温泉と浄化槽

 その異臭には思い当たりがあった。ログビレッジの友人を訪ねるため集落から西方の峠(下写真の中央)を越えるさい、その臭いに気づくことがある。いつもというわけではなく、ときおりのことだが、どうしたわけか硫黄泉の臭いが漂うのである。

 隣村の小来川までの数キロ余に人家はまったくなく、峠道が下りはじめたころの小径をたどると、打ち捨てられた鉱山跡があるらしい。銅と少量の金銀を採るため大正時代から昭和中期まで操業と聞いており、鉱山マニアにはよく知られているようでネットにも探索記事が散見する。

 行ったことはないし、行くつもりもないが、硫黄まじりの温泉臭がそのあたりで漂うことが多いため、ついつい鉱山と関連づけて考えたりしていた。

 それに似た臭いが駐車場あたりでするのだ。いわゆる温泉の硫黄の臭さに少しドブ臭さが混じり合った感じがあり、不思議なことに全然臭わないときもあったが、ふと気づいて確かめてみると、浄化槽のエアポンプが停止している。

 どうやら臭いの原因はこれのようで、いつから故障していたかは不明だ。臭いの発生に強弱があったのは、あるいは駆動したり止まったりしたためだった可能性もあり、たしか10年以上前に交換したきりだから、そろそろ寿命だったのだろう。

 前はメンテナンス会社に交換してもらった記憶があるが、すこし調べるとじつに簡単な作業。要するに故障機と同じポンプを入手して、本体からの配管に接続すればよい。ポンプそのものは、ネットで購入できるし、ホームセンターで見かけたこともある。

 まず故障したポンプを取り外して形状・型式を確認する。本体との接続口が一つと二つの種類があるようだが、故障機は一つ口のタイプ、型式にLP-100Hと書かれている。つまり風量100リットル/毎分の機種を選べばよく、別メーカー品でも差し支えないとのこと。

 さっそくホームセンターに探しに出かけたが、あいにく当該機種の在庫がない。風量100リットルはかなり大きな機種のようで、取り寄せには数日はかかる。ならばとネットで注文すると、翌日には配送されるのだから便利になったもので、しかもホームセンターの価格よりかなり格安だった。

 届いたポンプがこれ。同じメーカーながら故障機はすでに廃盤となり、後継機は一回り小型に変わっていた。

 付属する諸元表によると、常用圧力・風量ともに変わらず、定格消費電力が10W少なくなり、すこしエコ運転というのがありがたいし、MADE IN INDONESIAとあるのが面白い。

 取付けもじつに簡単。故障機を外したバスマット(震動防止用)に乗せ、地中から突き出した本体からのバイブに、購入機に付属したL型のゴムパイプを通じて接続すればいい。

 電源コードをつないで駆動を確かめて取付け終了。念のため振動防止に余ったバスマットを挟み付けてみたが、新品のせいか震動はほとんど感じないし、漂っていた異臭も翌日には消えた。

 それにしても峠道の硫黄臭はどうしたことか。人家もないのに浄化槽があるはずもなく、温泉の臭いというのがいかにも興味ぶかい。