クレーム……一件落着

 デッキ家具を計画していたころ、やはり電動のレシプロソーがあったほうが便利かしれない、とネットで探したことがあり、たまたまのぞいたAmazonページに出物があったので、ついついクリックしてしまった。

 プロ用ではないながら定評のあるブラック&デッカー社製で、定価の半値ほどに値引きされたAmazon価格の、そのまた半値以下の2500円ほどで売られていた。いわゆるマーケットプレイスの商品だったが、新品と明記され、中古品ではない。

 いかにも低価格すぎるし、配送予定に日数がかかるところから、たぶん中国大陸の販売元だろうと推測され、あるいは偽物をつかまされるかとも危惧した。しかしブラック&デッカー社の製品はすべて中国産であるから、横流し品または荷崩れ品の可能性もあるぞ、などと考えたりもする。

 言ってみれば、都合のよいほうに考えたがる世の常、人の常に背を押されてクリックしたわけだが、とりあえず品物が届くまでの一部始終のスクリーンショットを保存しておこう、と考えたのは、一抹の不安があったからであろう。

 不安は的中した。上記に示したように「配送状況」のスクリーンショットでは、順調に運ばれているかのように表示されているが、「お届け予定日」を過ぎても届かない。こうした場合には出品者に連絡するように、としたAmazonの指示に従うと、ほどなく出品者からの返信メールが届いた。

「ご迷惑をおかけします。アカウントを乗っ取られました。したがって詐欺のサイトです。発送もされてないと思われます。
アマゾンマーケットプレイス保証を申請してください」

 すぐさまAmazonページの「注文の詳細」にある「マーケットプレイス保証を申請」をクリックする。ほどなくAmazonから申請を受付けた旨のメールが届くのだが……、

 細かくて読みにくいが「Amazonのギフト券」なら2時間以内に返金されますよ、という意味に書かれている。
 いやいや、巧妙だ……と苦笑してしまうが、早いに越したことはないし、いずれ買い物があるだろうから損はないか、と考えれば大方の人がクリックする。そうしてAmazonの仕掛けにまんまとはまってしまうわけだ。

 かくてアカウントにカードで支払った金額が登録され、詐欺事件のクレーム処理の一件、ぶじに落着するわけだが、ふと思い出したことがある。

「クレームは必ず発生するけど、べつに困ったりしませんよ。それを速く処理すればするほど信用につながりますからね」

 とは、30数年前の仕事で取材したベテラン自動車セールスマンの言葉だが、それにしても電動レシプロソー、買い直すかを考えねばならない。