緊急パン焼き・ダッチオーブン

「ウソ、まじ?」
 と大声で叫んだ奥さん、いきなり立ち上がるとバタバタとキッチンに駆け込んだ。
「どうした、どうした」
「ガス、止まちゃった。パンいまから焼くところだったのよ」
 いましも発酵がすすんだパン種は、まるまると膨らみ、あとは予熱したオーブンに入れるばかりになったところでの緊急事態発生だ。

 わが集落のような山里では、かろうじて電気と電話だけ、というお粗末な社会インフラでの生活を余儀なくされる。テレビの地上波は映らないし、ようやく設備された水道も湧き水が水源で、住民が交代で塩素を管理する簡易水道という具合。もちろん都市ガスなどあろうはずもなく、ボンベ設置によるプロパンガスなので、ときとしてガス切れという事態が生じる。
 ガス屋さんにあわてて電話を入れたところで、さて、膨らんだパン種をどうするか。

 不便であればこそ様々に工夫し、多様な備えもできている。ならば、と持ち出したダッチオーブンは、ふつうならバーベキューやキャンプ用品だろうが、冬のこの時期、欠かせない調理器具だ。
 常に焚いている薪ストーブとの組み合わせは最強で、肉の煮込みに、ローストにと大活躍で、もう8年前になる、あの東日本大震災もこのコンビで乗り切ったのだ。

 薪ストーブとダッチオーブンによるパン焼きは、前々から一度試してみるか、と思っていたのでちょうどいい機会だった。まずはプレヒート(予熱)が必要だが、薪ストーブより直接炎があたるほうが早い、と判断してカセットコンロを使う。上蓋にのせる炭は、薪ストーブに放り込んで着火させた。

 発酵途中のパン種は、ベタベタとやわらかになっていて手では触れない。下に敷いたオーブンシートを一つずつに切り、火傷に注意しながらフライ返しで移したが、これがかなり難しい。しかも全部は入りきれないので、半分ずつ焼くことにして薪ストーブに乗せる。

 ちなみに使ったダッチオーブンには底部の突起がない。キッチンタイプと呼ばれているもので、薪ストーブの鉄板に密着するため安定がよく、熱効率が断然よい。上蓋に赤々と熾った炭火を載せたが、薪ストーブからの熱ではたして焼けるものか。全体に熱がまわりきらないのでは、と心配しつつ約20分加熱させた。

 そのころにはガス屋さんのボンベ交換がおわり、ガスオーブンでのこったパン種を焼けることになった。図らずもは焼き具合を比較できることになったわけで、ダッチオーブンの焼き色がやや浅めなのは、上の炭が足りなかったせいだろう。

 ともあれ薪ストーブでパンが焼けるのは、危機管理上かなり心強い。切ってみれば,膨れ具合や気泡の入り方に差はほとんどなかった。
 そのころになって気がついたけど、大きめのオーブンシートにパン種をのせて入れれば、火傷の心配せずにすんだかもしれない。

年忘れ料理

 毎年のことだが、歳末は料理でやり過ごす。まずは合鴨を低温で調理し、その合間をえらんで黒豆や昆布巻きをつくり、いわゆる「お節」がわりとする。
 合鴨の低温調理は、恒例になった年忘れの一品持ち寄りパーティー用だが、お節や年越しそばにも利用するので、味付けにすこし工夫した。

①使うのは合鴨の抱き身。鴨ロースとして売られているが、いわゆる胸肉で翼を動かす筋肉。当然、野生の鴨が最上等でかなり高価。むかし狩猟家から譲ってもらったことがあるが、いまでは輸入品の冷凍合鴨で我慢している。なにしろ500円ほどとお安いのが一番。

 まずは冷蔵庫に移してゆっくり解凍する。出来れば丸一日、すくなくとも一晩かけて解かす。水に漬けたりすると細胞が壊れ、てきめん食味に影響する。
 しみ出たドリップをきれいに拭き取り、2時間ほど常温に放置する。肉の内部まで同じ温度にするのが低温調理のポイントの一つ。

②お湯に漬け込むため、ビニール袋に別々に入れる。以前、ひとまとめに試してみたが、重なった部分の熱の通りがムラになってしまった。ビニールは破れやすいので2重にしたほうが安全。
③お湯は60℃。肉を入れたときに冷めるので、やや高めに設定する。もし低くなりすぎたら熱湯を追加してもよいが、とにかく60℃を超えないこと。

