新型コロナで否応なくスタートした在宅勤務(テレワーク)だが、やってみたら案外簡単、しかも効率的。ひょっとしたらこのまま定着するかもしれない。
売文業になって30年、ずっと在宅勤務だから、そのメリットは先刻承知。日本人が頑固につづけてきた会社第一の暮らしが、新型コロナ禍をきっかけに変革するような気がする。
じっさい事務所需給や住宅不動産に変化があり、ホームオフィス用のワークチェアーが売れたりしているようだし、もちろんテレワークの中心になるパソコン業界も色めき立っているに違いない。
しかし画面が小さいスマホじゃ仕事にならないし、家に置いてあるラップトップ(死語?)なら多少増しだろうけど、本格的なテレワークとなると、やはりデスクトップの大型モニターのほうが使い勝手がいい。
などと考えると、死蔵状態の予備機も何かしら役立ちそうに思えるが、金属とプラスチックの黒々としたPCケースは、機能第一で堅苦しく、味も素っ気もありゃしない。せめてPCケースが木製なら、多少はやわらかな感じになるんだが……。
そんな思いから木製パソコンづくりがスタート。工程を順繰りに説明する前に、まずは完成品をご覧いただこうか。印象がガラリと変わって、けっこうオシャレに仕上がった。
●素材パソコンを分解する。
改造するのは、サブのそのまた予備機のHP製CompaqPRO 6300SFF。スリムタイプのビジネス機で、5年ほど前、数千円でオークション入手したあと、いまではほとんど使用していない廃棄寸前の機器。
改造後は、手持ちのATX電源(20+4ピン)に替えるつもりだったが、この機種の電源は6ピンタイプ。仕方なく専用電源をそのまま使用。さらには背面パネルが内側ケースと一体で外せないなど、レイアウト変更がむずかしいので、パーツ配置も変わらない。
①海外製のPCのほとんどは、マニュアル等がwebで公開されている。これを参考に前面パネル、電源、DVD、HDD、ファンなどのパーツ類を外す。コードの接続を忘れぬようデジカメ撮影をしておくが、この機種はプラグとマザーボード上のコンセントが色別になっているので間違いにくい。
②マザーボードは、二重になった内ケースにビス留めされており、CPUファンの取付けビスを外さないとボードは取り外せない。取り外したビスやパーツをボード上に落とさぬよう慎重に作業するが、前面USBとスイッチは、マザーとの接続コードを抜いただけで、内ケースに取り付けたままにしておく。
③すべてのパーツを外した状態。
④黒く塗装された外ケースと内ケースは、アルミ製のリベットで固定されている。4㎜のドリルでもめばすぐに壊れる。
⑤すべてのリベットを壊せば、内ケースがすんなり取り出せる。
⑥取り外したパーツ類。いずれも再び組上げするので慎重に保存。再使用しないのは右上の黒塗装された外ケースだけ。左上の黒プラスチックの前面パネルも要らない予定だが、ひょっとしたら使うかもしれない。
●パイロット版をつくる。
パイロットには「水先案内人」の意味がある。たとえば工場や機械の設計に先立ち、必要なデーターを収集するため試験的に「パイロットプラント」を組み立てたりする。
以前、ビデオ制作に携わったころ、1時間ものなどの長編の場合、5分ほどの短い「パイロット版」で反響を試した事もある。
木製のパソコンケースの場合も、完成したあとに組み立て、さらには修理、部品交換、機能拡張といった作業がある。そうした動きに影響がないか、あるいはケースの強度などを調べておくと万全だろう。
使い残りのファイバーボードで組んでみたが、材料はなんでも良い。使用する内ケースがすっぽり入る筐体(パーツ類を収める箱、あるいは外装)をつくり、あらかじめ考えた開口部でパーツが挿入できるか、動きや組み立てを想定して調べた。
はじめは強度の関係から、開口部の中央に柱材を入れるつもりだったが、作業や動きにやや影響した。いろいろ試した末、筐体と内ケースの隙間をしっかり埋めれば強度が保てるので、柱は筐体前面に移すことに決定。
●材料取り。
筐体のサイズを決めたあとは、いよいよ材料を荒取りする。例によって木材置き場から薪原木から挽いた板材を引っ張りだし、バンドソーで規定の厚さに仕上げる。
出来上がりが小さな物なので、ほとんど薪にしか見えない材料からも荒取れる。こんな感じだから木っ端や端材も捨てられないでいる。
ケース上下にはナラ材の一枚板を2枚。横はパネルに組上げるため、おなじくナラ材で枠をつくり、入れる鏡板は薄いケヤキを使った。
まずは材料をそろえた。組上げ作業は次回につづく。