脚立とハチ駆除

 バスルームにアルミの脚立を持込んで掃除をはじめた。蒸し暑くてたまらん、と延ばし延ばしだったけど、このところ涼しくなって言い訳するのにも気が引ける。かれこれ5,6年ぶりの浴室掃除だから、そうそう手抜きというわけにもいかない。

 まず換気扇から取りかかった。カバーと羽根を外してみたら、案の定かなり汚れているが、これは下で待機している奥さんに洗剤で洗ってもらう。

 今日の眼目は、タイル目地と天井パネルを拭きあげること。とくに天井パネルは手が届きにくく、壁タイルとの隅やパネルの継ぎ目が黒ずんでいるのはカビが繁殖したためだ。これを徹底して拭き取ってしまわないと、カビの胞子が飛散して黒汚れの元になるらしい。

 この天井パネルは、母屋をセルフビルドしたさい自分で貼りつけている。あらかじめ組上げた下地材にサイズに切ったパネルを嵌めこみ、細いステンレス釘で固定。周囲に枠材を取付けたはずだが、なにしろ25年前だ。どんな作業だったか忘れてしまった。

 そんなことを思い出しながら、どうにかこうにか浴室掃除を終了させた。道具を片づけ、たたんだ脚立を元の置き場所にもどしたところで気がついた。
 ヤバイ、とばかり飛びのいてしまった。

 使わなかった奧の脚立に、なにやら塊がついている。もぞもぞと動くのはハチだ。小型ハチの種類のようだが、刺されたら大変。下手すれば命にもかかわる事態なのだ。

 これまでに二度ほど刺されたことがあり、その度に救急にかけこんで処置してもらった。いわゆるアレルギー体質によるアナフィラーキシー・ショックを起こすためで、
「ハチに刺されたら、すぐに救急車を呼んで下さい」
 と医師から告げられている身なのである。

 なにより刺されないことが大切だ。そのためにはハチの巣を早めに発見し、ハチを刺激しないこと。ハチに気がついたら無闇に動いたりするのは禁物だし、黒いものはハチの巣を狙うクマを連想させて襲撃してくると聞き、黒い帽子や黒色のTシャツは着ないようにしている。

 それなのに脚立を取りに行ったときには、すこしも気づかなかった。もし刺されでもしたら、と思うとぞっとする。
 そう言えば、前にも脚立にハチの巣がついていたことがある。軒下に置いたためかと思っていたが、今回は雨に濡れ放題の場所での巣づくりとなると、あるいはアルミとの相性があるのかもしれない。

 いずれにしろこのまま放置するわけにはいかない。かねて用意してあるハチ防護服を着込み、同じく常備してあるハチスプレーで駆除作業を行えば、とりあえずは一件落着だ。

 とくに毒性の強いスズメバチ被害が話題になるが、アナフィラーキシー・ショックは小型のハチでも起こりえる。秋になるとハチの巣が大きくなり、個体数も増加するので、より危険が増してくる時期だけに注意したい。

 じつはアナフィラーキシー防止のための治療薬「エピペン」も持っているが、すでに使用期限が切れている。あらためて医師に処方して貰わないと入手できないらしい。