挿し芽いろいろ

 基本的にケチ、加えてせっかちだと自覚している。挿し芽(挿し木)好きの大もとは、そうした性格が影響しているにちがいない。
 とにかく芽を挿すのだから、自家採種とおなじく費用はかからず、発根に多少時間がかかるといっても播種、発芽と比べたら大幅に短いし、苗を世話するような苦労はない。なにしろ発根さえしてしまえば、もう一人前の植物なのだから手間いらずなのがよい。

 毎年やっているのがトマトの脇芽挿し。成長を阻害する脇芽をつんでしまうのが、トマト栽培のコツのひとつだが、その芽を発根させて利用するのだから一石二鳥。とくに実となる花芽のすぐ下の脇芽は、成長が活発で発根しやすい。

 10㎝ほどになった脇芽を取り除き、水を吸いやすいよう斜めに切り、水あるいはバーミキュライト、またはパーライトを入れた容器に挿しておく。ときおり水を足し、あるいは入れ替えてやれば2~3週間ほどで発根する。あとはふつうの苗と同じように土に植え替えればよい。
 そうして発根させたトマト苗は、当然のように一か月ほど遅れての収穫になるが、家庭菜園ではいちどきに収穫するより、ほどほどの量を長く収穫できるほうがありがたい。

 挿し芽・挿し木はほとんどの植物で可能らしい。たとえば今年の寒さで戸外に植えたローズマリーを枯らしてしまった。かろうじて残った小さな一本から枝を切り取り、挿し芽しておいたらひと月ほどで発根した。小さな元の一本も枝が増えたので、あと3本ほど挿し芽しておくつもりだ。

 エリゲロンもそうして増やしている。1~2㎝のちいさな花をいっぱいに咲かせ、しかも5月~10月までと花期が長いのがよい。また日当たりのよい乾燥気味の場所を好むのでヤギ小屋の屋上緑化に使ってみたのだが、冬季になっても繁茂した枯れた茎がのこるため、土の流出止めに効果がありそうだった。

 とりあえず摘んだ芽を30鉢ほど挿し芽しておき、つい先日、発根したので屋上に植え込んだが、とてもとても足りそうもない。何度も書いた話だが、セルフビルド当初、屋根全体を覆ったクリーピング・タイムは、全部で600鉢が必要だった。そのすべてを挿し芽で増やしたわけで、だいぶ繁茂してきたので蒸れ予防に刈りこむさいには、2~300鉢ほど挿し芽しておこうと考えている。

 いま一つ、放牧場を覆っているセンチピート芝の挿し芽をテストしてみた。この芝は、丈夫で病気にかかり難く、ヤギなどの牧草としても利用できる。しかし種はキロ当たり1万5千円とかなり高価で、しかも発芽がむずかしく、1~2か月も要するうえ、幼苗のころは雑草の陰になると枯れやすいという欠点がある。

 同芝は、地上を這うようにのびるランナー(匍匐茎)で増えてゆく。ならばランナーを挿し芽したら発根するのではないか。じじつランナーを観察すると、写真のように根をのばしたものがあるわけで、2~3節に切ったランナーを挿し芽してみた。
 たぶん梅雨明けごろには発根するのでは、と期待していたけど、平年より20日も早く梅雨が明けてしまった。まだ6月だというのに……。

追記 種苗法に登録された品種は、著作権のような権利によって保護されている。増やした苗を人に譲ったりすると「種苗法違反」となるようだから注意しなくちゃいけない。

袋栽培・ひとつの実験

 猿襲来のジャガイモ畑のあまりの惨状に、おもわずパチンコなんぞをポチってしまったけど、これで追い払ったって一時しのぎに決まっている。猿が相手じゃ仕方がないと、栽培をあきらめるのは簡単だが、ここで引き下がるのも癪な話。いろいろ考えめぐらしたあげく、ちょっとばかり面白い方法にたどりついた。

