半年前、自動車免許の更新を受けたのがきっかけだ。今回は高齢者講習の前に、認知機能検査を受けることになる。それだけの年齢になったということで、判断力と記憶力を調べるための検査を受けなくちゃならない。
たとえば16種の絵を見せられ、ほかのテストのあと何が描かれていたかを回答する。結構記憶していないもので案外むずかしかったが、隣に座っていたおバアちゃん(もちろん同じ年ごろだ)がなんと100点満点だったのにビックリ。
後で知ったのだが、おなじ問題が「高齢者講習支援サイト」などに掲載されているらしく、どうやら息子か孫あたりに教えてもらったりして予習怠りなかったのだろう。
つづいて検査時の年月日、曜日や時間を回答する。これに合格すると、講習があり実地走行テストがある。これも難なく合格したが、次に乗った100点満点のおバアちゃんときたら、縁石に乗り上げ、信号は無視、ついには反対車線に逆行、と散々な結果だったが、それでも無事免許更新というのだから二度ビックリ。
いつかは我が身、と気を引き締めるたりするわけだが、そうしたところにブレーキとアクセルの「踏み違い」事故が続発する。いずれも高齢者が起こした事故とあっていよいよ考えさせられ、身にもつまされる。
この踏み違いは、右足だけで操作するAT(オートマチック)車特有の現象が原因となることが多い。たとえば停車中にブレーキから足を離すと、クリープ現象でスーッと前に出てしまう。いかん、とブレーキを踏むとき、間違ってアクセルを踏み込んでしまう。暴走する。事故になる。
同じような経験がある。5年前のそれは踏み違いではなく、ギアの入れ違いだった。ギア装置がはしご式だったのが原因だったろう。駐車して車から離れたあと、もどってバックギアに入れて発進したときのことだ。
むろん顔は、後ろを見ている。しかし、どうしたことか景色が遠のいてゆく。一瞬、何が起こったのかわからなかった。あれ? と思ったが、2メートルほど前にあったクーラ室外機を踏みつぶしたところで、ようやく気がついた。車は前進していたのだ。
駐車したさいP(パーキング)に入れたつもりが、N(ニュートラル)に入っていた。ひとつ下げれば、R(リターン)のはずが、それではD(ドライブ)に入ってしまう。それを確かめずに発進したのが原因だし、間違いだったけど、室外機だけですんだのは幸運だったと言うほかはない。
しかし、一瞬、事態がつかめなかったのが気になって仕方がない。たとえ2メートであっても暴走したのは間違いなく、それに気がつけば事故にはならなかった。おかしいな、と思いながらアクセルを踏んでいたわけで、そのときの嫌な感覚が忘れられない。トラウマになった。
おそらく事故を起こした高齢者も同じ感覚だったろう。あれ? おかしい、と思いながらアクセルから足が離せない。自分ではブレーキを踏んでるつもりだから、まるで事態がつかめない。あるいは、さらに強く踏むことだってあるだろう。
そうだ、あのときの感覚だ。ニュースを見ながら恐怖した。
そこでMT(マニュアル)車に乗り換えようと考えた。かぎ型になったギア装置だから、経験したようなギア入れ違いは起きにくいし、クラッチ操作があるので、たとえ踏み違えても空ぶかしになるかエンストするかで、決して暴走しない。
誤発信防止装置もあるようだが、予約が一杯でかなり時間がかかるようだし、電気的な装置であれば故障もあるだろう。ならばいっそMT車のほうが確実だし、それだけではないメリットがある、とここやここに書いてある。
この歳でMT車? と周囲は思っているようだが、愛用している軽トラはMT車なので、さほどの違和感はない。高齢者にはMT車限定といった意見もあるようだから、2、3年は試してみようかと考えている。