かかりっきりだったデッキ屋根架けもそろそろ工事終了となるが、冬の間に計画され、春の訪れとともに開始する、というのはいつも通りのパターンだった。
マイナス10℃の寒さに閉じ込められ、何もかもが停滞する季節に、ただ一つ〝妄想〟だけが活発に動きまわる。多くの小説はそうして書きはじめられるが、ときとして身の丈をこえたプロジェクトに発展し、主屋建築のように数年がかりという場合もあったりする。三か月ほどで終了するなら、ごくごく順調だったのだ。
順調といいながら、低い足場で油断したのだろうか。うっかり足をすべらせ、パイプで胸を強打してしまった。どうやら肋骨にヒビを入れたらしく、以来寝返りも打てないほど痛むのをのぞいて、おおむね作業をエンジョイし、仕上がりも計画(つまり妄想した)通りで、周囲の評判もわるくないようだ。
あとは屋根屋さんのガルバリウム鋼板工事のほか、南側にズラリとならべたプランターの植栽、さらには西側に薪を積み上げる作業をすすめることになるが、ちょっとめんどうなのが解体残材の始末だろうか。さらには広くなったスペースに、小洒落たテーブルや椅子でも作ってみるのも楽しい……。
そうした気配を感じたらしい奥さんが、カウンターチェアをネットで早々と購入する。当然のようにやや不満であるが、
「すぐ作ります」
と宣言したはずの食器棚や靴箱の完成が,主屋建築の15年後になった前科があるので、まったく反論できないでいる。