 漬け込み時間は2時間。わが家では保温調理器使っているので、一時間に一回、熱湯を注ぎ入れて60℃を保っている。最近では電気式に温度調節が可能な製品も売られているが、大きな寸胴鍋を利用して、とろ火で温めながら60℃を保つ方法でも十分可能だ。

④⑤皮に包丁目を入れ、熱したフライパンで焼く。皮から脂がしみ出てくるので油は入れず、筒切りした長ネギを一緒に焼く。
 ついで鴨肉は取り出し、酒1,みりん1,しょう油1の漬け汁を入れる。しみ出た鴨の脂や焦げ目をこそぎとり、ネギの風味が移し採るためいったん沸騰させる。

⑥あら熱をとった漬け汁に鴨肉を漬け込み、一晩置く。ビニール袋なら漬け汁が少なくてすみ、抱き身三枚使った今回は、酒、みりん、しょう油をそれぞれ半カップ使用した。

 こうした調理法では、まず焼き目をつけてから漬け込む場合が多い。しかし低温調理の場合、腐敗菌が繁殖しやすい30~40℃の通過時間が長くなるため、あとで表面を焼くほうが殺菌効果が高いと言われている。
 また漬け汁に酢を合わせるとやわらかに仕上がる。ここで使用しない理由は後述する。

 60℃・2時間で調理した鴨肉は、肉色があざやかなピンクに、しっとりやわらかく仕上がる。一晩漬け込めば味もしっかり乗っているが、漬け込み時間が短いときには、漬け汁を煮詰めてタレとしてもいい。

 隣村のログビレッジで開かれる年忘れパーティには、こんな感じに薄切りして持ち寄った。それを終えて帰宅後、漬け汁を出汁でうすめ、裁ち落としの鴨肉を入れた「鴨汁そば」で年越しをするのが恒例になっている。

 冷たいそばを温めた鴨汁でいただくのは、日光に移住してから知った。東京で食する「鴨南蛮そば」に似ているが、そばが冷たいほうが、そばの風味が際立つように感じる。
 このため漬け汁に酢を使わないのだが、鴨肉にはややパンチ不足。オレンジかレモン汁を別途加えるなどの研究が必要かもしれない。

 そのほかに、ニシンの昆布巻きをつくり、黒豆を黒砂糖で味付けし、小さなダッチオーブンを薪ストーブで煮たりしたが、新年の食卓はこんな感じでお節料理とはとても言えない。歳のせいだろうけど、鴨肉のお雑煮だけで十分満腹してしまうのだ。

冬のデッキファーム

 一階居室の南面にしつらえたデッキは、外から見るとほとんど二階のように見える。建物自体が斜面に建てられているためで、さらに低い駐車場からだと5メートルもの高さになってしまい、玄関までの登りが少々しんどくなってきたけど、それとは別の話をしたい。

 これだけ高さがあると、眺めがよいのはもちろん、風が気持ちよく吹きぬける。そのせいか虫が寄り付かないので、大きめのポットをならべて植え付けたハーブや野菜は、まったくの無農薬で栽培できている。

 2年前に屋根を架けたので、デッキ床の張り替えや雪かきの必要がなくなったが、そのぶん水やりの手間が増えた。むろん陽ざしも入りにくくなるので夏野菜はミニトマト中心にしているが、低い冬陽になったいまは、朝食用のサンドイッチによく使うサニーレタスや、パセリやローズマリーのキッチンハーブを育てるにちょうどいい。

 種まきしたサニーレタスは、まだ芽吹いたばかりだが、あとひと月ほど後には食卓にのせたい。そのためには透明な育苗ドームで寒さ除けをしたほうがいいかもしれない。

 10月の末ごろだったか、ホームセンターで売れ残りの苗を買った。たしか一株20円だったので、ま、いいか、と思ったわけだが、そのスティックカリフラワーなんぞは、育てたことはもちろん食べたこともない。
「いやぁね、前に料理したことあるわよ」
 と奥さんに言われてしまったけどまるで覚えていない。

