき落として移動させるなど、慎重に作業をすすめて終わらせた。

裏切りの燻製

 作ってはみたものの、ブログでの報告にすこしばかり躊躇していた。その出来映えはともかく、味がそれほどでもなかったのが原因だったが、そろそろ正月用の燻製の時期か、と考えたついでに掲載することにした。

 ストック切れのベーコンを作ったさい、変わり燻製でも、と用意した材料は、かまぼこ、ゆで卵、それに市販のボロニア・ソーセージ。このところ怠けまくっているソーセージ作りを、出来合い品のスモークでごまかそうと目論んだのだ。

 ボロニア・ソーセージは、イタリアが発祥の牛の腸を利用した太めのソーセージ。羊の腸ならウインナー、豚の腸だとフランクフルトと呼ばれたりしているが、いずれも塩・香辛料を混ぜ合わせた豚の挽き肉を詰め込んで作られている。

 ちなみにソーセージは、ノコギリを意味するソー(saw)で細かく切り刻んだ肉と香辛料のセージ(sage)を語源とする、とどこかで聞いた記憶があるが、これはどうも、ひどい間違いだったようだ。チェンソーなどが耳に馴染んでいたため、ついつい納得してしまったのだろうか。あちらこちらで吹聴した覚えもあるので、まったくもって冷や汗ものだ。

 正しく英語ではsausageと表記されるわけで、いくつか語源説があるうち、ラテン語の塩漬けを意味するsalsusとセージsageの合成語、というのが有力らしい。

 ゆで卵は、あらかじめ醤油などの調味料に漬け込み、かまぼこは板から外し、ソーセージもケーシングを取り除いておく。いずれも冷蔵庫から早めに出して常温にもどしておかないと、スモーク時の温度上昇にともない水滴が浮き出して煙がきれいにつかない。

 ベーコンを吊した上の網にならべてスモークする。あくまでベーコン作りの副産物だから、65℃まで徐々に温度をあげて6時間、といういつもの温燻パターンは変わらない。わが家では、そのまま食するフレッシュベーコンのほか、保存性をより高めるため70℃60分でボイルするときもある。

 副産物たちの出来映えはこんなものか。ゆで卵やかまぼこは、それなりの味に仕上がり、まあまあ満足したが、ソーセージとなるとそうはいかない。
 出来合いソーセージだけにさして期待はしていなかった味に、やはり手抜き燻製だったな、という後ろめたい”裏切りの味”をまぶしたような感じ、とだけ表現しておこう。