 山羊小屋の屋上緑化を考えていたとき、サツマイモの袋栽培という方法を知った。いわゆるコンクリート製のビル屋上でも緑化ができるわけだが、方法がやたら単純ながら、緑化効果もありそうだった。しかし、いかにも直接的で面白みに欠け、スタイリッシュじゃないな、などとガラにもなくおもって却下。じっさいには苦労して土を運びあげ、乾燥に強いクリーピングタイムを植えた。

 そうした経緯は、いま書きすすめている『つくる暮らし 家づくり編』で紹介するつもりだが、一度は却下した袋栽培を猿害対策に使ってみようか、ともくろんだわけだ。
 方法はひどく簡単。土のう袋に土を入れて、サツマイモ苗を植えるだけ。ちょうど時期だったので10本ほど購入して試してみることにした。

 この袋栽培は、都会のマンションでも可能なことから、ちょっとした人気になっているようだ。ウェブサイトをのぞいてみると、ガーデン用と称したおしゃれな栽培袋が売られていたが、もちろん価格の安い土のう袋でかまわないし、土のう袋ならではの理由もある。黒いものがよさそうにおもえたが、やや値段が高いのでふつうの白い袋でも試してみた。

 さて植えたあとがこの方法の特徴だ。目標達成なるかならぬかは、この一点にかかっている、とやたら大仰な言いざまだが、なに、たいした方法ではない。苗が顔を出した状態で袋を閉じてしまえばいい。土のう袋には、そのための紐がとおしてある。苗が活着してからでもかまわないが、サツマイモならほとんど根付いてくれるだろう。

 それにしても、ならべられた袋の口から、ちょこんと苗が顔を出しているのは、やや異常な光景。猿どももさぞびっくりするのではないか。いままで猿を観察したところでは、見慣れないもの、あるいは新しいものには手を出さない傾向がある。ずらり並んだ袋を警戒する可能性もあるようにおもう。

「でも、せっかく育ったところでひっこ抜かれてしまわないかしら」
 とは奥さんの感想だが、そうしたこともたぶんあるだろう、と想定している。しかし、たとえ育った苗を引っこ抜いても袋の口は閉じられている。中で育ったイモを取り出せないのである。

 猿どもにしたら、せっかく襲ってもイモにありつけない「意地悪な栽培」になるだろう。何度かそれを繰り返せば、そんな袋の畑には手を出さない、という「教育的指導栽培」にもなるんじゃないか、ともくろんでいるのだ。
 はてさてどうなるか。結果については続報をお約束しておこう。

おまけのトピックス
 ニンニクを収穫した。あいにく台風余波の雨にたたられ、三日ほど遅れたためすこし育ちすぎだった。ちなみに収穫したニンニク畑の跡地にも20本ほどの苗を植えてみた。袋栽培がいよいよ大成功しそうな予感がしている。

煙突掃除

 この時期にすませておきたいのが煙突掃除だ。溜まった煤が湿気を帯びると固まりやすく、煙突内にこびりついてしまう。そうなると掃除ブラシを通しただけでは容易に落ちず、固着して炭化すれば、ときには煙道火災の原因となる。

 梅雨入り前のひと仕事だが、一昨年、煙突を交換したのを機に、専門家に依頼することにしている。20数年間やってきた作業で慣れてはいるけど、あたらしい煙突用の掃除ブラシがかなり高額だったので、いっそ頼もうということになった。なにしろ半年後には後期高齢者だから、屋根に上るのはそろそろ遠慮しようか、という考えもある。

 昨年の掃除では、煤の付着が思いのほか少なかった……と作業してくれた専門家もおどろいていたが、20年燃やしてきた当方にすれば、例年と変わらない煤の量に、まあ、こんなものだろう、というのが感想だった。

 煙とともに上昇する煤は、煙突の曲がり部分に溜まりやすく、また外気で冷やされたところで付着する。そこで断熱二重煙突が効果的ということになるが、それよりなにより燃やす薪の乾燥具合が大きく影響する。