 だいたいカリフラワーやブロッコリーの、あのモソモソした食感が好みじゃないので、たぶん手を付けなかったのだろう。よしんば食べたとしても、わざわざ記憶にのこすほどのものではないのだ。

 そうした好みでもない苗を買ったのは、ひとえに安かったからで、いつものわるい癖が頭をもたげてしまったわけだ。売れ残りの枯れかかった苗だったが、大型ポットに自家製堆肥をほどこして植え付け、枯れない程度に水やりをつづけた。

 その甲斐あってか、害虫被害にもあわずによく育ち、葉の真ん中に花蕾(からい)らしきがふくらんできた。これを頂花蕾(ちょうからい)と呼ぶようで、大きく育てて茎ごと収穫すると添付ラベルに書いてある。採り遅れて蕾(つぼみ)がゆるんでしまうと、花が咲いて味がわるくなるらしい。

 かるく塩ゆでして海苔入りマヨネーズ・ソースで食した。花蕾のモソモソ感は多少のこっているが、茎部の歯ごたえはわるくなかった。しかし、まあ、どうしても栽培したい、と思うほどの味ではなかった。

おまけのトピックス

 こちらはどうあっても栽培したい「生食用そらまめ」。ポット苗の根も十分育ったので、アブラムシ除けのシルバーマルチに定植した。寒さ除けにトンネルをほどこしたら、すぐに初雪となった。
 このまま順調に育ち、鹿や猿どもに荒らされなければ、5月ごろ収穫予定だ。

薪づくり2018

 2018年の薪づくりをやっている。ご近所が伐採した栗の木を頂いてあるが、近いこともあって薪になりそうな直径10センチほどの枝まで運んであるので、まずはそのあたりから片付けはじめた。

 伐採が5月とあって季節もよくなかった。すでに水を吸いあげてやたら重く、運ぶのに苦労したし、いくら腐りにくい栗の木でも、白太(樹皮に近い若い木質)の多い枝部分は、早めに処理しておくに越したことはない。

 運動不足の冬に割ってやるか、と思っていたが、今年は雪が多そうな予感がしている。しかも酷暑の夏だっただけに、水分の多い樹皮にキノコが生えだしていた。そこで手をつけたわけだが、さいわい木質部に腐りはないので枝部分だけ処理し、残した太い幹部は来春に割る。

 薪づくりは、ストーブに入る長さ(36~37センチ)に切り揃える「玉切り」から始め、短くて薪棚に積めないコロ薪(端材)とを選り分けるが、枝部分は曲がりや別れが多いぶん手間がかかる。さらに今年の原木は短尺だったので、どうしてもコロ薪が多くなってけっこう時間がかかった。

 栗の樹皮は厚く、しかも枝には量が多い。冬伐りなら樹皮がかたく締まり、そのまま乾燥させることもあるが、今年のように水分を多く含んでいると、乾燥中に剥がれだし、当然のことに虫も入りやすい。
 いずれは燃やすため室内に持込むわけだが、ボロボロ崩れたり、虫が這い出してくるのには閉口する。「きれいに剥がしておいてね」と奥さんにも言われている。

 薪割り機にかけると大部分の樹皮は自然に剥がれてくれるが、節などに固着した部分は、斧などで取り除いてやらねばならない。この作業がちょっと面倒だし、量が半端ではない。結局、軽トラに3台分ほどの量を処理する羽目になった。

 割ったあとは積みあげ作業だ。今年は玄関わきのコンクリート基礎に沿って積みあげるが、斜面下の作業場で軽トラックに積み込み、ほんの30メートルほど移動させては積みあげてゆく。
 もちろん手作業になり、薪1本で2キロ近い重さがある。それを一本ずつ運び、積むのだが、全体で何キロの重量になるのだろうか。積んだ本数を数えてみるか、と毎年のように思ったりするが、試したことはない。

 玄関わきには軽トラ5台分が積み上がった。これで3ヶ月分、いや2ヶ月半ぐらいで燃やしてしまうだろう。小屋に運び入れたコロ薪が約1ヶ月分、残りの幹部で2ヶ月分ほどの薪になるだろうか。こんなふうにして毎年の薪づくりが行われるのだ。

 見やすいところに年号を書き入れておいたが、ちなみに今年は、15年に割った残りと16年物を燃やす。18年と書き入れた今年の薪は、2020年の東京オリンピックが終了した冬に焚くことになるだろう。

