すき間家具

 つくろう、つくろうと思っているうちに年末になってしまった。別段、いつまでと決めていたわけではないが、極まりをつけておくほうが気持ちよく新年を迎えられるか、と手をつけることにした。

 風呂場の脱衣所に置いた洗濯機は、ログ壁との間に排水口があるのでピッタリつけられない。こうした空きスペースというのは、いつの間にか物が置かれて雑然としてしまうもので、「ちっとも片付かないわ」と前から奥さんに言われていたのだ。

 棚を造り付けるかとも考えたが、排水口のメンテナンスを考慮して、移動できるような棚家具……いわゆる「すき間家具」にすることにした。いろいろ考えているうちに、二段にする棚に金属メッシュを使用することを思いついた。これを取り外せるようにしておけば、簡単なメンテナンスなら移動せずに行えるだろう。

 金属メッシュは、ホームセンターで購入した既製品を使い、これに合わせてサイズを決めた。すき間にはめ込む家具なので、細い脚部にしても左右に動く心配はなく、木ネジ止めにしてもさほど見苦しくならないだろう、と例によってポケットホールジョイントを利用して簡単に組み上げる。

 なんだか最近は、こうした手抜き工法ばかりになっている。ついつい手早い完成を思うからだろうが、来年あたりは本格的な「ホゾ組み」で何かつくろうか、などと鬼に笑われそうなことを考えながら作業をすすめた。

 上板には、作業場の片隅に転がっていた適当なものを引っ張り出したが、それがアルダー材だったので少しおどろいた。四半世紀前の母屋建築時に格安材を大量購入し、内部造作や建具にさんざん使った残りだったからで、自動カンナで削り、ビスケットジョイントで張り合わせた。
 切削性のよさは折り紙付きだから、最後の手がんな作業もじつに簡単。ついでオイルで仕上げたが、いかにもアルダー材らしいおとなしい木目と色調を懐かしく感じた。

 脚部を組み上げたところで、スペースに仮置きしてみた。ログの出っ張りが一様じゃないので心配だったからだが、案の定、一番下の太くなったログが邪魔をしている。排水ホースの関係で広げられないので、ログを削るしかないが、このあたりが平面になっていないログ壁の欠点だろう。もっとも10mmほど削ったところで、強度その他にまったく影響がないのもログの特徴ということになる。

 ちなみに床に開いているスリットは、OMソーラーの床暖気の吹き出し口。寒さがきびしくなる今ごろには、とても頼りになる暖房装置だ。

 こんな感じに完成・設置したわけだが、奥さんがしみじみと言った。
「あら、やっとね。洗濯機買った10年前にもつくるって言っていたわね。やっと出来てよかったわ」
「ウム」
 と黙ってうなずくしかない。つまりは10年越しの極まりをつけたということらしい。