 秋が深まってからの「薪割り」は、いわゆる冬支度の光景なのだろうが、割ったばかりの薪を燃やすようでは、煤の大量付着を覚悟せねばならない。少なくとも水気の少ない冬に伐り出した原木を春先に割り、梅雨前に軒下に積みあげておきたいが、わが家ではさらに一年間寝かせてから燃やすようにしている。煤の少なさは、一にも二にも薪の乾き具合、と考えてよいだろう。

 ストーブに接続する曲がり部分を外す。この部分は単管のため冷えやすく、煤の付着が多いところだ。また空気量を調節するダンパーもついているのでより多くなるだろう。
 新煙突になって燃え方が非常によくなり、火力調節にダンパーを最大に絞って燃やすことが多くなった。となれば煤量が増加するはずだが、袋に溜まった量はこの程度。毎日20時間近く燃やしてこの量ならよしとすべきであろう。

 屋根上のトップも点検する。じつは昨年は、あまりの煤の少なさに省略しているから、二年ぶりの点検だが、ほとんど付着はなかった。そんなこんなで約1時間の作業であっさり終了した。ただ見学していただけだけど、やはり上ってしまった屋根の上は、やたらと気持がいいものだった。

おまけのトピックス。
 ついでに撮影した集落のパノラマ全景。

薪の原木入手

 お隣さんが背後林を伐採した。ほとんどが杉だが、一本だけ広葉樹が混じっている。
「雑木あるけど、薪にするかい?」
「え? 薪? 使わないの?」
「んにゃ、栗だから……」
「あ、なるほど……。もちろんいただきます」
 と話は即座に決した。薪仲間というべきお隣さんだが、パチパチとよく爆ぜる栗の木は薪にしない。囲炉裏を使っているため火の粉が飛ぶのを嫌うからだ。

 栗の木は導管(根から水を吸いあげる管)が太く、乾燥させると水がぬけて空気がはいりこみ、燃やしたさい膨張して弾けて火花を飛ばす欠点がある。また空気を多くふくむため持った感じが軽く、ナラなどに比べると火持ちにやや劣るが、火力はそこそこあり、あんがい乾きやすいという利点もある。

 そうした栗の木の特徴だが、むろん薪ストーブで燃やすぶんにはまったく問題はない。ちなみにケヤキも囲炉裏の薪にはしないようだ。燃やしたさいの煙がよくないらしく、眼を痛めてしまうという話も聞いた。

 ケヤキの葉にはわずかながら塩分がふくまれ、囲炉裏やたき火のような低い温度で燃やすとダイオキシンを発生させるようで、並木の落ち葉が大量に持ち込まれる都会の焼却場でのダイオキシン発生が問題になったことがある。あるいはこれが眼によくない原因なのかもしれないが、塩化ビニールを燃やすのに比べると、非常に少ない量であるから、たき火やストーブで燃やしても心配はないらしい。

 ともあれ、これで今年の薪入手はすんだわけだが、わが家まで運んでくれたグラップルローダー(林業運搬車)では積みきれない太い原木があり、とりあえず空き地までは搬出しておくとのことだった。つまり細かく切断して運べというわけだ。

 たしかに太い。わが家のバックフォーのつかみ装置ではくわえきれず、ベルトで運びあげるにしても重すぎる。アームでは持ち上げきれず、排土板を作動させれてようやく持ち上げたものの、軽トラックに乗せるのは考えものだ。以前、薪を積みすぎてタイヤを破裂させた経験がある。

 となれば切断するしかない。わが家で一番大きなチェンソー(ハスクバーナ372)を持ち出したが、なにしろ直径1メートル以上もある。60センチのバーでも届かないので前後から刃を入れる。ただし伐採したばかりだから、水分が多くてやわらかなので作業はあんがい楽だった。