秋ジャガイモの栽培③・収穫

 今年初めて試した秋ジャガイモを収穫した。葉が黄色く枯れてからと決めていたが、何度か霜が降りて霜害の心配があるので作業を早めた。8月上旬に種イモ(でじま)の芽出し作業をはじめてから112日が経過していた。

 この秋ジャガイモ栽培では、地下室で発芽させた挿し芽と芽を残した種イモを、それぞれ猿害対策として考えた袋栽培をするという多目的テストなので、あまり収穫には期待してはいなかった。
 じっさい土寄せと追肥の状況を掲載した9月22日の記事には、ちょっと弱気になって「挿し芽の成長が捗々しくなく、収穫にはたどりつけないかもしれない」などと書いている。

 その後、弱々しかった挿し芽も順調に成長し、やがて種イモ組と変わりないほど葉を茂らせた。そうした折にふと気づいて挿し芽組みの一部を、日当たりのよい石垣のそばに移してみたりした。こんなことができるのは袋栽培ならではだろうけど、太陽熱を蓄熱した石垣の暖かさを利用する「石垣イチゴ」を真似てみたわけだ。

 結果、すこし枯れはじめたものに比べ、石垣ジャガはまだ青々と葉を茂らせているから、ある程度の効果はあったのだろう。収穫作業は、袋をひっくり返すだけだからじつに簡単だし、クワやシャベルでイモを傷つける心配がないのもいい。

 挿し芽組には、いずれも2個のイモが付いていた。「でじま」は大きく育つ種類のようで、かなり立派なイモに育っていたが、石垣ジャガのほうが2個目の肥り具合がよかったかもしれない。さすが種イモ組は育ちがよく、どれも3個の収穫があり、小さな4つ目つきのものもある。そして種イモが腐らずに残っているのは、涼しい地下室での芽出しが効果的だったのかもしれない。

 種イモ6個からこの程度の収穫は多いのか少ないのか。それはわからないものの、ふつうは抜き取って無駄になってしまう脇芽からも収穫できたのは、大成功と言っていいだろう。雑誌「現代農業」と考案者坂本堅志氏にお礼を申し上げよう。

 ひと苗あたりのイモ数が少ないようだが、猿害対策(夏以降、猿どもは一度も現れなかった)の袋栽培ゆえの影響があったとも考えられる。イモ類にむいたカリ肥料などを研究すれば、いますこし収穫量が増えるかもしれない。

 収穫したイモの一つがこんなふうに裂けていた。病気かと心配して調べたところ「裂開(クラッキング)」と呼ぶ現象のようで、高温などで成長が止まったあと、雨ふりがつづいたりしたときの二次成長により裂けてしまうらしい。
 イモそのものに異常があるわけではなく、食べてもまったく問題はないようだが、このまま保存し、来春の挿し芽採りの種イモにするつもりでいる。

ソラマメ・遅れた播種

 ソラマメの栽培は今年で3回目になる。そろそろ本格栽培のつもりで自家採種までしたのに、いきなりつまずいた。去年までは10月に入ってすぐに種まきしていたが、暖かい今年は半月ほど遅らせようか、と思ったところでコロリと忘れてしまった。

「あ、いかん」と気がついたときには10月も終わりに近く、あわてて種をまいたが、気温が低くなりすぎて発芽は遅れ気味。ここまで育つのに20日近くも要してしまった。

 生で食べるソラマメ(ファーベ)を楽しんだあと、莢の幾つかを収穫せずに完熟させて自家採種した。なんだか黒ずんでしまっているけど、いいのか悪いのかわからない。すこしばかり心配になって市販の種を購入しておいたが、それが幸いしたかもしれない。

 種の植え付け方はいつも通り。黒いお歯黒部を下にして、3分の1ほど土からお尻を出しておく。種を前もって水に浸すと発芽しやすいようだが、土に植え付けてから水をたっぷりかける方法を試してきた。そのほうがカビたり腐ったりしない、とどこかで読んだ記憶がある。

 しかし気温の低さが災いしてか、5日が過ぎ、1週間経っても変化がない。あわてて水やりをしたり、足らずに育苗トレーを室内に持ち込んだりする。冷えた日の夜間だけ薪ストーブで暖まった室内に置こう、と考えたわけだが、どうもそれが悪かったらしい。

