事始めという行事がある。正月行事を始めたり、農作業始めに田の神様をお祀りしたりと目的に合わせ、それぞれ12月8日や2月8日に行うところが多い。そこから「事八日」(ことようか)などと呼ばれているのだろうが、なぜその日なのかはわからない。
わが家の「事始め」は3月に入ってからか。寒さに縮こまった冬眠状態にも飽き飽きして、手はじめにパソコンの「やよい会計」を起動させて確定申告を済ませたりする。
農作業もはじめたいが、まだまだ畑は凍りついたままだから、やれることは少ない。いつも遅れ気味になるジャガイモ植え付けは、何度か雨降りがなければ耕すこともできない。ヤギ糞堆肥づくりをはじめてもよいのだが、ちょっと体慣らしの必要がありそうなので、ならばとニンニク畑での追肥作業からはじめた。
昨秋に植え込んだニンニクは、タマネギ用マルチを使って1条空けにしてある。空いた穴が追肥用で、粒状の化学肥料を一つまみずつ投入したが、とくに土を混ぜたり乗せたりもせず、雨によって染みこませればよいことにした。
そんな簡単作業の合間に思いついたのだが、保存してあった生ニンニクのほとんどに芽が出てしまっている。そのままでは使えないが、いっそ「葉ニンニク」にしてしまえば利用できるのではないか。葉ニンニクなど食べたことはないし、どんな料理にすればよいかもわからないが、大きく育ってから調べればいいだろう。
かなり芽が出てしまっている。そのまま植えても育つかもしれないが、やはり一片ずつにほぐすことにした。鱗片はフカフカとやわらかになって扱いにくいし、せっかくの芽を折ってしまえば育たない、とあんがい苦労してほぐし、元肥もほどこさずに適当にならべて植え込んだ。はたして育つかはわからない、ダメ元の作業だった。
話はころりと変わるが、どうしたことか奥さんが「現代農業」を購読しはじめている。ヤギ飼いで忙しく、土いじりなど一切しないはずだが、どうやら出版社の営業マンが読者宅を一軒一軒訪問しているのを意気に感じて決めたらしい。それにしても読んでるふうには全然見えない。はてさて、その目的は……とやたらいぶかしく思っているところだ。