そら豆の惨状

 数年前からそら豆を栽培している。秋に種蒔きをするという作業自体、素人農業者にはほとんど馴染みのないものだったが、生食そら豆(ファーベ)に興味をひかれて栽培を試したのがはじまりだった。
 すべてネット情報頼りのヨチヨチ栽培だったが、まあまあの上首尾。それに気をよくして栽培をつづけてきたが、いわゆるビギナーズラックだったのかもしれない。

 農業にビギナーズラックがあるかどうか知らないけど、家庭菜園などをはじめた場合、初めてなのにあんがい上手くいっておどろいたりする。私のようなオッチョコチョイの性格だと「おれって天才?」と有頂天になったりするわけだが、二年、三年とつづけるうちに、だんだんと収穫が落ちてくる、という例が多いらしい。

 単に天候にめぐまれての幸運だったわけではなく、いろいろな原因が考えられるだろう。たとえば初年度はきっちりすすめた農作業も、慣れればついつい手抜きになったりするし、作物によっては連作障害が出たりもする。
 また耕作をつづければ、地味が痩せてくることもある。わが家の場合、土壌の肥料分を補うため、ヤギ堆肥を投入してきたが、畑全体をカバーするのには量が不足。と言って化学肥料ばかりに頼るのは不本意なので、昨秋には緑肥のヘアリーベッチを播種した。

 そうした事情から、秋蒔きのそら豆は、南斜面下のいつもの畑ではなく、母屋北側に定植することにした。寒風がまともに吹き付けて低温になりやすい場所だから、とトンネル仕立ての霜除けを入念にほどこしてみたけど、この程度では「冬越し」は無理だったらしい。

 不織布をひろげてみたときには本当にガッカリした。金メダル候補の白血病発病に、思わず「ガッカリ」と口走ってしまった五輪大臣は、おそらくこんな気持だったのだろう。
 苗の半数以上が枯死している。思ってもみない惨状だ。

 これまでも同じ不織布による霜除けで「冬越し」をしてきたし、ひと月近く雪に埋れてしまったときでも、これほどの枯死に見舞われたことはない。例年とちがうのはアブラムシ除けのシルバーマルチだが、これが関係したとは思えないので、やはり母屋の陰になっての日照不足が影響したのだろう。あるいは雪に埋れないため、寒さが直接作用したのかもしれない。いずれにしろ生かじりの知識がもろに裏目に出たわけだ。

 じつを言えば、冬の間に枯れそうな状況をみつけていた。あるいは春になれば脇芽がのびてくるかと期待したが、調べた結果、まったく無理のようである。結局、植えたファーベ12株のうち、生き残ったのは5株だけ。そのほか普通種10株中4株が残っているが、生育がいちじるしく遅れていて、はたして収穫にたどりつけるかどうか。

 ともあれ、こんな欠株だらけでは仕方がないので、生き残った株を慎重に移植し、いましばらくは、水やりや追肥、トンネルの開け閉めなどの手間を惜しまないことにする。

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