 2週間目ごろから徐々に発芽(すでに根は出ていた)も始まったが、4,5粒に白いカビ状のものが付着し腐ってしまった。うろたえて水やりが多すぎたか、ストーブの熱がよくなかったか。赤褐色に塗られた防カビ剤も効かなかったのだ。

 結果、16粒中11粒が発芽して育苗中。発芽率70パーセント強といったところか。こうした種の発芽率は、だいたい80パーセントが普通だから、まあまあの結果ということにしておこう。

 一方、自家採種組はまったくの惨敗だった。発芽したのは16粒中たった3粒というのでは、自家採種などと大きな声で言えない。播種の遅れや防カビ剤なしを差し引いてもひどい結果で、採種の方法が間違っていたのか。それとも採った種の保存方法が悪かったのか。

 ちなみに種は軒下に吊った網に入れておいたのだが、あるネット情報では冷蔵庫での保存をすすめている。今年はそれを試すことにする。

おまけのトピックス。
 先日食べたスギタケを放射線検査に出してみた。いまさら、と思わぬでもないが、市の施設が無料で測定してくれる。来年以降も食べるための検査だが、こうした施設が存在すること自体が普通ではない。
 それにしても測定する検体を500グラムも用意しなくてはならず、測定時に粉砕されて返却もされない。先日、土鍋で調理した3倍ほどの量が必要なのだ。
 しかし、まあ、不検出だったので少しホッとしている。

ケヤキの落ち葉掃き

 つい先日、上記のヘッダー画像を入れ替えたが、中心に写るケヤキがものすごい量の落ち葉を降らせている。その片付けは、わが家にとって冬支度の最初の作業と位置づけているが、しかし樹木というものは、年毎に成長するもので、それにともない散らす落ち葉も年毎に増加している。それを処理するこっちの体力が問題で、年毎に低下の一途をたどるとなれば、いずれ何らかの対策が必要になるだろう。

 それにしても、たった一本でこの量なのだから、都市部に多いケヤキ並木となったらどれほどになるのか、他人事ながら心配してしまう。そのほとんどが焼却処理されているようだが、そのさいダイオキシン類が発生すると問題になったことがある。

 ケヤキの枯れ葉には微量ながら塩素が含まれ、低温(300~500℃程度)で焼却したさいダイオキシン類が生成されるらしい。ちなみに「ごみ焼却」は、通常700℃以上の高温で燃やされているため、そのときには発生しないようだが、冷却装置や低温で作動する集塵装置内での生成が避けられないのだ。

 もっともケヤキの塩素は微量で、塩化ビニール類での発生に比べると、800分の1というからほとんど問題はない。ところがたとえ微量であっても発がん性のある物質なのだからきちんと処理すべきだ、と声高に発言する人々もいるわけだ。

 そう言えば、わが集落ではケヤキの薪は囲炉裏では燃やさない。煙が眼にわるいから、と聞いたことがあるが、ひょっとしたら発生するダイオキシン類が原因になっているのだろうか。このあたりよく調べてみないとわからないが、もともとすべての煙には有害な一面があるのも事実だ。

 たばこの煙は、目にしみるだけでなく肺がんの原因でもあるし、燻製の煙が腐敗防止に役立つかわり、すくなからず発がん物質を含んでいる。それを承知で暮らしてきたのだから、枯れ葉に含まれる微量塩素に目くじらを立てる必要はないのかもしれない。

 ついでながら塩素と塩はちがう。塩つまり食塩は、塩素とナトリウムが結びついた塩化ナトリウムのことだ。塩は安定した化合物で、融点800℃、沸点1413℃と高く、焼却炉程度の熱では塩素の遊離はない。したがって焼き鳥やサンマに塩をふりかけて焼いても、食塩からの新たなダイオキシン発生はないということになる。万が一、高温になって塩素が分離されてもダイオキシン類の生成温度を超えているし、鶏肉や魚はあとかたもなく燃え尽きてしまっているだろう。

 ともあれ、わが家のケヤキの枯れ葉は焼却されず、ダイオキシン類発生の心配はない。軽トラに4、5台分も運んでヤギ糞堆肥として役立てきたが、そのヤギもいなくなったので、たぶん最後の堆肥づくりとなるだろう。

