裏切りの燻製

 作ってはみたものの、ブログでの報告にすこしばかり躊躇していた。その出来映えはともかく、味がそれほどでもなかったのが原因だったが、そろそろ正月用の燻製の時期か、と考えたついでに掲載することにした。

 ストック切れのベーコンを作ったさい、変わり燻製でも、と用意した材料は、かまぼこ、ゆで卵、それに市販のボロニア・ソーセージ。このところ怠けまくっているソーセージ作りを、出来合い品のスモークでごまかそうと目論んだのだ。

 ボロニア・ソーセージは、イタリアが発祥の牛の腸を利用した太めのソーセージ。羊の腸ならウインナー、豚の腸だとフランクフルトと呼ばれたりしているが、いずれも塩・香辛料を混ぜ合わせた豚の挽き肉を詰め込んで作られている。

 ちなみにソーセージは、ノコギリを意味するソー(saw)で細かく切り刻んだ肉と香辛料のセージ(sage)を語源とする、とどこかで聞いた記憶があるが、これはどうも、ひどい間違いだったようだ。チェンソーなどが耳に馴染んでいたため、ついつい納得してしまったのだろうか。あちらこちらで吹聴した覚えもあるので、まったくもって冷や汗ものだ。

 正しく英語ではsausageと表記されるわけで、いくつか語源説があるうち、ラテン語の塩漬けを意味するsalsusとセージsageの合成語、というのが有力らしい。

 ゆで卵は、あらかじめ醤油などの調味料に漬け込み、かまぼこは板から外し、ソーセージもケーシングを取り除いておく。いずれも冷蔵庫から早めに出して常温にもどしておかないと、スモーク時の温度上昇にともない水滴が浮き出して煙がきれいにつかない。

 ベーコンを吊した上の網にならべてスモークする。あくまでベーコン作りの副産物だから、65℃まで徐々に温度をあげて6時間、といういつもの温燻パターンは変わらない。わが家では、そのまま食するフレッシュベーコンのほか、保存性をより高めるため70℃60分でボイルするときもある。

 副産物たちの出来映えはこんなものか。ゆで卵やかまぼこは、それなりの味に仕上がり、まあまあ満足したが、ソーセージとなるとそうはいかない。
 出来合いソーセージだけにさして期待はしていなかった味に、やはり手抜き燻製だったな、という後ろめたい”裏切りの味”をまぶしたような感じ、とだけ表現しておこう。