古い仕事道具を探しに屋根裏にのぼった。なにしろ25年ほど前に辞めてしまっているから、むろん仕事に使うわけではない。このブログの話題にデジタルカメラを取りあげるつもりで、その導入写真として掲載したいと思ったのだが、どこをどうひっくり返しても見つからない。探しているのはカメラ機材だ。
屋根裏には、書斎に設置した折りたたみ階段を引き下げてのぼる。銀色に光る太いダクトが天井に据え付けられているが、これは屋根から熱い空気を取り入れて暖房や給湯に利用するOMソーラーの設備で、20数年前にこの家を造ったとき導入したものだ。もちろんセルフビルドだったが、そのとき私は他の工事にかかりきりで、ダクトを持ち上げるのに手を貸したぐらい。主な設置作業は建築家と奥さんがやってくれた、というくわしい経緯はつぎの機会にお話しよう。とにかくカメラ機材だ。
カメラマン時代の私は、さほど機材を持っている方ではなかった。主にはニコンFと6×6フイルムのゼンザブロニカを使い、ときおり4×5インチのシートフイルムで撮影する大判カメラ(トヨビュー)を使うぐらいだった。
そのほかニコンFやゼンザブロニカ用の水中ハウジングを自作したりもしたが、そのころ(40年ほど前)に撮った水中写真はほとんど売れずじまいだった。この話もいずれということにしておくが、そうした水中機材や大判カメラ、ストロボや細々としたアクセサリー機材は見つかったが、肝心の小型カメラと交換レンズ類がどこにもない。
結局、他の場所を探すことにしたが、代わりにちょっと面白いものをみつけた。
セコニック製のスタジオタイプと呼ばれた露出計で、被写体に入ってくる光の強さを測定する入射光式。あらかじめASA(アメリカ標準規格のフイルム感度)を設定しておき、針が振れた数字にダイアルをあわせると、別枠にシャッタースピードと絞りの組み合わせが表示され、それによって露出を決定する。
つまり露出は、シャッターのスピードと絞りの開閉ぐあいでフイルムに届く光を調節するわけで、適切な組み合わせは幾通りもあり、撮影者の表現方法よって選択する。フイルムカメラ時代の撮影は、かように面倒な手順を必要とし、むろんピント調節や構図の良しが出来映えに関係してくるのだが、いまのデジタル時代では単なる語りぐさだろう。とにかくシャッターボタンを押しさえすれば「はい、出来上がり」で、現像処理さえもない。
そうそう、現像だ。一度、三日ほどかけたロケフィルムを現像所の事故でおシャカにしたことがある。白黒フィルムならともかく、カラー現像となると個人の手には負えず、ほとんどの場合、専門の現像所に依頼する。ところが現像に失敗した。停電があり、おまけに自家発電装置も故障というダブル事故だったと聞かされ、むろん平謝りに謝られたが、損害賠償となると何もない。代替フイルムを貰っただけというのだから泣くになけない。そういう契約になっているのだ。以来、現像を頼むたびに胃がチクリと痛んだ記憶がある。
そうしたわけでカメラマンを廃業してこの方、ほとんど手を出さなかった写真だが、電子書籍の配信やらブログサイト立ち上げなどで否応なしに撮る機会が増えてきた。そこでデジタルカメラに話題を移し、つい先日に行なったカメラ分解について書くつもりだったが、すでに話は(わるい癖で)脱線して長くなっている。以下は来週ということにしておこう。
それにしても探しているカメラは一体どこにあるのだろう。