猿対策としての袋栽培は、昨年、サツマイモで初めて挑戦してみて、ことのほか上首尾だった。すぐ隣に植え付けた落花生が全滅するほど荒らされたのに、サツマイモには手をつけた形跡がなかった。黒い袋に作物なんぞ見たことがないから、たぶん猿どもはよほど気味悪がったに違いない。
つづいて秋ジャガイモ栽培にも成功し、これならと意気込んだ春ジャガ栽培は、ちょっとした油断から袋の中の種イモの存在に気づかれてしまい、ただいま悪戦苦闘中。その報告は後述するとして、今年もサツマイモ苗を土嚢袋に植え込んだ。
初めてサツマ苗を見たとき、これは冗談だろう、と思った。根も生えていないイモ蔓(つる)をお金出して買うなんて、物知らずの都会者には初体験だったし、ただ植えただけでイモが収穫できるなんて、とてもじゃないが信じられなかった。
以来10年ちかく栽培しているが、いまだに慣れない。植えつけたイモ苗が日に日に萎んで行くのを目にすると、ついつい心配になって水やりをしたりし、三日目ぐらいに茎の枝分かれしたあたりに小さな葉を見つけて、やれやれ、と安心するのが通例だ。
ともあれイモ苗を植えつけ、袋の口を閉じてしまえば、作業はすべて終了だ。以後の水やりはもちろん、サツマイモ栽培で一番大変と言われる草取りも必要なく、このまま放置して3ヶ月後の収穫を待てばいい。
さらには土嚢袋なので、畑の片隅など空いた場所に置いて栽培できるのもいいし、猿に引っこ抜かれたジャガイモの袋に植えつけたりもした。
作業として苦労なのは、土嚢袋への土入れだろうか。ガソリンスタンドで無料入手したペール缶の底を抜くと、便利な土入れ道具として使える。すでにお伝えしてあるが、使い方の写真を再掲載しておく。
追加のトピックス 猿3襲、
先ほどすこし書きかけた春ジャガイモだが、またまた猿に引っこ抜かれてしまった。これで3回目、いや、一日に2度荒らされているから、都合4度目になるか。
これほど連続しての襲来はめずらしいが、冬の雪不足のせいか、裏山のタケノコが近来にない不作だった。そうした餌不足が猿どもを里に誘うのだろうか。
その度に植え直しのER処置を施したが、イモができる地下茎(ストロン)も千切れてしまったから、たとえ回復してもイモが実るまではいかないかもしれない。
袋の口を開けてみると、種イモと小さな新イモがふたつ入っていた。つまり猿どもは、苗を抜きはしてもイモにはありつけなかったわけだ。これこそが袋栽培の眼目なのだ。
猿は頭がいい動物だ。こうした行為を何度かくり返すうちに、袋栽培にちょっかいを出しても獲物には手が届かないぞ、と覚るのではないか。そんな思惑ではじめたけれど、はたして結果はどうなるのか。問題はどこまで我慢できるかにある。