畝立て器を試す

 かれこれ二十年近くになるはずだが、アマチュア感覚がぬけきらない農作業だ。毎年の経験はまるで身につかず、加齢ばかりがまとわりついて、年々しんどい作業になるばかりで、5,60坪ほどの小さな畑をもてあましてしまう。

 春先、バックホーで掘り起こしたあと小さな耕運機で耕している。オークションで購入した中古機だが、キャブレターを掃除してから動作は快調。これでかなり楽になったが、畝づくりがうまくできない。
 ご近所さんのようにクワをうまく使いこなせないのが原因だろうか。土を盛り上げるのにスコップを使ったりするものだから、腰がすぐに痛くなり、そのあとのマルチ架けを考えるとうんざりしてくる。

 耕運機に取り付ける畝立て器なるものがあると知った。いわゆる土を寄せる培土器とはちがうようで、左右に土を押しやり、畝の高さに土を盛りあげてしまうらしい。やや自虐的タイトルのブログを拝見すると、所有機(ヤンマー製車軸ロータリー式)でも十分使えそうなので、とりあえずSタイプを購入。こうしたニッチなアイデア商品をみるとすぐにも試してみたくなる性格なのだ。

 耕運機後部にある尾輪と畝立て器と交換するだけだから、装着はごくごく簡単。ただし取り付け軸に差し込まれたクレビスピンとR型ピン(スナップピン)を引き抜いたさい、畑近くの草地で作業したため、うっかり落としたRピンを探すのにひどく苦労した。さっそく予備を手に入れることにする。

 二度ほど耕したあと、畝立て器を走らせた。回転するロータリーが耕しながら進むにつれて、V字にひろがった鉄板が土を左右に押しひろげてゆく。結果、深さ20センチほどの溝が出来、行って帰ってくれば畝が完成している仕組みだ。

 よく耕したせいか、重たい感じは全然なく、ごくごくゆっくり歩くほどのスピードで畝が立てられた。土の性質や乾きぐあいにもよるのだろうけど、シンプルな形状ながらそれなりの効果に感心し、その発案と工夫に苦労しただろうな、と思わせる商品だった。