狂い咲きかと思っていたが、調べるとそうでもないらしい。また満月か新月の夜に咲く、という俗説も知ったが、満月から3日後の開花だった。
しかし、ストーブを焚きながら見るのは初めてで、その匂いはいつもに増して強烈。ストーブの暖気と絡み合って何度もクシャミを誘われ、いささか辟易だったが、そもそも熱帯のジャングル原産だから、咲くほうも面食らったことだろう。
サボテン科クジャクサボテン属で、葉の一部に蕾が形成されるが、正しくは葉状茎といい、大きくて白い花弁や強い香りは、小型のコウモリを誘って受粉させるためらしい。
それにしてもこの匂い、ひさしく出席しない文壇パーティでみかけた「銀座のおねえさん」方を思い出させた。きらびやかに着飾って宴に華をそえていて、むせるような香りに振りむくと、おひさしぶり、などと微笑まれたりした。夜になると狭斜の町を徘徊するコウモリ族には効果的な匂いだったのだろう。
翌朝、みすぼらしいほどに萎れているのは、しらじら明けの町をトボトボ帰った自分自身のすがたに見えてくる。