砂肝のコンフィ

 このところキッチンに立っていることが多い。もっと具体的に言ってしまえば、デスクにむかっていても少しも書けないので、いつの間にか晩酌の肴なんかをつくったりしているのだ。
 締め切りがあるなしにかかわらず、書こうと思って書けないのはひどく苦しいもので、才能があればあるほど落ち込む度合いが強い。しかし、台所に逃げ込むぐらいですむのだから、才能も落ち込み程度も知れたものと言える。

 そこでおつまみによく利用する砂肝なんぞを調理している。塩焼きにしたり、佃煮風に煮たりして、あのコリコリした歯ごたえを楽しむのだが、ときどき行く宇都宮のレストランで出された砂肝のコンフィは、しっとりと軟らかく、それでいて歯切れのよさを残しているのが気に入った。

 コンフィは、オリーブオイルに浸した食材を、揚げ物にするより低温でゆっくり加熱する調理法だ。ゆっくりとか、長時間とあれば薪ストーブだろう、とさっそく試してみた。が、うまくいかなかった。
 ひとつには低温にするのがむずかしく、結果、煮えすぎて硬くなってしまう。さらには砂肝を浸すほどの大量のオリーブオイルが必要になり、かつ調味料や砂肝の味が移って再利用がむずかしいのが気に入らない、とねっケチ(根っからのケチ)精神がつぶやくのだ。

 そうか、と保温調理器の利用を思いついた。20年ほど前の頂き物で、牛肉のたたきづくりに重宝しているが、下記のような方法で調理した。

①砂肝を二つに切り離し、塩コショウ、ニンニクで下味をつけ、ローズマリーの小枝とともに冷蔵庫で一晩保存する。
②水気を拭き取り、ビニール袋に入れ、適量のオリーブオイル(湯に押されるので少量でよい)を加える。
③保温調理器の湯を80℃に設定し、ビニールに湯が入らないようセット。2時間ほど加熱すると出来上がり。

 ほんのりとしたピンク色に仕上がった。食感もほどほどに軟らかだったが、温度と時間をいろいろ試してみたい。また周囲の硬い筋をていねいに切り取った方がよかったかもしれない