お隣さんが背後林を伐採した。ほとんどが杉だが、一本だけ広葉樹が混じっている。
「雑木あるけど、薪にするかい?」
「え? 薪? 使わないの?」
「んにゃ、栗だから……」
「あ、なるほど……。もちろんいただきます」
と話は即座に決した。薪仲間というべきお隣さんだが、パチパチとよく爆ぜる栗の木は薪にしない。囲炉裏を使っているため火の粉が飛ぶのを嫌うからだ。
栗の木は導管(根から水を吸いあげる管)が太く、乾燥させると水がぬけて空気がはいりこみ、燃やしたさい膨張して弾けて火花を飛ばす欠点がある。また空気を多くふくむため持った感じが軽く、ナラなどに比べると火持ちにやや劣るが、火力はそこそこあり、あんがい乾きやすいという利点もある。
そうした栗の木の特徴だが、むろん薪ストーブで燃やすぶんにはまったく問題はない。ちなみにケヤキも囲炉裏の薪にはしないようだ。燃やしたさいの煙がよくないらしく、眼を痛めてしまうという話も聞いた。
ケヤキの葉にはわずかながら塩分がふくまれ、囲炉裏やたき火のような低い温度で燃やすとダイオキシンを発生させるようで、並木の落ち葉が大量に持ち込まれる都会の焼却場でのダイオキシン発生が問題になったことがある。あるいはこれが眼によくない原因なのかもしれないが、塩化ビニールを燃やすのに比べると、非常に少ない量であるから、たき火やストーブで燃やしても心配はないらしい。
ともあれ、これで今年の薪入手はすんだわけだが、わが家まで運んでくれたグラップルローダー(林業運搬車)では積みきれない太い原木があり、とりあえず空き地までは搬出しておくとのことだった。つまり細かく切断して運べというわけだ。
たしかに太い。わが家のバックフォーのつかみ装置ではくわえきれず、ベルトで運びあげるにしても重すぎる。アームでは持ち上げきれず、排土板を作動させれてようやく持ち上げたものの、軽トラックに乗せるのは考えものだ。以前、薪を積みすぎてタイヤを破裂させた経験がある。
となれば切断するしかない。わが家で一番大きなチェンソー(ハスクバーナ372)を持ち出したが、なにしろ直径1メートル以上もある。60センチのバーでも届かないので前後から刃を入れる。ただし伐採したばかりだから、水分が多くてやわらかなので作業はあんがい楽だった。
二つに切り飛ばしたが、太すぎてベルトが回りきらない。さらに縦切りしてようやく軽トラに積み込んだけど、椅子の座板にちょうどいい大きさになった。いっそ製材して板にしてもいいけど、乾燥させて使うとなると3年先か、などと考えているところだ。