パンク修理

 車に乗るようになって50年以上にもなる。初めて運転した車はヒルマン・ミンクス、いすゞ自動車がノックダウン生産していたイギリスの車で、こんもりとした車体に品があり、変わったギァ操作するおもしろい車だった。
 まだ十代のころ、カメラマン助手として入社した会社の重役が所有し、終業後に車ごと運転貸しコースに付き合ってくれた。そんないい時代もあったのだ。

 一ヶ月ほど練習して東京・府中にある運転試験場で直接受験したが、1回目はあえなく失敗。たぶん法規(運転の実地、法規、構造の3項目の試験があった)をやり直したはずで、二度目でなんとか合格。そのころは教習所も少なかったので、こんな方法で免許を取得する人が多かったのである。

 必死に倹約して中古車を買い、そのころ評判のホンダN360をローン購入したあと、箱型スカイラインなどのスポーツタイプの車を何台か遍歴したが、田舎に移住するころにはもっぱら四駆車を愛用。長距離使用が少なくなった現在は、スズキ・ハスラーに乗っている。ホンダN360以来、約50年ぶりの軽自動車だが、その性能アップにはおどろかされる。
 イタリア・ミラノの有名自動車デザイナーが、日ごろジャパン・コンパクトカー(つまり軽自動車)を愛用、とネット情報にあるが、この性能ならあり得るなと思わせる話だ。

 むかしはタイヤのパンクが多かったものだが、舗装がすすむにつれて激減し、路上でのタイヤ交換など30年以上も経験していない。もっとも自宅をセルフビルドしたころは、敷地内に落ちていたクギやビスを拾って何度かパンクさせてしまったが、つい先日、ころがっていたビス付の木片を踏んでパンクさせてしまった。草刈りのさい柵の腐食部分を外れたのを放置していたのだ。

 ところが最近の車にはスペアタイヤが搭載されていないのである。おそらく燃費向上のための軽量化の一環で、代わりに修理キットと空気入れが用意されており、説明書の細かい文字を苦労して読みつつ修理を実行した。

 基本的にはむずかしい操作はない。刺さったビスを抜いたあと、バルブを外してよく振った修理液を注入し、バルブをもどして空気入れをバッテリー駆動させればいい。小型の空気入れだけに規定の空気圧まで10分ほどもかかり、空気に押された修理液が穴を塞ぐ仕組みになっている。
 つまり損傷部分に修理液がきっちり届くよう真下にする必要がある、と気づいてやり直した。空気が入りだすとジブジブと白い修理液が滲みだし、やがて穴が塞がれるにつれて空気圧が上がってくる。

 修理後はすみやかにタイヤ修理に持込むよう説明書にも記載されている。あくまで応急処置なのであろう。しかも今回の損傷は、側面に近いゴムが薄い部分のため修理不能とのこと。いまのところ空気漏れはないが、高速走行時に漏れでもしたら危険なので、新品タイヤと交換することにした。