いまさらのバンドソー

「午後に届くらしいわ、家財便」
 電話を受けた奥さんが不審そうな顔でつづけた。
「バンドソーってなあに、オークションでまた買ったの?」
「ああ、木工機械……。板に挽くもの」
「この前はチェンソーで切っていたじゃないの」
「細かに切るのは無理だからね」
「ふーん、板ならいっぱいあるじゃない。第一、何を造るのよ」
「…………」
 すぐには答えられない。必要な家具はあらかた揃ってしまい、いまさらバンドソーを入手しても造るものがない。

 運ばれてきたのは日立バンドソーCB65Fの中古格安品。コンパクトな形状ながら挽き割り250㎜の性能があるのが気に入ったが、なにせ70㎏を超える重さがある。積んできたトラックは低床タイプで県道から入れず、係員二人がかりで坂道を運んでくれた。

 設置したのは、物置状態だったのを前もって片付けてあるデッキ下。運びこみやすいよう柵は取り外しタイプにし、地面には軽トラ用のゴムマットを敷いて湿気除けとした。

 さっそく動作点検をする。6㎜の細いブレードが付いていたが、平行フェンスや取扱説明書は付属していない。モーターの動きに異常はなかったが、ブレードの横ぶれ止め(セリと呼ぶらしい)を上下させる軸およびブレード背後のベアリング軸が固着し、セリ自体もブレードにこすられて損傷していた。
 とりあえず潤滑油をスプレーしてみたが、さび付きはとれない。しばらく放置して台座を造ることにした。

 どのくらいの台座が作業しやすいかわからない。本体の作業テーブルは高さ35センチほどで、あまりに低くすぎるだろう。調べたネット情報では胸の高さが多いようだから、とりあえず65センチ高の台座を造ることにした。

 材料はありあわせの45×90㎜のスギ材。ルーターで溝を掘ったのは、強度補強に12㎜の針葉樹合板をはめ込むため。汚れていたのでオイルステインで黒く染め、表面から止めたクギも黒マジックでごまかした。
 いつものようにポケットジョイントで組上げ、中に棚を造るだけにするつもりだったが、勢いづいて扉も製作する。あいにく1寸厚の板しかなかったのでやや無骨な扉になってしまう。こうしたときバンドソーがあればすぐさま挽き割りできるわけだ。

 仕上げの塗装もないので簡単に完成したが、70㎏をどうやって持ち上げるかが問題だった。