 二つに切り飛ばしたが、太すぎてベルトが回りきらない。さらに縦切りしてようやく軽トラに積み込んだけど、椅子の座板にちょうどいい大きさになった。いっそ製材して板にしてもいいけど、乾燥させて使うとなると3年先か、などと考えているところだ。

金継ぎ

 前々から一度はやってみたいと思っていたけど、何とはなしに機会を失っていた。大体、陶磁器などは忙しいときにかぎって割ってしまうものだろう。気が急いて手もとがおろそかになったりするのが原因だが、そんな状態では七面倒な細工ごとは考えたくもないわけで、やったことのない「金継ぎ」などには手が出ないということになる。

 第一、わざわざ直してみたくなるような高価な器は所蔵していない。加えてあまりに手ひどく割れたりすると、あきらめが先に立ってしまい、そのまま廃棄ということになっていたのだろう。
 つい先日、普段使いの皿が割れてしまった。益子焼の安手物だが、二枚セットだったので、夫婦の食卓に便利に使われていた。しかし、バッカリ割れた具合がほどよく、破片の紛失もない。いかにも「金継ぎ」向きのように思われた。

 ネット情報を調べると、思いのほか盛り沢山で、ちょっとした人気らしいことがわかる。くわしい方法はそれを調べてもらうほうが早いのだが、そうした情報のほとんどは、破片の接着に「うるし」を使うようだった。が、それでは弱いようにも思われ、いっそ2液性のエポキシ樹脂のほうがより強固に接着するのではと考えた。

 断面にエポキシ樹脂をぬり、ずれないように接着する。乾くまでテープなどで固定したほうがより安全だろう。一晩放置して、しっかり固まったら、はみ出した樹脂をカッターなどで削りおとす。さらに耐水ペーパーを使い、指でさわって段差が感じられなくなるまで丁寧に磨く。

 割れ目に沿って細筆で「うるし」をぬり、それが乾かないうちに「金粉」をふりかけて定着させる。いわゆる「蒔絵」の技法ということになる。

 ちなみに義父の遺品に「新うるしの金粉セット」が残っていた。釣り好きだったから浮子などを手作りしたらしく、かれこれ15年以上前のものだが、むろん変質の心配はない。ただし、残されたセットでは「透明うるし」に金粉を混ぜこむように書かれている。

 ところが調べたネット情報の多くが「黒うるし」を使用している。その理由は定かではないが、あるいは背景が黒いほうが、金粉がより輝くのかもしれない。そこで情報どおりに黒うるしを塗り、太い筆に金粉をまぶして蒔き、よく乾かしてから余分な金粉をぬぐい落した。
 仕上がりは、まあ、「素人なり」だが、普段使いには問題はないだろう。

 ……と思われたが、何度か使い、洗剤で洗っているうちに金粉がはげ落ちてしまった。使用した「新うるし」は乾きやすいから十分接着しなかったか。あるいは「透明うるし」に金粉を混ぜこむ方式のほうがよかったのかもしれない。

春の事始め

 事始めという行事がある。正月行事を始めたり、農作業始めに田の神様をお祀りしたりと目的に合わせ、それぞれ12月8日や2月8日に行うところが多い。そこから「事八日」(ことようか)などと呼ばれているのだろうが、なぜその日なのかはわからない。
 わが家の「事始め」は3月に入ってからか。寒さに縮こまった冬眠状態にも飽き飽きして、手はじめにパソコンの「やよい会計」を起動させて確定申告を済ませたりする。

 農作業もはじめたいが、まだまだ畑は凍りついたままだから、やれることは少ない。いつも遅れ気味になるジャガイモ植え付けは、何度か雨降りがなければ耕すこともできない。ヤギ糞堆肥づくりをはじめてもよいのだが、ちょっと体慣らしの必要がありそうなので、ならばとニンニク畑での追肥作業からはじめた。

 昨秋に植え込んだニンニクは、タマネギ用マルチを使って1条空けにしてある。空いた穴が追肥用で、粒状の化学肥料を一つまみずつ投入したが、とくに土を混ぜたり乗せたりもせず、雨によって染みこませればよいことにした。

