涙をふいて……。

「涙をふいて」……と歌い出してから、うむむ、とうめいた。あとの歌詞がどうしても出てこない。ま、忘れっぽくなっているからめずらしいことではなく、いつものように奥さんに聞いてみたところ「古いわね」と言ったきり、はきとした答えは返ってこない。どうやらご同病の健忘症であるらしい。
 最近は「検索」という手があるから、さしたる問題ではないが、それがまた症状を悪化させているような気もする。その「検索」にやや手間取ったのは、「涙をふいて」が歌い出しだとばかり思っていたからで、サビの部分と知れてようやく判明。かれこれ30年以上前に流行った曲のようで、CMソングに採用されて一躍ヒットした、という話は今日の主題ではない。

「涙をふいて雪国へ」とつづけたい。やはり歌か、と思われるむきもあろうけれど、いやいや、前回、途中になってしまったカメラ分解を話題にしたいのだ。
DSCF0498-B いま使っているデジタルカメラは、レンズまわりの傷をみてもわかるように、ブログを10年近くつづけている奥さんのお下がりだ。カメラマンだったころのフィルムカメラは、機械仕掛けの光学製品だったが、こいつは電機メーカー製。つまりは電機製品ということになるのだろうか。
P1240023 レンズの蓋が自動で閉まらなかったが、精密ドライバーで軽く叩いたらなおってしまった。(そう、電機製品は故障したら叩くにかぎるのです)しかし、いつごろからか黒っぽい影が映りこむようになり、このままではどうにも使えない。おそらくレンズの奧か、センサーに埃が付着しているのだろう。となれば「やはり分解掃除」するしかない。

 古いフイルムカメラなら分解したことがある。ながく使い込んでくると、レンズの絞りまわりに油や水分がにじむことがある。カメラの絞りは、目の虹彩に相当する。そこでにじんだ液体を「涙」と呼ぶわけで、低温時に凝固してしまうと、自動絞りが効かなくなり、極端な露出オーバーとなってしまう。そのため雪国ロケなどの前には、動作を点検し、ときには分解して「涙をふいて」おかねばならない。
 ほとんどの場合は専門の技術者に依頼するが、急ぎのときやロケ先となるとそうはいかず、素人ながら自分で分解掃除したことが何度もある。
 ならば出来ないわけはなかろう、と多寡をくくってしまうのが、数ある私のわるい癖のひとつ。ときには失敗して「涙をふいて」あきらめたことが何度もあるのだが……。

DSCF9889-b 電機製品であるからして、バッテリーを外すのがまずは第一。ついで底面のネジ3本、左右側面のネジ3本を外すと、前後パネルと上部軍艦部が外せる。

DSCF9892-b 液晶パネルを横にずらすようにして起こすが、倒れないよう何かに立てかけておくとよい。4本のネジを外して、金属カバーを取り外す。

DSCF9894-d この部分のネジ3本を外すと、センサー部が起こせる。

DSCF9896

 ピンセットを使って慎重に裏返すと、やはり埃がかなり付着していた。おそらくは山羊餌の乾草だろう。軍手と一緒にポケットに入れているようだから、埃だらけになるのも無理はない。

 綿棒で拭き取ると、傷つける心配があるので、ブロアで吹飛ばすのが安全。もちろん息を吹きかけたりすれば、水分が付着したり、唾が飛ぶこともあるので注意が必要。あとは元通りに組み上げて、およそ30分で終了した
 結果は良好。このブログの(今回以外の)写真はもちろん、電子書籍の表紙の多くは、このデジカメで撮影したものを使用している。

わるい癖……。

 古い仕事道具を探しに屋根裏にのぼった。なにしろ25年ほど前に辞めてしまっているから、むろん仕事に使うわけではない。このブログの話題にデジタルカメラを取りあげるつもりで、その導入写真として掲載したいと思ったのだが、どこをどうひっくり返しても見つからない。探しているのはカメラ機材だ。

P1240263-B 屋根裏には、書斎に設置した折りたたみ階段を引き下げてのぼる。銀色に光る太いダクトが天井に据え付けられているが、これは屋根から熱い空気を取り入れて暖房や給湯に利用するOMソーラーの設備で、20数年前にこの家を造ったとき導入したものだ。もちろんセルフビルドだったが、そのとき私は他の工事にかかりきりで、ダクトを持ち上げるのに手を貸したぐらい。主な設置作業は建築家と奥さんがやってくれた、というくわしい経緯はつぎの機会にお話しよう。とにかくカメラ機材だ。

 カメラマン時代の私は、さほど機材を持っている方ではなかった。主にはニコンFと6×6フイルムのゼンザブロニカを使い、ときおり4×5インチのシートフイルムで撮影する大判カメラ(トヨビュー)を使うぐらいだった。
 そのほかニコンFやゼンザブロニカ用の水中ハウジングを自作したりもしたが、そのころ(40年ほど前)に撮った水中写真はほとんど売れずじまいだった。この話もいずれということにしておくが、そうした水中機材や大判カメラ、ストロボや細々としたアクセサリー機材は見つかったが、肝心の小型カメラと交換レンズ類がどこにもない。
 結局、他の場所を探すことにしたが、代わりにちょっと面白いものをみつけた。

P1240258

 セコニック製のスタジオタイプと呼ばれた露出計で、被写体に入ってくる光の強さを測定する入射光式。あらかじめASA(アメリカ標準規格のフイルム感度)を設定しておき、針が振れた数字にダイアルをあわせると、別枠にシャッタースピードと絞りの組み合わせが表示され、それによって露出を決定する。
 つまり露出は、シャッターのスピードと絞りの開閉ぐあいでフイルムに届く光を調節するわけで、適切な組み合わせは幾通りもあり、撮影者の表現方法よって選択する。フイルムカメラ時代の撮影は、かように面倒な手順を必要とし、むろんピント調節や構図の良しが出来映えに関係してくるのだが、いまのデジタル時代では単なる語りぐさだろう。とにかくシャッターボタンを押しさえすれば「はい、出来上がり」で、現像処理さえもない。

 そうそう、現像だ。一度、三日ほどかけたロケフィルムを現像所の事故でおシャカにしたことがある。白黒フィルムならともかく、カラー現像となると個人の手には負えず、ほとんどの場合、専門の現像所に依頼する。ところが現像に失敗した。停電があり、おまけに自家発電装置も故障というダブル事故だったと聞かされ、むろん平謝りに謝られたが、損害賠償となると何もない。代替フイルムを貰っただけというのだから泣くになけない。そういう契約になっているのだ。以来、現像を頼むたびに胃がチクリと痛んだ記憶がある。

 そうしたわけでカメラマンを廃業してこの方、ほとんど手を出さなかった写真だが、電子書籍の配信やらブログサイト立ち上げなどで否応なしに撮る機会が増えてきた。DSCF0498-Bそこでデジタルカメラに話題を移し、つい先日に行なったカメラ分解について書くつもりだったが、すでに話は(わるい癖で)脱線して長くなっている。以下は来週ということにしておこう。
 それにしても探しているカメラは一体どこにあるのだろう。