 そこで今年は、茗荷畑のマルチ代わりに敷詰め、風で飛ばされないよう、こんなふうにネットで抑えた。ヤギ放牧場に害獣除けに張ってあったネットの再利用だ。

毒キノコを食う・スギタケ

 なんだか禍々しいタイトルになっているけど、ひさしぶりに「スギタケ」を食べた。2年半前に伐採した杉を切り株椅子に仕上げてあるが、ふと見たらキノコが生えている。それがなんと、懐かしい「スギタケ」なのである。

 日光に移住したのは、昭和最後の秋だったが、隣家の和ダンス工房の老職人ケンちゃんから両手にいっぱいの「キノコ」をいただいた。あるいは引っ越しあいさつのお返しだったかもしれない。それまで見たことのない種類の「キノコ」に、あらためて異郷を感じてしまったものだが、それが「スギタケ」だったのだ。

 伐採した杉林に群生するため「スギタケ」と名付けられたらしいが、砂利をまいた林道沿いに多いため、日光地方では「ジャリタケ」と異称し、千葉県では砂礫地によく生えると「スナタケ」と呼ばれている。

「食用で私もよく食べるが、数件の中毒例があるため、有毒キノコに分類される」
 と、あるキノコ専門家が書いてあったのを読んだ記憶がある。あらためて調べてみると、ネット情報のほとんどに「有毒」とあり、消化器系の中毒、アルコールと一緒に食べると悪酔いする、と書いたものもある。

「冷蔵庫に保存したのを食べたらお腹をこわしたことがある」
 とはウチの奥さんの証言だが、私にその記憶はないし、周囲で「食当たり」した話を聞いたことがない。どのような毒によるのかも不明らしいが、
「昔から食べられているきのこですが、人によっては(体調によっては、食べ合わせによっては)お腹をこわす可能性が希にあります」
 と、天然スギタケを販売しているサイトの注意書きにあった。

 ついでながら名前や形、発生場所がよく似た「ヌメリスギタケ」は、美味しいキノコとして知られている。また同じように杉や松の切り株に発生する「スギヒラタケ」は、種類も見た目もまったく違う白いキノコで、以前は美味しいとされてきたが、いまでは「有毒」と分類され、食べないよう農林水産省が告知している。かくもキノコはまぎらわしいので注意が必要だろう。

 ちなみに老職人ケンちゃんから、他人には絶対教えない「シロ」を、和ダンスを注文したお礼に教えてもらい、以来、毎年の楽しみにしていたが、原発事故のセシウム問題から野生キノコの食用を控えてきた。

 そうしたセシウム入りの、毒キノコの疑いがある「スギタケ」だが、自宅産とあれば、「食べないわけにはいかないわね」
 と奥さんが言い出した。やや尻込みぎみの私は「万が一のとき病院まで運転」を理由に、ほんの一口にすることで料理に入った。

 調理はかんたん。土鍋に豆腐を入れ、周囲に汚れを落とした(水では洗わない)スギタケを詰め、少量の醤油をかけまわす。あとはとろ火に10分ほどかければいい。「酒や砂糖などの調味料は一切入れない」のがケンちゃんのレシピだ。

 豆腐とスギタケの水分だけでほどよく煮える。杉のヤニ臭さが少し感じられるが、ナメコに似たヌメリと独特のうま味が豆腐に染みこんで絶品。それから三日目にこの原稿を書いているが、お腹をこわした兆候は、いまのところない。

サツマイモ袋栽培の収穫

 袋栽培のサツマイモを収穫した。つい先日までは、闘病中の山羊「らんまる」の好物なので、ぎりぎり枯れるまでは刈らずにおくつもりだったが、薬石効なく亡くなってしまった。植え付け後150日を過ぎていたし、初霜が降りそうな気配もあるが、なにより残念な気持ちに極まりをつけねばいけないので、きれいさっぱり刈り取ってしまおうと思った。

 もともと袋栽培は、ジャガイモ全滅をもたらした猿ども相手に考え付いたものだ。苗を植えこんだ袋の口元をしばり、たとえ苗を引っこ抜いても太った芋は取り出せないぞ、という猿害対策だったが、なんだか猿相手の「いやがらせ」にも似て面白い実験だった。