 そんな簡単作業の合間に思いついたのだが、保存してあった生ニンニクのほとんどに芽が出てしまっている。そのままでは使えないが、いっそ「葉ニンニク」にしてしまえば利用できるのではないか。葉ニンニクなど食べたことはないし、どんな料理にすればよいかもわからないが、大きく育ってから調べればいいだろう。

 かなり芽が出てしまっている。そのまま植えても育つかもしれないが、やはり一片ずつにほぐすことにした。鱗片はフカフカとやわらかになって扱いにくいし、せっかくの芽を折ってしまえば育たない、とあんがい苦労してほぐし、元肥もほどこさずに適当にならべて植え込んだ。はたして育つかはわからない、ダメ元の作業だった。

 話はころりと変わるが、どうしたことか奥さんが「現代農業」を購読しはじめている。ヤギ飼いで忙しく、土いじりなど一切しないはずだが、どうやら出版社の営業マンが読者宅を一軒一軒訪問しているのを意気に感じて決めたらしい。それにしても読んでるふうには全然見えない。はてさて、その目的は……とやたらいぶかしく思っているところだ。

芽キャベツの残念

 今冬の楽しみがひとつ消滅する。今年のニューカマーとして「芽キャベツ」を植え、1月中頃の収穫予定、と昨秋に紹介したが、やたら生長が遅れていて、この分では収穫までたどり着けそうもない。

 苗を購入したのは、たしか10月に入ってからだ。初めての栽培だけにネット情報を頼りにすすめていたが、11月の記事掲載時でも成長が遅れ気味のような感じだった。そこで追肥などを処置したが、とうとう遅れを取りもどせずじまいになってしまったのだ。

 どうやら日当たりが悪いと結球不足になり易いようだし、水分不足や肥料切れもいけないらしい。あるいはデッキでの鉢植えでは無理なのか、とも考えたが、件のネット情報によればプランターでの栽培も十分可能とある。
 もっとも畑に地植えしていたら、この大雪に埋まっていたろうから、収穫不能ということでは同じ結果になっていたにちがいない。

 結局のところ日光のような寒冷地では、温かいうちに十分生長させておく必要があるのだろう。再度挑戦するかはまだ決めていないが、早々8月ごろには種をまき、11月には茎の太さ3センチになるようにするつもりだ。

 試しにスーパーマーケットで購入した「芽キャベツ」と比べてみる。その小ささに笑ってしまうが、予告したように自家製サトイモと一緒にホワイトシチューにしてみたけど、こんなに小さいと探すのは無理だろう。

 サトイモは小さめを選んだので出来上がりはわるくなかったが、芽キャベツの味は「可もなし不可もなし」といったところだろう。いわゆる「彩り野菜」の範疇に入るのかもしれないが、そのわりには仕上がり色がよくない。

 そう言えば、軽く塩ゆでした「芽キャベツ」をシチューに紛れこませてしまえば、もっと鮮やかな緑色で撮影できたな、とカメラマンのころ盛んに使った技法をちょっと思い出した。流行りの言葉で言えば「フェイク・テクニック」ということになるだろうか。

燻製レシピ・鶏のささみ

 先日、ショルダーハムを燻したさい、前々から気になっていた「鶏ささみの燻製」を一緒につくってみた。WEBで拝見したもので、ひょっとしたらブログ主宰者(GRI氏)のオリジナル・レシピかもしれないけど、料理レシピの著作権は気にしないでよいらしいので、少し変更して掲載してみる。のちほど当該ブログにはコメントを入れておくつもりだ。

鶏ささみ 15本の漬け込み液
酒50㏄  みりん50㏄  しょう油100㏄  三温糖大さじ1  味噌大さじ1
ニンニク・しょうがのすりおろし各小さじ1  唐辛子みそ少々(後述)

