冬のデッキファーム

 一階居室の南面にしつらえたデッキは、外から見るとほとんど二階のように見える。建物自体が斜面に建てられているためで、さらに低い駐車場からだと5メートルもの高さになってしまい、玄関までの登りが少々しんどくなってきたけど、それとは別の話をしたい。

 これだけ高さがあると、眺めがよいのはもちろん、風が気持ちよく吹きぬける。そのせいか虫が寄り付かないので、大きめのポットをならべて植え付けたハーブや野菜は、まったくの無農薬で栽培できている。

 2年前に屋根を架けたので、デッキ床の張り替えや雪かきの必要がなくなったが、そのぶん水やりの手間が増えた。むろん陽ざしも入りにくくなるので夏野菜はミニトマト中心にしているが、低い冬陽になったいまは、朝食用のサンドイッチによく使うサニーレタスや、パセリやローズマリーのキッチンハーブを育てるにちょうどいい。

 種まきしたサニーレタスは、まだ芽吹いたばかりだが、あとひと月ほど後には食卓にのせたい。そのためには透明な育苗ドームで寒さ除けをしたほうがいいかもしれない。

 10月の末ごろだったか、ホームセンターで売れ残りの苗を買った。たしか一株20円だったので、ま、いいか、と思ったわけだが、そのスティックカリフラワーなんぞは、育てたことはもちろん食べたこともない。
「いやぁね、前に料理したことあるわよ」
 と奥さんに言われてしまったけどまるで覚えていない。

 だいたいカリフラワーやブロッコリーの、あのモソモソした食感が好みじゃないので、たぶん手を付けなかったのだろう。よしんば食べたとしても、わざわざ記憶にのこすほどのものではないのだ。

 そうした好みでもない苗を買ったのは、ひとえに安かったからで、いつものわるい癖が頭をもたげてしまったわけだ。売れ残りの枯れかかった苗だったが、大型ポットに自家製堆肥をほどこして植え付け、枯れない程度に水やりをつづけた。

 その甲斐あってか、害虫被害にもあわずによく育ち、葉の真ん中に花蕾(からい)らしきがふくらんできた。これを頂花蕾(ちょうからい)と呼ぶようで、大きく育てて茎ごと収穫すると添付ラベルに書いてある。採り遅れて蕾(つぼみ)がゆるんでしまうと、花が咲いて味がわるくなるらしい。

 かるく塩ゆでして海苔入りマヨネーズ・ソースで食した。花蕾のモソモソ感は多少のこっているが、茎部の歯ごたえはわるくなかった。しかし、まあ、どうしても栽培したい、と思うほどの味ではなかった。

おまけのトピックス

 こちらはどうあっても栽培したい「生食用そらまめ」。ポット苗の根も十分育ったので、アブラムシ除けのシルバーマルチに定植した。寒さ除けにトンネルをほどこしたら、すぐに初雪となった。
 このまま順調に育ち、鹿や猿どもに荒らされなければ、5月ごろ収穫予定だ。