ヘアリーベッチの成長ぶりが勢いを増している。昨年の晩秋に播種したが、あまり発芽率がよくなかったのは、11月ごろとやや時期遅れだったためか、あるいは蒔いただけで覆土しなかったせいだったか。前年にくらべて冬の成長度合いがわるかったが、ここにきて一気に繁茂しはじめた。
ヘアリーベッチの栽培は2度目になる。昨年は春先に刈り取り、耕運機ですき込んだ。いわゆる緑肥として利用したわけで、この方法が一般的らしい。
とくに根に蓄えられた根粒菌の肥料効果を期待したものだが、効果のほどはよくわからなかった。家庭菜園ほどの規模では、厳密には調べられないからだが、ただし雑草の繁殖抑制はかなりの効果を発揮した。ヘアリーベッチ栽培のメリットの一つでもある。
この雑草抑制は、ヘアリーベッチによるアロレパシーのようだが、いろいろ調べてみると、雑草の種の発芽を抑えることで繁茂を抑制しているようである。その一方で、カボチャなどの作物との混植を試した例がある。
そこで思いついた。ひょっとしたら発芽は抑制しても生長は抑制しないのかも知れない。
この推測はかなり面白い。試してみる価値はありそうだ、と例によっての実験癖が頭をもたげ、今年は「ヘアリーベッチ+叢生栽培」を試すことにした。
叢生(そうせい)栽培とは、叢(草むら)の状態のまま作物を栽培する方法。字がむずかし過ぎるためか、最近では「草生栽培」と表わしたりするが、要するにヘアリーベッチなどを生やしたまま作物を植え込んでしまう方法だ。
ただし単に「種まき」しても、ヘアリーベッチに発芽を抑制されてしまう恐れがあり、ある程度生長させた苗を定植する。そのため幾種類かをポットでの栽培をすすめているが、まだまだ植え替えるまでには育っていない。あとひと月ほど待たねばならないだろう。
そこでズッキーニ、レタス、地這えキュウリ、ピーマンの四種の苗を購入した。待ち切れない気分もあるが、とりあえず苗を定植し、生長ぶりを確かめてみるのもわるくない。一種の先行実験ということになり、もし結果がよくなければ、前回のように刈り取ってすき込んでしまえばいいだろう。
目論見どおりなら、ヘアリーベッチの雑草抑制、根粒菌による肥料効果があり、そのほか草むら状態にすることで害虫の天敵を呼び込むメリットも期待している。
そしていま一つ、密かに期待しているのが「猿対策」だ。いろいろ観察してみるに、どうも猿どもは「畑」状態を狙うようである。整然と植えられていたり、あるいは黒マルチを施した畑ほどよく狙われような気配がある。彼らにとっての「獲物」は、そうした状態で集中的に育てられているからだ。
あるいは草むら状態で「獲物」を育てれば、彼らは気づかないかもしれない、などと推測した結果でもある。じっさい植え込んだ苗がどこにあるか分からず、かなりな「目くらまし効果」を発揮している。なんだか能天気すぎる気もしないではないけど、あんがいな結果が出るかもしれない、と楽しみにしている。