 例によってささみはフォークなどで肉刺しておき、漬け込み液ごとビニール袋に入れ、冷蔵庫で一昼夜ほど味付けする。

 さっと水洗いする程度に塩抜きし、水気をよく拭き取ったあとピチットシートで包み込み、ふたたび冷蔵庫で一晩乾燥させる。

 魚焼き用の鉄串に刺してスモークする。ショルダーハムと同じく60℃ほどの燻煙だが2時間で切り上げた。
 仕上げにレシピどおり日本酒をスプレーする。よい艶に仕上がった。

 ちなみにウイスキー樽を利用したスモーカーでは、チップは使わず、炭火を熾したコンロに桜の薪を直接のせるという適当な方法。あまりに炭火が強いと、薪が燃えあがって温度が上がりすぎるため、そのあたりの加減がむずかしい。

 そうしたわけで、GRI氏のような微妙な温度管理は不可能。そこで生っぽさを避けるため、ショルダーハムと同じくボイルすることにした。ただし直接湯に入れず、ビニール袋ごしの湯煎状態にして、64~65℃で3時間。

 結果、味は上々だったが、少し熱が入り過ぎた感じがする。つぎは1時間程度の湯煎にしてみるつもりだ。

 ところで漬け込み液に入れた「からしみそ」は、鬼怒川温泉にむかう国道121号と船生街道(県道77号)の丁字路にある「とびこみ屋」さんの手づくり品だ。
 三角巾で頭をつつんだお姉さんがキリキリ働いていて、かつ丼をかかえこんだ隣テーブルのお客が「よう」と目顔であいさつ。よくよくみたらフーテンの寅さんそっくり、といった雰囲気がする定食屋さんです。

 唐辛子の辛さばかりではなく、うまみも含まれた複雑な味が気に入り、うどんに入れたり、マーボ豆腐に使ったりと重宝している。もう残り少ないので近々買いに行くことになりそうだ。

燻製とハチミツ

 ショルダーハムづくりにハチミツを使ってみた。私の乾塩法レシピでは、肉の3%の岩塩、その半分の三温糖に、その他のスパイス類を混ぜ合わせて10日間漬け込む。この砂糖の代わりにお隣からいただいたハチミツを使ったのだが、ことのほか仕上がりがよく、どうやら鉄板レシピになりそうな感じがしている。

 ハチミツの上品な甘みは塩分をやわらげ、しかも抜群の殺菌力がある。高い糖分によって腐敗菌などが繁殖できず、理論上は腐らないとされ、たとえば古代エジプトの墳墓から発掘されたハチミツの品質にほとんど変化はみられなかった。そうした性質は、10日間もの長い熟成期間への衛生管理にきわめて有用だろう。
 しかしいくぶんかの懸念もあるのだ。

 たとえばハチミツ使用の離乳食で乳幼児が死亡したことがある。有名な料理レシピサイトが紹介したため大騒ぎになったが、原因は乳幼児ボツリヌス症だった。
 自然物であるハチミツにはボツリヌス菌の芽胞が入ることがあり、乳幼児の腸内で菌が繁殖して食中毒を発症する。芽胞状態のボツリヌス菌は無毒だが、嫌気性菌であるため酸素のない腸内では活動を開始する。多くは大腸菌などの腸内菌によって退治されてしまうのだが、乳幼児は腸内菌が未発達であるため、ボツリヌス中毒を起こしてしまうわけで、ここにくわしく説明されている。

 また前述リンクによれば、そもそも「ボツリヌス」とは、ラテン語のbotulus(腸詰め)が語源らしい。ヨーロッパではハムやソーセージが中毒の原因になることが多かったところからの命名のようで、そこで中毒を防止する防腐剤として硝酸塩(硝石・硝酸カリウム)が添加されるようになった。

 この硝酸塩には、発色効果や臭み消しの効果もあるので、市販のハム・ソーセージにはほとんど添加されている。しかし摂取すると体内で亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウム)に変化し、タンパク質にふくまれるアミンと反応して発がん性が高いニトロアミンが生成されることがわかってきた。となるとやはり問題だろう。

