世をあげてStay Home(家に居ろ)と騒がしいけど、かれこれ半世紀以上も居職生活をつづけていると、巣ごもり暮らしは日常でもある。家から出られないからと退屈することなどありゃしないし、春から初夏にかけての時期は菜園の世話でひどく忙しい。
その合間をぬって冷凍ホタテの貝柱をスモークした。お歳暮の残りなので、そうそう冷凍庫に入れっ放しというわけにもいかないし、ついでに新しい燻製レシピを試すことにした。
ホタテの燻製はすでに紹介してある。レシピの詳細はそちらを参照してもらいたいが、今回は同じレシピで「鶏のささ身」も一緒に仕上げてみようと思った。スモーク+オリーブオイル漬けというレシピと、あっさりした味の「鶏のささ身」の相性を確かめてみたい。
まずレシピ通りの塩・香辛料などを煮立ててソミュール液をつくっておく。それを冷ます間に「ささ身」の筋を取り、フォーク刺しをすませておき、冷凍ホタテは前夜に冷蔵庫に移し、さらに常温にもどしておく。
ボイルするさいにはパスタ用の穴あき鍋があると、いちどきに引き上げられて正確にボイル出来る。一つひとつ出しているようではボイル時間3分を厳守できない。引き上げたらすぐ冷水に晒し、余熱を取り除くのもポイント。
と……ここまで作業してようやく気がついた。湯温70℃をすっかり忘れてしまい、煮立った湯でボイルしている。大失敗だ。
だからと言ってここで断念するつもりは全然ない。茹で過ぎ状態でどんな味になるかを確かめるのもわるくない、と気を取り直して作業をすすめる。
水気をよく拭き取り、冷ましたソミュール液に漬け込む。少量なのでビニール袋を利用し、味が移らぬよう二つに分けて漬け込み、5時間ほど冷蔵庫に入れておく。
漬け込み後はさっと水洗いしてソミュール液を落とす。焼くなどして味見をしてもよく、もし塩味が強かったら水出しして調節する。
アルコール消毒するのがベストだが、いまは入手困難。清潔さに留意して省略してもいいだろう。水気をよく拭き取ったあとは、ピチットに挟んで冷蔵庫で一晩乾燥させる。つまり、この作業を夕方以降にやれるようタイムスケジュールを考えておくのがいい。
同時に半熟の味付け卵とチーズをスモークした。卵の味付けはラーメンつゆを使ったが、ウスターソースだけでも案外いける。チーズを切ってあるのは、表面積を多くしてスモーク味を強くするため。
いつものスモーカーに串に刺したり、網に乗せたりしてセットするが、スモーク前に常温にもどしておく。とくに卵やチーズは温まると水滴がついてしまい、仕上がりが酸っぱくなってしまう。
最下段のコンロで桜の木を豆炭で燻らせる。小さな木片だと燃え上がるので注意。65℃を超えないようにして3時間スモークした。
オリーブオイルに漬けて仕上げるが、ささ身はひと口サイズに切ってある。中心部に半生がのこってはいるが、やはり茹で過ぎであろうか、期待したしっとり感は得られなかった。いずれ湯温70℃でやり直すつもり。
しかし味そのものはわるくなく、晩酌の友に半月ほども付き合ってもらう予定。その期間、常温で保存できるのもオイル漬けのメリットだろう。もちろん食べ終えたオイルはパスタなどに使って無駄にはしない。
新型コロナによる異常事態宣言は、そろそろ取り下げられそうだが、都会での密集生活が解消したわけではない。田舎暮らしのメリット……をつくづく感じながらスモーク味を楽しんだ。