今年の種採り

 だいぶ秋めいてきて菜園の作物もすっかり様変わりしている。暑いさなかにがんばってくれた夏野菜たちも収穫をすませてしまうと、主役の座を秋ジャガイモやサトイモにゆずるしかない。黒マルチをはがし、畝の苗を引きぬき、枯れたツル棚の片づけると、毎年の例にならって種採り作業ということになる。

 ピクルス・キュウリは、こりこりと締まった果肉が好ましいので、わが家の固定種として毎年栽培している。もっともピクルスはすこし飽きぎみになり、今年はぬか漬けなどにして食している。こんな小さなうちに収穫するけど夫婦二人の食卓にはちょうど良く、真っ盛りには食べきれないほど採れてしまう。

 ツル棚を片付けると、雑草に覆われた黒マルチに大きくなったキュウリがごろりと寝ている。タネ用に一つだけ取り残すのだが、気がつくと雑草にまぎれていた収穫しそこないがあちこちに転がっているのだ。

 よく追熟した実を選び、中の種を取り出して包んだ果肉(ワタ)を水でよく洗う。このワタ部分には発芽抑制物質がふくまれているので、これを指でこそぎ落とすように洗い落とすのが肝心。
 よく洗った種を水に浸し、沈んだ種だけを選んで新聞紙などにひろげて乾燥させる。こんな方法で10年近く自家採種している。

 バターナッツもわが家の固定種だ。ひょうたん型の下のふくらみを割って、スプーンなどでワタごと種をえぐり取り、よく水洗いしてワタを取り除く。ついで水に浸してキュウリ同様、沈んだ種を採種してきたのだが、どうしたことかキュウリとは逆で、カボチャは浮くのが良い種とする情報がある。
 あわてて調べなおしてみると、いや、ちがう。キュウリと同じく、沈んだ種を残し、浮いた種を取り除く、とする情報もあったりするのでちょいと混乱。

 このあたりがネット情報の限界なのだろう。もうすこし調べて民族学でいう重出立証法的に決めてもいいが、いっそ両方とも保存し、来春の種まきを経た結果をみる、というのも面白いかと思った。

 苗を購入したミニトマトが美味しかったので、ついでに採種してみた。熟しすぎたり裂けたりしたトマトを割り、種をスプーンなどですくい取り、よく洗って乾燥させる。ゼラチン状のヌメリが洗いにくい場合は、数日放置して発酵させるとよいらしい。
 ただしこのトマトは、苗で購入しているので、はたして登録品種かどうか不明。もし登録されていたなら、あるいは法律違反となるのかもしれない。

 今年の冬季オリンピックのさい、カーリング選手が食べたイチゴ事件以来、種苗流出に神経をとがらせた農水省は、どうやら自家採種の原則禁止を検討しはじめたらしく、これについてもくわしく調べる必要があるだろう。

 もうひとつ生食ソラマメも自家採種してみたが、発芽に自信がないので市販種を購入してある。袋に登録品種の表示はないようだし、うまく発芽すれば、わが家の固定種として毎年の種採りに加えるつもりだ。
 またズッキーニやコリンキーも栽培したが、両方とも購入したF1種なので採種はしなかった。