 がんの発症までには多量の摂取が必要のようだが、わざわざ発がん物質を口にすることもない。しかしながらボツリヌス中毒も怖いわけで、どちらを選ぶかはひどく厄介な問題になってくる。
 じつを言うと、中毒防止に硝酸カリウムや亜硝酸ナトリウムを使用すべく、かなり以前に入手してあるが、いまだに使用を躊躇しているのだ。

 ところでボツリヌス菌は嫌気性菌であるという。酸素が遮断された状態、つまり腸などにケーシングされたソーセージやハムに発生するわけで、密封されていないベーコンはどうなのだろうか。あるいは挽き肉を詰めるのではなく、塊肉のままのハムであればケーシングの必要がなく、ならばボツリヌス中毒を防げるのではないか。……などとも推論するが、これをはっきり証明する研究にはお目にかかったことがない。

 また硝酸塩は自然界にも存在する。たとえば海水塩とちがい、岩塩には微量の硝酸塩が含まれるようだし、たとえばチリ硝石が産出するチリ産岩塩には多く含まれているらしい。わが家で使用している豪州産岩塩にはどれほど含有されているのだろうか。

 野菜にも微量ながら硝酸塩が含まれ、これを利用した食肉加工時の発色剤も研究されているようで、この方法にはハチミツの糖分をも発色剤として併用利用する、とも書かれている。
 そんなこんなを調べた結果、ハチミツの有効性は十分あるように考えられるので、いましばらくは隣家産のハチミツ使用をつづけてみよう、と考えているところなのだ。

ショルダーハム・レシピ変更

 年明けになっての初燻製を行った。正月料理の用意をするとき、一緒に漬け込みをする関係でちょうどこのころ燻煙作業になるのだろう。去年の記事をのぞいてみると、同じくショルダーハムをつくっていた。

 安価な輸入肉の肩ロース約2.5㎏を半分にする。脂肪の少ないほうを低温調理でチャーシューに使い、残りを燻製した。例年より量が少ないが、いくつか試してみたいことがあるためで、結果がよければもう一度つくるつもりだ。

●テスト① 漬け込みは乾塩法で行ない、岩塩に混ぜる三温糖をハチミツに変えてみた。以前、高知のログビルダーが、手造りベーコンにメープルシロップを使っていたのを思い出し、そこでハチミツではどうか、とテストすることにした。

●テスト② ネット情報を参考に、タマネギとともにリンゴのスライスを漬け込んでみた。たまたま冷蔵庫に入っていたので……。

●テスト③ 熟成は10日間、1時間おきに水を取り替えて溜め水で脱塩する。この時間を5時間から8時間に増やした。ちなみに肉は金網の上に置き、解けだした塩分が下に溜まるようにした。

●テスト④ 燻煙はいつものように60℃で6時間。70℃2時間のボイルを、低温調理の結果がよかったので64~65℃で3時間に変更した。また茹でるさい、肉を直接湯に入れず、ビニール袋に入れて湯煎状態にした。

 結果は上々だった。塩抜け具合もちょうどよかったし、味もわるくなかった。やはり「塩抜き」が味の決め手になるようだ。そして肉色がすばらしいのは、ボイル方法の変更だろうと思われる。
 リンゴの効果はよくわからない。ハチミツについては、いくつか思いあたるのでさらに調べてからの報告としたい。とりあえず、ショルダーハムのレシピは下記のように変更する。

※肩ロース 1㎏あたりのレシピ
岩塩    30g
ハチミツ  大さじ2(または三温糖15g)
黒コショウ、オールスパイス、セージ、ローレル 各2g
リンゴ、タマネギ   適宜
※冷蔵庫で熟成10日間 溜め水脱塩8時間、燻煙60℃6時間、ボイル64~65℃3時間

 ついでながら肉のしばり方はこんな感じ。