 こうして収穫までたどりついたのだから、猿害対策としては成功したのだろう。何度かあらわれた「離れ猿」に、収穫間際の落花生を収奪されてしまったが、すぐ近くのサツマイモは無事だった。
 ただし袋に手を出した気配はない。つまり口元を閉じた効果ではなく、袋そのものを警戒したためだろうと思われる。壊滅的な被害をもたらす「群れ」出現がなかったのが幸いだったのかもしれない。

 イモの出来はまずまずか。使用した土のう袋のうち、黒色・白色に出来栄えの差は見られなかったが、母屋の裏手より、山羊小屋横のほうが断然よかった。ひとえに日当たりの良し悪しによるものだろう。
 ちなみに普通の白い土のう袋は、紫外線劣化がはげしく、持っただけでビリビリと破けてしまった。黒い袋はやや高価だったが、耐候性があるため丈夫で、このぶんなら来年も使用できそうな感じだった。

 購入した苗は短かったので、いわゆる「縦挿し」で植え込んだ。そのためイモは2本程度しか出来なかった。大きな苗の「船底挿し」なら数が多くなるようだが、あまり太らないらしい。
 また横に植えるため口元を閉じにくいし、根が袋に触りやすく、袋を突き破って成長してしまう。その意味でも袋栽培には「縦挿し」がいいようだ。
 さほどの収穫量ではないけど、夫婦二人だけだからこれで十分。

 抜けるような青空。色づきはじめた枯れ葉。あざやかなベニアズマ。そんな秋の三色をたのしんだけど、空き家になった山羊小屋がひどく寂しそうに見えてしかたがない。

ニンニク・スプラウト料理

 先日掲載したニンニクのスプラウト(水耕栽培)を料理してみた。それにしても発芽の速さにはチョットびっくり。水に浸した翌日には、早くも無精ひげみたいな根が出始めて、5日目にはこの大きさまで成長する。
 料理するにはあまり大きくしないほうがよさそうなので、一週間をめどに収穫したほうがいいかもしれない。

 成長スピードは、むろん気温にも影響されると思われる。あるいは品種も関係あるのか、使用したのは中国産の種ニンニクだ。地植えした畑を確かめたところ、手前の福地ホワイト六片の芽生えはまだまだだが、奥に見えている中国産は芽生えが早く、植え付け2週間余りでここまで生え揃っている。

 中国産種ニンニクは、国産に比べて価格が四分の一と格安なのだが、鱗片が小さく、栽培しても大きく育たない。しかもすぐに芽が出てしまって保存しにくい面があったが、スプラウトにすることで無駄なく使えるだろう。

 販売されていた袋には、天ぷらにすると美味と書いてある。まずは試してみることにした。スプラウトはざっと水洗いし、根もそのまま使う。また植え込むさいに薄皮をはいでおくが、残っていると舌触りがよくないので取り除く。

 あとは普通の野菜天ぷらと同じように揚げた。市販の天ぷら粉を使用するなど、かなり手抜きだったが、けっこう美味しく頂けた。ニンニク独特の辛味はまったくない。臭みもほとんど感じられず、ほのかな風味として残っているのが好ましい。

 じつは二度料理したが、一度目は白身魚をイギリス風に揚げたさいの衣(天ぷら粉にベーキングパウダーを加えた)を使用したせいか、ぜんたいにサクサクして、とくに根の部分の食感が面白かった。どうやらこの方法がよいかもしれない。

 馴染みの少ない食品だけに、ネット情報もあまりないのだが、以前栽培していた葉ニンニクを思い出し、同じように「ぬた和え」にしてみた。
 調理法というほどのこともない。鍋に湯をわかして塩を一つまみ加え、スプラウトの葉先をもって根元のほうから入れて茹でる。20秒ほどしたら全体を落として、さらに20秒ほどゆであげ、そのまま冷ます。早く冷まそうと水に浸すと風味が飛んでしまう。

 あとはミソ2、酢1、砂糖1の割合で酢みそをつくり、盛ったスプラウトにかけまわして食した。あっさりした風味は、とてもニンニクとは思えない。根元の茹で具合を少なくして、こりっとした食感を残すのもいいかもしれない。